野菜栽培の基礎知識と水の重要性について(前編) | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

野菜栽培の基礎知識と水の重要性について(前編)

野菜の栽培方法は、育てる野菜の種類や場所、時期などによって様々で、それにより必要となる道具や知識も異なります。また、簡単に思われがちな「水やり」や「水選び」も適切に行うことで、野菜がきちんと育つだけではなく、より大きく、高栄養なものに育ちます。

今回は野菜栽培についての基礎知識と水の重要性について、前編と後編に分けてご説明していきます。

[ 前編 ]

野菜栽培の方法

野菜の栽培方法は、大きく4つに分けられます。

露地栽培

露地栽培

屋外で育てる方法です。ほとんどの野菜は露地栽培で育てられます。
しかし、「草取り・消毒・害虫駆除」など、畑の管理が大変になります。また、収穫量は天候に大きく影響を受けてしまいますので、初心者には少し難しい栽培方法と言えるでしょう。

ハウス栽培

ハウス栽培

ビニールハウスやガラスハウスを使って育てる方法です。天候の影響を減らせるため、安定栽培が可能です。
また、害虫もつきにくいので農薬使用を抑えることができますし、季節外の野菜が作れるので旬の時期から外れた野菜を食べることができます。雨の日でも作業がしやすいのも良い点です。
ただし、換気扇や灌水装置をつける場合は電気や水の確保が必要となるため、初心者には不向きです。

プランター栽培

プランター栽培

プランターや鉢で育てる方法です。大根など土の深い所でなる野菜を育てる場合には向いていませんが、葉物野菜や小さめの野菜はプランター栽培でも問題なく作れます。
プランター栽培は、屋外での栽培と比べ、管理すべき面積が小さいので、初心者向きと言えるでしょう。ただし、都会では使用後の「土の廃棄」が少し面倒です。

水耕栽培

水耕栽培

土のかわりに養液を使って育てる方法です。土を触らずに野菜を育てることができるので、室内栽培に向いています。
また、土を使わないことで「土が起因となる病気」や「害虫被害」も少なく済みます。根の部分が常に養液に浸かっているので、水やりの必要もなく、初心者の方でも比較的ラクに行うことができる栽培方法です。
ただし、根菜類などの野菜は栽培が困難ですし、栽培を始めるにあたってはキットや装置を購入(製作)しなければいけないというネックはあります。

室内の野菜栽培に必要な道具

ここでは、室内でも比較的カンタンに行える「水耕栽培」に必要な道具をご紹介させて頂きます。

下記の道具は、ホームセンターなどでセット品を揃えることもできますが、容器やフタなどは100円ショップで購入したものを代用してもかまいません。

養液

水に肥料を混ぜたもので、野菜に「水分」と「肥料分」を供給します。
土のように「酸度」の調整は必要ありませんが、水道水に含まれる塩素で根が傷むことが考えられますので、使用する水は一晩くみ置きしてから使いましょう。
肥料はパッケージに書かれている表示を見ながら、正しい手順で水と混ぜ、希釈した肥料は作り置きして養液が少なくなったらつぎ足すようにします。また、使用する養液は一ヶ月に一回、すべて入れ替えるようにしましょう。

エアーポンプ

エアーポンプは熱帯魚用のものを流用することができます。容器内に空気を送ることで、養液内の「酸素」をより高めてくれます。
容器内に空気が確保されていればエアーポンプがなくても栽培は可能ですが、生育期間が長い野菜を育てる場合や、より確実に生育させたい場合は、取り付けておいた方がよいでしょう。
空気を送る量は、「●cm水槽」と書かれた決まった規格があります。その大きさは次のとおりです。使用する容器の容積を計算して、どの大きさのポンプを使うかを選びましょう。

45cm(45×24×30)
60cm(60×30×36)
90cm(90×45×45)
120cm(120×45×45)
180cm(180×60×60)

ホースとストーン

ホースは、ポンプからエアーを送るために使用します。分岐具を使えば、一つのポンプから複数の容器にエアーを送ることもできます。

ストーンは、空気を細かい気泡にして水中に酸素を入れるために使用します。これによって、養液が循環し、全体の酸素・肥料分が均一になります。

容器・フタ

容器は、栽培する野菜に合わせてサイズを選びましょう。葉もの野菜や根もの野菜は小さいサイズでも大丈夫ですが、実もの野菜は最低でも5ℓ以上の養液が入るものを選びましょう。容器は遮光性のあるものを選ぶのが基本です。光が入る容器だと容器内に藻が発生してしまい、根が十分に酸素を吸収できなくなります。どうしても透明の容器を使用したい場合は、容器全体をアルミホイルで覆い、光が入らないようにしましょう。

フタには、「養液を蓄える」という役割の他にも「株を固定する」という役割もあります。フタの製作には、スチレンや発泡スチロールのボードを使うと良いでしょう。容器のサイズに合った大きさに切り取り、株を差し込むための穴をあけます。複数の株を育てる場合、株間は10〜15cmとるとよいでしょう。

屋外の野菜栽培に必要な道具

ここでは、ご自宅のベランダやお庭を使って「プランター栽培」をする場合に、必要な道具をご紹介させて頂きます。種の購入とあわせて、ご検討してみて下さい。

支柱

育てる野菜によっては必要になり、場合によっては、組み合わせて使ったりもします。木や竹でできたものもありますが、スチールに樹脂コーティングされた野菜用の支柱がベターです。太さは0.5cm~2cm程度で、長さは70cm、90cm、120cm、150cmの4種類の長さを揃えておけば、大抵の支柱組に対応します。

支柱と野菜の茎とを結びつけるヒモ(もしくはサポートクリップ)もあわせて準備しておくと良いでしょう。

培養土

培養土は、通気性と排水性を兼ね備え、数種類の土がブレンドされた市販の野菜用培養土がよいでしょう。あらかじめ肥料も配合されてあるものがお手軽です。ただし、ベビーリーフなどの「葉もの野菜」は、あまり粒が荒いと根を張りにくいので注意しましょう。

鉢底石

軽石やパーライト、ゼオライトなどの多孔質のゴロ石で、コンテナの底に敷いて「水はけ」や「通気性」などを良くします。ネットなどに入れ、洗って繰り返し使えるように工夫されたものもあります。

ネット

鉢底の穴をふさぐ為や、鉢底石を入れる為にネットがあると良いでしょう。ネットの中に鉢底石を入れておくと、次に使う時に簡単に細かい土と分けられるので大変便利です。「キッチン用の水切りネット」や「タマネギ用のネット袋」で代用できますので、専用のものを探す必要はありません。

マルチング材

野菜を乾燥や寒さから守るために必要なのが、マルチング材です。マルチング材は色々なタイプがありますが、ココヤシファイバーやワラでも代用できます(ホームセンター等で購入できます)。それらを土の上に敷くと、根を保護してくれ、水やりの回数も軽減されます。エンドウ豆など、越冬させるものには寒さよけに必要です。

ココヤシファイバーやワラをマルチング材として使用する場合、土の上に敷き詰めた後、石を1~2個置いておくと良いでしょう。鳥がもっていくのを防げますし、野菜名をその石に書いておけば「プランツマーカー(名札)」にもなります。

水やり道具

水やりの道具には「ジョウロ」や「水さし」などがあります。また、最近では、2~3日留守にするときに水を自動で補給しておいてくれる「ウォーターキーパー」という商品も売られています。

ジョウロを購入する場合、口の細いタイプで、最低でも1ℓの大きさのものを選ぶと良いでしょう。ベランダの水栓からホースで水をやる場合であっても、液体肥料を施すためにジョウロは別途購入しておいた方がよいでしょう(1~5ℓサイズだと液体肥料を薄める計算もしやすくなります)。ただし、「種をまいてすぐの水やり」にジョウロを使用すると、種が流れてしまうおそれがあります。優しく水をやりたい場合には「霧吹き」がオススメです。

肥料

肥料にはいろいろな種類があります。ベランダで栽培する場合、においがなく、取り扱いも簡単な化成肥料を使うのが良いでしょう。

化成肥料のパッケージには「数字」が記載されています。これは肥料成分の表示で、例えば「8-8-8」と記載してあれば、左から順番に「N(チッソ)・P(リンサン)・K(カリ)」が8%ずつ含まれているという意味になります(N(チッソ):葉や茎の栄養分、P(リンサン):葉や果実の栄養分、K(カリ):根の栄養分)。

また、「30日」や「ロング30」と記載してある場合は、「肥料がゆっくりと30日間効く」という意味になります。もし、肥料の効果をすぐに出したいのであれば、「液体肥料」を使いましょう。

プランター(鉢)

「大きさ・形・素材」など、様々なものがあります。小型の野菜は小さなもの、大型の野菜は幅広の浅型、根菜類は深型と、作る野菜に合わせて容量やタイプを選ぶことが大切です。また、底に排水性を高める「すのこ状のネット」がついているタイプもありますので、利用すると便利です。

材質は主に素焼きとプラスチックがあります。素焼きタイプは通気性があり、水分が蒸発するので、水がたまりにくいです。また温度が上がりにくかったり、長い年月使えるなどの長所がありますが、重たいので取り扱いに若干苦労しますし、壊れやすいといった短所もあります。

一方、プラスチックタイプは、軽くて取り扱いがラク、色んな形のものがある、といった長所がありますが、温度が上がりやすい、年月がたつと割れてしまう、といった短所もあります。もしプラスチックタイプの容器を購入するのであれば、薬品に強い「ポリプロピレン製」がオススメです。

その他の道具

苗を植える時には、園芸用の「ミニスコップ」や「土いれ」があると便利です。また、肌の弱い人が肥料をいじる時には、「手袋」があるとよいでしょう。枝を切ったり、間引きをしたり、収穫したりする時には、「園芸用のハサミ」があると楽に作業ができます。

野菜栽培の手順

野菜は種類によって、栽培が簡単なものと難しいものがあります。初めて野菜をつくる方は、やさしい野菜から作ってみましょう。また、実をとるタイプの野菜や収穫までに時間のかかるタイプの野菜は、種子から育てるより「苗」を買ってきて植えると、手軽に栽培ができます。

ここでは、比較的育てやすい「ミニトマト」をとりあげ、「苗から育てる方法」についてご紹介をさせて頂きます。

【場所の確保】

ベランダにあまり多くの鉢やプランター置くと、風通しが悪くなり、病気や害虫が発生しやすくなります。
また、ベランダに洗濯ものやフトンを干すことも考えて、プランター等が邪魔にならないようにしましょう。

【植え付け時期と収穫時期を調べる】

野菜ごとに植え付け時期は異なります。ここを間違えると、うまく育ちませんので注意しましょう。
ミニトマトの場合、植え付け時期は5月頃で、収穫時期は8月頃になります(3か月くらいで収穫できます)。

【容器と土】

標準プランター(もしくは8号以上の丸鉢)に1本の割合で植えるとよいでしょう。容器の底に鉢底石(ゴロ石)をしき、その上に培養土を入れます。

【苗の用意】

ミニトマトは苗から育てると失敗しにくいです。購入の際は、葉の緑が濃く、形がキレイで茎の太い苗を選ぶようにしましょう。
また、苗ポットの上から触ってみて、土の表面が硬いものは、根が詰まり過ぎているので避けた方がよいでしょう。

【苗の植えつけ(1日目)】

購入した苗ポットは、根がよく伸びるように大きなプランターへ植え替えてあげましょう。
やり方としては、プランターの土に苗ポットより少し大き目の穴を掘り、そこへ苗をはめこみます。そして、苗とその周辺の土との隙間をなくすようになじませれば、完了です。
植え替えの際には、苗のポットを強く握ったり、長い時間触ったりしていると、根が弱りますので、手早く行うようにしましょう。

【水やり】

トマトは元々、南アメリカの日差しが強い乾いた気候で育っていた植物ですので、日本で地面に植えている場合には、梅雨が明けるまで、ほとんど水をやらずに育てることができます。
しかし、プランターで育てる場合は、土の「乾き過ぎ」で水不足になる場合が多くあります。過度に水が不足すると、実が大きく育たないばかりか、「尻グサレ病」などの致命傷を与えかねません。
ですので、基本的には毎朝(特に早朝に)水やりをするのが良いでしょう。

やり方としては、蓮口のないじょうろで、葉にかからないように直接土にゆっくりと与えます。水がプランターの下から出てくるまで、タップリとやるのがポイントです(真夏の実が太るさかりには、1日に1株およそ1ℓの水が必要となります)。
ただし、常に土が湿っていると「根腐れ」などの原因になりますので、土がある程度、乾いているかを確認した上で水やりをしましょう。特に、「梅雨どき」の水やりは控え目にして、土の表面が白く乾いている場合にのみ、適量を与えるようにして下さい。

【脇芽(わきめ)を摘み取る(2~3週目)】

細い茎のつけ根から脇芽(小さな葉っぱ)が出てきます。これを摘み取らないと「実に届けられる栄養分」が脇芽に取られてしまいます。また、風通しも悪くなり、ミニトマトが病気にかかるおそれがあります。

脇芽は「1週間に1回くらい」の頻度で摘み取ればOKです。摘み取る際のポイントは、指で手前に引いてちぎるように取ります。ちぎり取った箇所を指で触ると、ミニトマトにバイ菌が入り込みますので、触らないよう注意しましょう。

【つぼみができたら支柱を立てる(4~5週目)】

つぼみができる頃には、茎がとても伸びているはずですので、支柱を立てて下さい。支柱は根を傷つけないよう、茎から10cmくらい離れたところに立てましょう。

一般的なミニトマトは大きくなると、大人の背丈を超える高さにまで成長しますので、その大きく伸びた茎が倒れないようにする為に、支柱と茎とをヒモで8の字に誘引します(結びつけます)。
誘引するときはきつく結ばず、ある程度ゆとりをもたせるようにしましょう。

【摘心(4~5週目)】

味の良いミニトマトを収穫するポイントは「実の数を制限する」ことです。支柱を越えるくらいの高さまで育ったら(ミニトマトの花房が5~6段になったころ)、主枝の先端を摘心して(切り詰めて)、それ以上伸びないようにします。

【花が咲いたら授粉させる(5~6週目)】

花は、下から7~9本目の細い茎につきます。そのあとは、葉っぱだけの茎が3本でたら、その次の茎にまた花がつきます。

実をできやすくする為に筆や歯ブラシ等を使って、花の雌しべに花粉をつけて授粉させましょう。

大抵の場合、虫がとまったり、風などで花が揺れたときに花粉が落ちて、自然に「自家受粉」するようになっています。しかし、ミニトマトにはあまり虫はやってきませんし、風で少し揺れたぐらいではなかなか受粉しませんので、自家受粉を待つよりも手伝ってあげた方が効率的です。

【実ができたら化成肥料を足す(7~8週目)】

6月中旬ごろには、緑色のミニトマトの実が沢山なりだします。その頃には土の中の栄養はミニトマトに取られたり、かけた水によって流されたりして減っているはずですので、3~4週間に1回ほどの割合で、化成肥料を足しましょう(追肥)。

1度にまく量はだいたい5gほどですが、説明書に書かれてある分量を守ることが大切です。ポイントとしては、根を傷めないよう根本から少し離してまくことです。そしてまいたあとは、水をたっぷりあげましょう(化成肥料と水の組み合わせのかわりに「液体肥料」をあげても良いです)。

肥料が少なく栄養が足りていないときは、葉の色があせて小さく薄く硬くなります。また、最上部の葉がやや上側に巻きますので、その際は追肥の量を増やしてください。

【実が赤くなり始めたら、日当たりを確かめる(9~10週目)】

ミニトマトは日当たりの良い場所に置きましょう。実が色づく為にも、日当たりの確認は大切です。ただし、日当たりが「強すぎる場所」に置くと、皮が固くなるので適度な場所を選ぶようにしましょう。

【実が真っ赤になったら収穫する(11~12週目)】

実の色は緑色から黄色、オレンジ色、赤色へと変わっていきます。「真っ赤」になったら収穫してOKです。ミニトマトは一つの房でもすべていっぺんに赤くはならないので、毎日少しずつ収穫が楽しめます。

ミニトマトの実は、夜に栄養分を溜め込みますので、「朝」に収穫すると甘くておいしい実がとれます。ヘタの少し上にあるコブのような所を折るとカンタンにとれます。
収穫が遅れると、実が割れたり、皮が厚くなってしまいますので気をつけましょう。

【収穫後の下葉処理】

下葉はそのまま残しておくと、病害虫にかかりやすくなります。実をとり終えた房の下についている下葉は、切り取って処分するようにしましょう。

≪後編へ続く≫


参考文献

水耕栽培ナビ「野菜の栽培方法にはどんな種類があるの? 初心者におすすめの方法は?」

https://www.suikou-saibai.net/blog/2017/12/01/519

農地コンシェルジュ「ビニールハウス栽培|13のメリット・デメリットと収益順作物一覧表」

https://no-chi.com/greenhouse-cultivation/

LOVEGREEN「プランターで野菜を育てる!初心者向け基本の育て方とおすすめ野菜25選」

https://lovegreen.net/homegarden/p261818/

書籍「60日以内にできる水耕野菜づくり」北条雅章 監修

書籍「シンプル&エコに育てる おいしいベランダ菜園」たなかやすこ 著

書籍「ぜったいじょうずにそだてられる!やさいのさいばいとかんさつ① ミニトマト」藤田智 監修

書籍「総合学習遊んで学ぶ野菜の本5 ベランダは野菜畑」伊藤正 監修

書籍「そだててあそぼうトマトの絵本」もりとしひと編集

書籍「科学のアルバムかがやくいのちミニトマト 実のなる植物の生長」亀田龍吉 著