研究開発

Biological & Pharmaceutical Bulletin(日本薬学会学術誌)Biol. Pharm. Bull., 31(1),19-26, January 2008

電解還元水の腫瘍血管新生抑制効果

血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、腫瘍血管新生の主要メディエーターである。腫瘍細胞は正常細胞に比べて高い酸化ストレスに曝されている。細胞内レドックス(酸化還元)がVEGFの発現状態に密接に関与していることは多くの論文で実証されている。水の電気分解の際に陰極側で生成される電解還元水は、細胞内H2O2を除去し、ヒト肺がん細胞株A549からのH2O2の放出を抑制し、さらに時間依存的にVEGFの転写とタンパク質分泌を下方制御した。VEGF発現制御に係るシグナル伝達系を調べるために、MAPK特異的阻害剤であるSB203580 (p38 MAPK 阻害剤)、PD98059 (ERK1/2 阻害剤) 、JNKi (c-Jun N-terminal protein kinase 阻害剤)を作用させた。その結果、PD98059のみがVEGF発現をブロックしたことから、A549におけるVEGF発現制御にERK1/2が重要な役割を果たしていることが示唆された。同様に、電解還元水も時間依存的にERKの活性化を阻害した。インビトロ細管形成能をみるための共培養試験により、A549細胞培養液は、細管全面積、細管接合点、細管数、細管全長の全ての項目において血管細管形成を有意に刺激することを明らかにした。電解還元水は、A549細胞培養液の作用を相殺し、細管全長を減少させた(P<0.01)。この研究により、電解還元水はERKの不活性化を介してVEGF遺伝子の転写とタンパク質分泌を下方制御することを実証した。
 

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