麦茶を健康的に楽しもう!効果的な作り方・飲み方と注意点について

麦茶は日本人にとって馴染みのある飲み物ですが、期待される効果や注意点について詳しく知っている人は意外と少ないかもしれません。また、インド発祥の伝統医学「アーユルヴェーダ」の観点から見たデトックス効果についても、一般的にはあまり知られていません。
今回は、あまり知られていない麦茶の意外な特性についてご紹介します。
目次
麦茶ってどんなお茶?
皆さんは、麦茶の原料をご存じでしょうか?
麦茶の原料は大麦の実の部分になります。
大麦の種類は「二条大麦」と「六条大麦」の2つに大別され、麦茶の原料には主に六条大麦が使われます。この六条大麦の実を焙煎し、水やお湯に抽出(水出し・お湯出し・煮出し)したものが麦茶です。
焙煎というのは、生豆(生の大麦の実)を加熱しながら乾燥させ、含有成分を化学変化させて、風味を引き出す作業のことです。コーヒー豆に対してよく使われる言葉ですが、麦茶の製造過程においても焙煎は行われます。
焙煎方法には以下の種類があり、それぞれの方法によって風味が微妙に異なるようです。
砂煎り焙煎 | 直火釜の中に熱した砂と原料を入れて焙煎(砂釜焙煎とも呼ばれる) |
熱風焙煎 | ガスバーナーから発生した熱風により焙煎 |
直火焙煎 | 原料に直接火を当てて焙煎 |
現代では、焙煎後の実をそのまま煮出してお茶を作ることは少なくなり、実を粉砕してティーバッグ状にしたものを使うのが一般的です。
麦茶の健康作用
麦茶の一番の特徴は、「カフェイン」と「タンニン」を含んでいないことです。この二つの成分は、少量の摂取であれば、状況によって体に良い影響を与える可能性があります。しかし多量に摂取すると、以下のような作用が現れることがあるため、基本的には摂取量を控えめにする必要があります。
カフェイン:覚醒作用、利尿作用など
→過剰摂取は、めまい、動悸、不眠などを引き起こす可能性がある。
タンニン:鉄分の吸収阻害、便秘、消化不良など。
→過剰摂取は、鉄欠乏性貧血や消化器系の不調に繋がる可能性がある。
他の一般的なお茶と違い、麦茶にはこれらの成分が含まれていないため、赤ちゃんや妊婦さん、お年寄りの方などにも安心して飲まれています。
また、麦茶には以下の有用な成分が含まれています。
ビタミン
ビタミンB群:エネルギー代謝の向上
ビタミンE:抗酸化作用による細胞の老化防止、生活習慣病の予防
ミネラル
カリウム:体内の余分なナトリウムを排泄し、血圧を下げる
マグネシウム:骨や歯の構成物質、神経や筋肉の機能維持、エネルギー代謝の向上
カルシウム:骨や歯の構成物質、血液凝固、心筋の収縮促進
リン:骨や歯、細胞膜の構成物質、エネルギー代謝の向上
その他
ポリフェノール:抗酸化作用による細胞の老化防止、虫歯予防
メラノイジン(褐色成分):虫歯予防
GABA(アミノ酸の一種):ストレス軽減、睡眠の質の向上、肌の弾力維持
アルキルピラジン(香気成分):血流促進、脳のリラックス
Pクマル酸:ガン抑制
デトックスにも最適
5,000年以上の歴史を持つインドの伝統医学「アーユルヴェーダ[※1]」では、病気の原因として「体内に毒素が溜まるプロセス」を次のように説明しています。
「カパが多いものを摂ると、アグニが低下し、アーマが溜まって病気になる」
これを分かりやすく言うと、「ネバネバして重い性質を持つもの(カパ)を摂ると、消化力(アグニ)が低下し、毒素(アーマ)が溜まって病気になる」[※2]ということになります。
「ネバネバで重い性質を持つもの」の代表例としては、小麦に含まれるグルテンなどが挙げられます。グルテンは、腸などの消化器官の粘膜にへばりつき、消化や吸収に悪い影響を及ぼす可能性があることで知られています。
一方で、大麦は多くの穀物の中でも、最も軽い性質を持つもの(カパが少ない)と考えられています(実際、大麦にはグルテンが含まれていません)。そのため、日常的に麦茶を飲むことで、体内の余分なカパを浄化し、消化力を健やかに保つと言われています。
さらに、アーユルヴェーダでは、カパの少ないものを摂ると「ヴァータ」をよくするとも言われています。ヴァータとは、「軽くて、動きを生み出す性質」のことで、簡単に言うと「流れをよくする」働きを指します。上項でも触れましたが、麦茶にはアルキルピラジンによる血流促進作用や、カリウムによる利尿作用があり、これらの働きがヴァータの改善と関連していると考えられます。
※1. 西洋医学では補完医療として扱われていますが、インドでは公式な医療システムの一つとして認められており、2014年にはAYUSH省が設立されています。
※2. アーユルヴェーダの用語には広い概念が含まれているため、本記事では理解しやすいよう簡略的に説明しています。
麦茶と白湯の組み合わせ
また、白湯もデトックスに適した飲み物の一つです。
白湯を飲むことで体が温まり、体内の毒素排出が促されるため、体質バランス(性質バランス)が整いやすくなります。
このバランスが整う状態を、アーユルヴェーダでは「ドーシャが良くなる」と表現します。
ドーシャとは、上述の「カパ」「ヴァータ」に加え、「ピッタ[※1]」という体質を含む、3つの体質バランスのことを指します。
白湯と麦茶はいずれもドーシャを整え、デトックスに適した飲み物ですが、それぞれの特徴には違いがあります。
アーユルヴェーダ医療の第一人者である蓮村誠先生は、著書『麦茶 毒出し健康法』の中で次のように説明しています。
白湯 :消化力を上げる
麦茶 :消化力を上げないが、悪化したドーシャ(特にカパ)を整える
この違いから、蓮村先生は「起床後すぐ」と「食事中」には白湯を飲んで消化力を上げ、それ以外の時間には麦茶を飲んでドーシャを整えることを推奨しています[※2]。
【蓮村先生が推奨する麦茶の作り方・飲み方】
・麦茶パックを選ぶ際は、できるだけ「有機無農薬栽培」のものを選ぶ
・水出しやお湯出しではなく、やかんなどを使って(火にかけて)煮出して作る
・沸騰後10~15分ほど煮出し続け、その後パックを取り出す[※3]
・冬場はなるべく熱い状態のまま保温し、少量ずつ飲む
・夏場も冷やしたりせず、常温または程よく熱い温度で飲む
・作り置きをせず、その日のうちに飲み終える
夏場にどうしても冷たい麦茶を飲みたい場合は、自然に常温まで冷ました後、冷蔵庫で少しだけ冷やして飲むことが推奨されています。氷を入れて急激に冷やすとヴァータが乱れ、そのような麦茶を長期間飲み続けると静脈瘤のリスクが高まると言われているため注意が必要です。
また、麦茶を飲む際には、自分のドーシャの状態を把握し、それに合った飲み方をすることが大切とも説明されています。これは「個人の体質や体調に合った飲み方をする必要がある」ということです。ドーシャの確認方法を詳しく知りたい方は、蓮村先生の著書『麦茶 毒出し健康法』を参考にするとよいでしょう。
※1. ピッタ:熱く、変化を促す性質のこと
※2. 著書によると、食事中の麦茶の飲用は推奨されていません。
※3. アーユルヴェーダでは、パックをやかんに残したままにすると、麦茶の「毒素の浄化力」が損なわれると考えられています。
麦茶を飲む際の注意点
体に良いと言われる麦茶ですが、注意すべき点がいくつかあります。
以下の点に注意してください。
大麦アレルギー
麦茶には大麦の成分が多く含まれているため、大麦アレルギーの人が麦茶を飲むと、喘鳴や蕁麻疹などのアレルギー症状が現れることがあります。このリスクにおいて、最も注意を払わなければならないのが、初めて麦茶を飲む赤ちゃんに対してです。
麦茶は、赤ちゃんの水分補給に適した飲み物として知られていますが、初めて飲ませる際には、大麦アレルギーの可能性を考慮して、少しずつ様子を見ながら与えなければいけません。
小麦アレルギー
大麦にはグルテン(小麦のタンパク質複合体)が含まれていませんが、グルテンに似た物質が含まれています。そのため、重度の小麦アレルギーを持つ人の中には、大麦を摂取してもアレルギーを起こす場合があります。このように、アレルギーの原因物質と似た構造を持つ物質に反応して、アレルギー症状が現れるリスクのことを「交差抗原性」といいます。
ナトリウム欠乏
夏場に大量に汗をかきながら麦茶をガブ飲みするシーンをよく見かけますが、この状態はナトリウム欠乏に陥る可能性があります。その理由は、発汗で体内のナトリウムが失われることに加え、麦茶に含まれるカリウムが尿中のナトリウム排泄を促進するためです。
また、ナトリウムを含んでいない麦茶を急激にたくさん摂取することで、体内のナトリウム濃度が薄まり、それによって低ナトリウム血症が起きる可能性もあります。低ナトリウム血症になると、吐き気や疲労感、頭痛といった初期症状が現れ、重症の場合には意識障害を引き起こすこともあります。
麦茶を多く飲む際は、塩を少し入れるなどして、リスクを抑えるようにしましょう。
保存性の低さ
麦茶には、大麦に含まれるでんぷんやタンパク質が溶け出しています。そのため、麦茶は市販のお水や水道水よりも、雑菌が繁殖しやすく、腐敗しやすい飲み物なのです。
アーユルヴェーダの第一人者である蓮村先生は、「作ったその日のうちに飲み終えるのがよい」と著書の中で説明されていますが、衛生的な観点からみても理にかなっていると言えるでしょう。
麦茶を作るときのお水選び
アーユルヴェーダでは、麦茶は煮出して作ることが推奨されています。しかし、煮出すには時間がかかるため、忙しい人にとっては不向きなこともあるでしょう。
最も簡単な麦茶の作り方としては、「水出し」という方法があります。これは常温のお水の中に、お茶パックを入れるだけのシンプルな抽出方法です。
水出しで麦茶を作る場合、使用するお水は、次の三つのポイントで選ぶとよいでしょう。
・清潔で安全な水
・手軽に入手でき、コストが抑えられる水
・抽出力に優れた水
代表的なお水の選択肢としては、浄水やミネラルウォーター、電解水素水が挙げられます。
それぞれのお水について、みてみましょう。
浄水
日本の水道水は品質が高いことで知られていますが、消毒のための塩素によるカルキ臭や、地域によってはPFAS(有機フッ素化合物)の検出が問題視されています。そのため、麦茶作りはもとより、日常の水分補給や料理などには、浄水器でキレイにろ過された「浄水」を使用することが、基本となりつつあります。また、浄水器を導入すれば日常的に使用できるため、コスト面でも継続しやすい選択肢の一つと言えるでしょう。
市販のミネラルウォーター
ミネラルウォーターは、ブランドごとに味や口当たりが異なり、好みに応じて選べる点が魅力です。また、保存性や持ち運びのしやすさもメリットです。
一方で、購入の手間やコスト、ペットボトルの廃棄問題がデメリットとして挙げられます。また、PFASについては現時点で食品衛生法などによる規制がなく、ミネラルウォーターの中にもPFASを含むものがあるようです。
電解水素水
電解水素水は、整水器によって水を電気分解することで生成されるアルカリ性の水で、「胃腸症状の改善」が効果として認められており、日々の健康管理に活用できる水として知られています。
また、日常の飲用から料理全般に利用できて、主婦層からとても人気があります。電解水素水の特性として「高い抽出力」があり、水出し茶はもとより料理の下ごしらえや出汁取りなどに最適です。
また、電解水素水を生成する整水器には、塩素や不純物を除去するフィルターが付帯されており、安全性を確保しやすいという利点もあります。整水器の導入には初期費用がかかりますが、長期的にはミネラルウォーターなどを飲み続けるよりもコストが抑えられ、買いに行く手間や、ゴミの増加を抑えられるというメリットもあります。
麦茶をおいしく、安心して楽しむためには、それぞれの水の特徴を理解し、自分のライフスタイルに合ったものを選ぶことが重要です。日々の健康を考えながら、最適な水を選びましょう。
さいごに
麦茶の作り方には、「水出し・お湯出し・煮出し」の三つの方法があります。
アーユルヴェーダではデトックスの観点から煮出しが推奨されていますが、作り方や飲み方はライフスタイルに合わせて選ぶことが大切です。たとえば、お風呂上りや運動後には、手軽に作れる水出しが適している場合もあります。また、逆流性食道炎など胃の負担を避けたい方にとっては、熱い麦茶よりも冷ましたものや常温の麦茶の方が飲みやすいでしょう。
その時々の体調やシーンに応じて、最適な方法を選んで麦茶を楽しんでみてください。
参考文献
京都グレインシステム株式会社「麦茶について(焙煎大麦のポイント)」
https://kyoto-grain.co.jp/archives/1327
コープこうべ 商品検査センター「麦茶にタンニンやカフェインは含まれているか?」
https://kensa.coop-kobe.net/qa/milk/post-244.html
PR TIMES「株式会社公益創造センターのプレスリリース|世界初! 米国生まれの-胃を荒らさない-コーヒーが日本初上陸」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000070628.html
ふるなび「ふるさと納税DISCOVERY|貧血を防ぐ食べ物は?鉄を効率よく摂取する食べ方も紹介」
https://furunavi.jp/discovery/knowledge_food/202411-anemia/
山本山「夏の定番!麦茶の意外な健康効果とは?」
https://yamamotoyama.co.jp/blogs/column/reading106
雪印メグミルク株式会社「骨とカルシウム~カルシウムの働きと骨との関係~」
https://www.meg-snow.com/hone-goodstory/knowledge/ca/
ふたば歯科クリニック「お茶が持つ虫歯予防効果について」
https://www.futaba-shika.com/【川崎で虫歯治療】お茶が持つ虫歯予防効果につ/
株式会社ファーマフーズ「機能性表示食品制度対応GABA(ギャバ)」
https://www.pharmafoods.co.jp/products/food-with-function-claims
オレンジページNET「血液サラサラになる飲み物はホット麦茶|おすすめの飲み方4つ」
https://www.orangepage.net/ymsr/news/daily/posts/13883
全国麦茶工業協同組合「麦茶の効能」
http://www.mugicya.or.jp/effect/index.html
健栄製薬「Vol.41 【医師監修】パンやパスタなどの小麦食品を食べると便秘になりやすいってホント?」
https://www.kenei-pharm.com/ebenpi/column/column_41/
日本精麦「大麦について」
https://www.nichibaku.co.jp/大麦について/
Government of India「Ministry of Ayush」
https://ayush.gov.in/index.html#!/
ケララ アーユルヴェーダ アカデミー「インドにおける医療制度、その中のアユールヴェーダの位置」
https://ayurvedain.jp/positionayurveda.php
Science Portal India「WHOがインドに伝統医療センターを開設、アユルベーダ(Ayurveda)を後押しへ」
https://spap.jst.go.jp/india/experience/2022/topic_ei_14.html
神奈川県ホームページ「インド政府アユシュ省」
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/mv4/globalstrategy/indiaayush.html
岡原内科皮ふ科クリニック「統合医療研究所|アーユルヴェーダ」
https://www.okahara-c.com/imi/ayurveda/
J-GLOBAL「岡本典子・楠目和代|日本小児アレルギー学会誌|麦茶で喘鳴をきたした大麦アレルギーの一例」
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201502214552488709
藤田医科大学(旧・藤田保健衛生大学)「食物アレルギーひやりはっと事例集2019」
https://www.fujita-hu.ac.jp/general-allergy-center/pdf/hiyarihatto-2019.pdf
中央町こどもとアレルギークリニック「小麦アレルギーについて」
https://chuochokodomo.com/小麦アレルギーについて/
大麦ラボ「大麦と小麦の違い、アレルギーについて」
https://mugi-lab.jp/contents/index17.php
大塚製薬「ADPKD.JP |ナトリウム - 栄養素から見た腎臓〜腎由来のさまざまな血液中の成分の異常」
https://adpkd.jp/yomoyama/vol05_01.html
ふるさと納税DISCOVERY「夏に美味しい麦茶の効能7選|飲用時の注意点もあわせて紹介」
https://furunavi.jp/discovery/knowledge_food/202307-barley_tea/
Yahoo!「神戸で製造の飲料水からPFAS 昨年2回検出、暫定目標値の倍」
https://news.yahoo.co.jp/articles/936236b047cad7970f460b8dd231f5e199236b7c
デイリー新潮「“発がん性物質”PFASへの対応をミネラルウォーター「主要ブランド46本」に一斉調査!安全チェックで「三ツ星」を獲得した商品とは…」
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/08201103/?all=1&page=2
朝日新聞デジタル「ミネラルウォーターからPFAS検出 水道水の暫定目標値超える濃度 [兵庫県]」
https://www.asahi.com/articles/ASS753FGGS75PIHB015M.html
株式会社保健同人フロンティア「みんなの家庭の医学 WEB版|高カルシウム血症」
https://kateinoigaku.jp/disease/689
書籍「麦茶毒出し健康法」蓮村誠 著
