ミネラルとは何か? 健康のために知りたい、ミネラルの3つのコト
私たちの体は、様々な栄養素によって維持されています。それらの栄養素は、骨格を構成したり、血液や臓器をつくったり、他にも生きていく上で必要なありとあらゆる生理作用(生物の身体機能に影響を与える作用)を営んでいます。その中でミネラルの果たす役割は非常に大きく、「炭水化物・脂質・タンパク質・ビタミン」と並ぶ、五大栄養素の一つにも数えられています。
私たちの体に様々な形で関与し、健康維持にも大きく貢献しているミネラルですが、一般の人たちにはあまりよく知られていないのが現状です。
そこで今回は「ミネラルとは何か? 健康のために知りたい、ミネラルの3つのコト」と題しまして、ミネラルに関する基礎知識をご紹介させて頂きたいと思います。
目次
ミネラルとは
ミネラルとは、生体を構成する主要4元素である「酸素・炭素・水素・窒素」以外の元素の総称です。
構成比率としては、主要4元素が約95%を占めていて、ミネラルは残りの5%ほどになります。体内存在量(必要量)は少量ですが、体に与える影響は非常に大きく、生きていく上で「必要」な栄養素です。
ミネラルの語源は英語の「Mine(鉱山)」からきています。そして「Mineral」という単語を日本語に訳すと「鉱物」になることから、地殻を構成する岩石や、金属類などもこれに含まれるわけです。しかし、これは広義の解釈であり、その解釈範囲も広く、なかなか収集がつきません。
ある種の文献ではミネラルのことを「生体金属元素」と呼んでいますが、ミネラルの中には「フッ素」や「ヨウ素」などの非金属も含まれている為、この表現が正しいとは言えません。一般的には、上記の「主要4元素」に対して、生体に必要な微量元素、つまり「生体微量元素」という解釈で扱われることが多い物質です。
ミネラルの種類
現在、地球上には103種類の元素の存在が確認されています(人工元素を含む)。
その内、約60~70種類の元素(生体微量元素)が人間の体内で活躍していると言われ、さらに、その内16種類の元素は、体の成長や生命活動を維持する上で、どうしても必要なミネラル群だといわれています。これを「必須ミネラル」といいます。
≪必須ミネラル:16種類≫
①カルシウム
②リン
③カリウム
④硫黄
⑤塩素
⑥ナトリウム
⑦マグネシウム
⑧鉄
⑨亜鉛
⑩銅
⑪ヨウ素
⑫マンガン
⑬セレン
⑭モリブデン
⑮クロム
⑯コバルト
また、上記①~⑯の必須ミネラルは、1日の摂取量によって「主要(多量)ミネラル」と「微量ミネラル」に分けられます。
1日の摂取量が100mg以上のもの・・・「主要ミネラル(①~⑦)」
1日の摂取量が100mg未満のもの・・・「微量ミネラル(⑧~⑯)」
必須ミネラルの摂取量の指標については、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の中で定められています(ただし「硫黄・塩素・コバルト」の3種類については下記の理由から記載されていません)。
硫 黄・・・たんぱく質に含まれ、その取得基準を満たせば必要量が摂取できる為
塩 素・・・食塩に含まれ、その取得基準を満たせば必要量が摂取できる為
コバルト・・・ビタミンB12に含まれ、その取得基準を満たせば必要量が摂取できる為
ミネラルの役割
ミネラルの主な役割は、次の3つに大別されます。
- 歯や骨格を構成するいわゆる人体の構造材料としての役割(カルシウム・リンなど)
- 体の発育、新陳代謝をつかさどるホルモンとしての役割(鉄・ヨウ素など)
- 神経細胞膜を包む体液に溶けてイオンとして活躍する役割(ナトリウム・カリウムなど)
ただし、ミネラルは元素ごとにそれぞれ異なる役割(働き)を持っています。
ここでは、代表的なミネラルを5つとりあげ、それらの役割について解説をしていきます。
カルシウム
体内でのカルシウム分布量は、歯や骨格に99%、細胞の内外に0.9%、血液に0.1%です。
主な役割としては、①リン酸カルシウムとして歯や骨をつくる、②筋肉の収縮、③神経興奮の抑制、④血液の凝固、⑤酵素の活性化促進および調整などです。
カルシウムが欠乏すると、骨軟化症、骨粗しょう症、歯質の低下などの症状が現れます。
マグネシウム
体内でのマグネシウム分布量は、歯や骨格に50~60%、残りは軟組織や髄液、その他血球や筋肉の細胞内に分布しています。
主な役割としては、①歯や骨をつくる、②酵素の補因子、③タンパク質の合成、④体液中のカルシウムが減少すると骨格からカルシウムを取り出す、⑤神経や筋の興奮性の正常化などです。
マグネシウムが欠乏すると、動悸、不整脈、筋肉の痙攣、情緒不安定(イライラ)などの症状が現れます。
カリウム
カリウムの体内存在量は全血液で200mg/dl、血漿では20mg/dl、神経組織では530mg/dl、また、細胞では440mg/dl、筋肉組織では300mg/dl程度といわれています。
主な役割としては、①細胞内液の酸、塩基のバランス維持、②細胞内液の浸透圧の調整、③筋収縮および神経の刺激伝達、④リボソーム(タンパク質合成の場をなす細胞小器官)上でのタンパク質の合成などです。
カリウムが欠乏すると、低カリウム血症、筋肉の脱力感、頻脈、心拡張などの症状が現れます。
鉄
鉄はその70%が赤血球のヘモグロビン(鉄を含む色素タンパク)に含まれます。
主な役割としては、①全身の細胞に酸素を運ぶ(ヘモグロビン)、②筋肉中に酸素を供給する(ミオグロビン)、③フェリチン(鉄の貯蔵・血清鉄濃度の維持を行う蛋白)に使用される、④酸化還元酵素の活性化などです。
鉄が欠乏すると、皮膚蒼白、動悸、目まいなどの症状が現れます。
ナトリウム
体内でのナトリウムの1/3は頭骨や骨格に存在し、残りはナトリウムイオンとして細胞外液中に分布しています。
主な役割としては、①細胞外液の酸・塩基のバランス維持、②体液浸透圧の維持、③神経の刺激伝達、④食欲の増進などです。
ナトリウムが欠乏すると、副腎皮質不全(アジソン病)、高温環境不適応症、低ナトリウム血症、慢性腎疾患などの症状が現れます。
ミネラルの摂り方
ミネラルは体内で作ることができないため、食事や水、サプリメントなどから摂取する必要があります。
それぞれの摂取方法について、もう少し詳しく見ていきましょう。
食事
ミネラルは毎日の食事から摂取するのが基本です。具体的には、次のような食品にミネラルが多く含まれると言われています。
・カルシウム…牛乳や乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜など
・マグネシウム…豆類や種実類、海藻類、魚介類など
・カリウム…果物、野菜、芋類、干物など
・鉄…レバー、海藻類、貝類、緑黄色野菜など
・ナトリウム…食塩、しょうゆなど
ミネラルを摂取する際には、他の栄養素との組み合わせを意識すると良いでしょう。たとえば、「カルシウム×ビタミンD」や「「鉄×ビタミンC」といった相性の良い栄養素と組み合わせて摂取することで、それらの吸収率がアップすると言われています。
ミネラルウォーター
ミネラルウォーターとは、地下水をくみ上げて「ろ過、沈殿、加熱殺菌等の処理」を行ったものです。地層を滞留・移動する間に土壌中のミネラルを溶解することから「ミネラル」の名が付けられています。ただし、ミネラルの含有量についての具体的な定義があるわけではありません。ミネラルウォーターとして市販されている商品の中には、ミネラルがほとんど含まれていないものもあります。
ミネラルの含有量を確認したい場合は、商品ラベルに記載されてある「硬度」が目安になります。硬度とは水に含まれるカルシウムとマグネシウムの合計含有量の指標で、その量によって「軟水」や「硬水」といった水の分類がかわります。一般的には、「軟水」の方が口あたりもよく美味しいと言われ、硬水は少しクセがあり、人によっては飲みにくさを感じることもあるようです。
・軟 水──硬度0~100mg/ℓ
・中硬水──硬度101~300mg/ℓ
・硬 水──硬度301mg/ℓ以上
日本の水道水は軟水に分類されます。そして、その水道水からも若干量のミネラルを得ることはできますが、常飲するには少し抵抗を持たれる方もいるかもしれません。
残留塩素などを除去したキレイな水を自宅で手軽に飲みたい場合、「電解水素水」という水を飲む方法もあります。電解水素水は、水道水よりもミネラル分を5~20%多く含んでいるため、栄養面において、水道水よりもベターといえます。また、電解水素水を生成する「電解水素水整水器」には胃腸症状の改善効果が認められているため、日々の健康管理という面からも良いといえるでしょう。硬水が口に合わない方や、買い物に行きたくない方にもオススメです。
サプリメント・健康食品
ミネラルを摂取するために、サプリメントや健康食品を活用している方も多いのではないでしょうか。これらは、普段の食生活だけでは不足しがちなミネラルを手軽に摂取できる便利なアイテムです。複数の成分がバランスよく配合されていたり、体内で吸収されやすい形になっていたりと、食事から摂取するよりも効率的に摂取できるというメリットがあります。
その反面、過剰摂取による体調不良などが起こる可能性や、これらに頼るあまり、食生活がおろそかになってしまうというデメリットもあります。ミネラルはできるだけ食事から摂取するようにし、足りない部分を健康食品やサプリメントで補うようにしましょう。
さいごに
人間の体にとってミネラルは、まさに「必須の栄養素」であり、不足しないように日々の食事などでは気をつけたいところです。しかし逆にミネラルの摂り過ぎは、過剰症を引き起こしてしまいます。1日の必要量が100mg未満の鉄や亜鉛などを摂り過ぎると、中毒を起こします。また、ナトリウムの摂り過ぎは高血圧症に繋がるなど、生活習慣病とも深いかかわりがあります。まずは、自分に合った摂取量を調べることから始めてみましょう。
参考文献
農林水産省「栄養素と食事バランスガイドとの関連性」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/guide.html
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「ミネラルについての解説|ミネラルについて」
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail655.html
分子生理化学研究所「身体の調整に欠かせない栄養素~ミネラル~(2020.6.19)」
https://www.mpc-lab.com/blog/20200619
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「ミネラルについての解説|ミネラルについて」
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail655.html
厚生労働省「「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
独立行政法人 国立健康・栄養研究所「健康・栄養フォーラム-質問板-塩素,硫黄,コバルトの摂取基準」
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/hn/modules/d3forum/index.phptopic_id=255.html
ダノンジャパン株式会社「ミネラル量と水の硬度|硬水と軟水の違い」
https://www.evian.co.jp/mineral/hardsoftwarter.html
書籍「トコトンやさしいミネラルの本」谷腰欣司 著