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記事:交遊抄 ―正しくあれ―

〜正しくあれ〜

「怖くて、頼れる兄貴」と言ったら、また叱られるだろうか。1つ年上で、最高裁判事の田原睦夫先生とは30年以上の付き合いになる。私が大阪で起業した際、先生に顧問弁護士をお願いしたのがきっかけだ。
今でこそ当社は整水器で国内最大手だが、当時は事務員と私の2人だけの会社だった。一方、先生は若くして大きな経済事件に携わり、新進気鋭の弁護士として大活躍されていた。今から思うと、ローマ法王に結婚式の司式を頼むようなものだった。「いくら払えばいいですか」と聞くと「一番安いのが3万円」。最低額で引き受けていただいた。
先生からは叱られ通しだった。無謀な投資をした時には「身の丈を知れ」と一喝された。口を酸っぱくして言われたのが「正しくあれ」ということ。起業して生き残る会社はほんの一握りしかない。会社が存続していくには社会正義にのっとるのが第一条件ということを教わった。
2006年に最高裁判事に就かれて顧問弁護士からは退かれたが、先生の顔に泥を塗ってはいけないという思いで、その後も私は正しくあろうと努めてきたつもりだ。4月下旬に先生は定年退官される。判事に就かれてからは丸くなられた先生と、またゆっくり酒を酌み交わしたい。
(もりさわ・しんかつ=日本トリム社長)


2013年4月17日(水) 日本経済新聞朝刊掲載




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