森澤紳勝が語る積極性で幸運つかめ

積極性で幸運つかめ

高校卒業後に代用教員として勤めていた地元の高知県土佐清水市の中学を辞めて、東海大学に進学した。奨学金をもらいながらアルバイトの毎日。東京近郊に新聞をトラックで運送する仕事で、夜10時から朝5時まで働き、その後、狭い作業員宿舎で数時間、仮眠を取り授業に出ていた。他の人が3日働き1日休むところを、お金がないものだから休日は1ヶ月に1日あるかないか。120人以上のアルバイトをまとめるチーフもやった。すさまじい学生生活だったが、ここで培った気力、体力が、何をやっても食べていける、という自信につながった。
卒業後、不動産会社に勤めたが、「将来、健康産業は伸びるだろう」 と27歳の時に健康関連機器メーカーへ。常務にまでなったが、経営者と意見があわず37歳で独立した。
当時、東南アジアなど日本より生活水準が低かった国で水が売られていることを知って驚いた。日本ではペットボトルもない時代だったが、必ず水を買う時代が来ると思った。
バカにされても 夢実現信じて 大阪・淀川区の小さな事務所で事務員と2人だけのスタートだった。1年目は本当に苦しかった。「水が売れるわけない」とバカにされたが、軽自動車に整水器を積んで、近畿各地に飛び込み営業を行った。訪問先でののしられたこともあった。累積赤字が2000万円になり、自殺を考えたこともあった。でも「健康にいい水は必ずビジネスになる」という確信と、「体調が良くなった」という利用者の声に支えられた。
「夢は必ず実現する」 という思いでこれまでやってきた。創業当時からの夢である上場も実現した。自分が見ない夢は実現しないし、見た夢は必ず実現する。可能性がゼロなら駄目だが、たとえ1%でもあれば、かけるべきだ。
我を忘れて没頭する そんな人間は強い そして、仕事は1年や2年、必死になって没頭する時期がないとだめだと思う。ある期間に我を忘れて、仕事に打ち込んだ人は強い。大学生なら勉強でもスポーツでもいい。
経営者として一番苦しいのが人を採用する時。その人の人生を預かるわけだから責任は重い。求めている人材は「積極性があって明るい人」。人生は運が重要だと思う。幸運は積極性と明るさがあるところに、やってくると思う。そして幸運を持続させるのは誠実さだと思う。

読売新聞夕刊大阪本社版掲載

森澤紳勝Shinkatsu Morisawa日本トリム 代表取締役会長 兼 CEO

1944年高知県生まれ。
東海大学文学部卒後、健康関連機器製造販売会社を経て82年、電解還元水整水器メーカー「日本トリム」創業。
03年2月東証2部、04年3月東証1部、22年4月東証プライム上場。

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