硬水の効果とは?軟水との違いやメリット・デメリットを解説
水はどれも見た目は同じですが、その成分や加工法などによって、いくつかの種類に分類されます。その種類の中には、硬度の高低によって分類された「硬水・軟水」という種類の水があります。
近年、「硬水」という言葉は、美容やダイエットの話題でよく耳にしますが、私たちが慣れ親しんでいる「軟水」との違いを具体的に知っている人は、思いのほか少ないのかもしれません。
硬水にはさまざまなメリットがあり、いろいろな料理に幅広く活用されています。しかし、一部の人にとっては硬水が体に負担を与えてしまう場合もありますし、料理によっては不向きなものもあります。
今回は何かと耳にすることの多い「硬水」について、メリットやデメリットなどをより踏み込んで解説していきたいと思います。
目次
硬水とは
水の種類は実に多くあり、採水された国やブランドなどによって、それぞれ味やのどごしが異なります。様々な種類の水を大別する分類指標の1つとして、硬度による分類があります。
硬度が高い水のことを「硬水」と呼び、低い水のことを「軟水」と呼びます。
硬度というのは、水に含まれているカルシウムとマグネシウムの量を数値化したものです。つまり、カルシウムとマグネシウムがたくさん含まれている水が「硬水」で、あまり含まれていない水が「軟水」というわけです。
一般的に日本の水は、水道水も含めてほとんどが「軟水」です。それに対して海外、特にヨーロッパの水は「硬水」のものが多く見られます。これは日本と海外の「地形・地層」の違いによるものと考えられています。
ヨーロッパの場合、大地にしみ込んだ雨水などが、広大で平坦な国土の地中をゆっくりと流れていくことで、たくさんの成分を水に含ませることができます。しかし、狭小で山から海までの傾斜がきつい日本の国土では、雨水などが地中を流れる時間が短いので、その分だけ水に含まれる成分も少なくなるのです。
また、ヨーロッパの地層はミネラルが多い「堆積岩」が中心です。それに対して、日本の地層はミネラルの少ない「火成岩」が中心となっています。こういった「地形・地層」の違いが、硬度の高低となって表れているのです。
硬水と軟水の味の違い
日本の水道水や、日本のミネラルウォーターの多くは「軟水」です。そのため、日本人の多くは、軟水なれしていることもあり、硬水を飲んでもあまり美味しいと感じない人も多くいます。
硬水の味は、軟水に比べて少し重たい感じがします。また、若干の苦みやエグみを含んだ水もあり、こういった味の特性が苦手で硬水を飲まないという人も多くいます。
しかし、中にはこういったクセのある水を「飲みごたえがある水」として、好んで飲まれる人もいます。そういった人の多くは、軟水を飲んでも満足感を得られなかったり、物足りなさを感じるようです。
一方、軟水の味は、苦みやエグみがほとんどなく、口あたりがまろやかで、ノドゴシもやさしいものが多いようです。こういった味の特性から、軟水は硬水よりも万人受けしやすい水であると言えるでしょう。
硬水に含まれるその他のミネラル
前述のとおり「硬水・軟水」の分類は、カルシウムとマグネシウムの含有量によって決定されます。しかし、硬水の中に含まれているミネラルは、カルシウムとマグネシウムだけではありません。他にもさまざまなミネラルが含まれている水もあり、それらの含有比率などによって同じ硬度の硬水でも、異なる味や口あたりを楽しむことができるのです。
【その他のミネラル】
ナトリウム、カリウム、セレン、亜鉛、銅、鉄、マンガン、ケイ素、ヨウ素、バナジウム、ゲルマニウム 、サルフェート など
硬水のメリット
硬水は味や口あたりにクセがあり、苦手としている人もたくさんいます。しかし、飲用することで体の調子がよくなったり、肌の状態に良い変化を感じた人は、硬水を一種のサプリメントと捉えて、継続的に飲用していることもあるようです。硬水には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。また、巷でメリットとして言われていることは本当なのか、何がそのようなメリットをもたらせているのか、いくつか例を出して見ていきましょう。
動脈硬化を予防し、心筋梗塞や脳梗塞から身を守る?
動脈硬化の予防においてはカルシウムの役割は重要です。体内でカルシウムが不足すると、体は血液中のカルシウム濃度を一定にしようとして、骨などからカルシウムを血液中に放出します。その放出は適量以上になされることが多く、過剰に放出されたカルシウムは血管壁に付着して、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞になりやすくなるのです。あらかじめカルシウムを多く含む硬水を飲んでおくことで、このようなリスクを抑えることができると言われています。ただし、カルシウムは硬水以外からも摂取は可能です。
カルシウムが毛穴の黒い汚れをとってくれる?
新陳代謝が低下すると、古い角質や角栓(小鼻周辺などに多く見られる毛穴の黒ずみ)など、肌の汚れを落とす力が弱まります。黒みがかった角栓を一気にはがしとるシートなども市販されているようですが、効果は一時的で根本的な改善には至りません。根本的な改善を狙うには、新陳代謝を高める必要があります。その点、硬水に含まれている「カルシウム」には血流を良くさせ、新陳代謝を高める働きがあるといわれております。
便秘を解消する?
マグネシウムを多く含んだミネラルウォーターは、便に水分を吸収させて、柔らかくする効果があります。便秘治療のために病院へ行くと、大抵の場合「酸化マグネシウム」の入った薬が処方されます。マグネシウムは下剤としても使われるほど、便秘に効果があるのです。だからと言って硬水に便秘解消の医療効果が認められているわけではありません。後述しますが、中にはマグネシウムの摂り過ぎにより下痢になる方もいらっしゃいます。
ダイエット効果も期待できる?
若い人に硬水が認知されている大きな理由の一つとしては、水のみダイエットに「硬水」が使用されていることが多いからではないでしょうか。硬度が1000mg/L以上の超硬水をヨーロッパでは「スリムウォーター」と呼んでいます。この水に含まれている多量のカルシウムが、脂肪の燃焼を促進したり、脂肪の吸収を制御したりする効果が指摘されています。但し、こちらも臨床試験などを経て薬事承認を得た「痩身効果」ではありません。あくまでもカルシウムの作用といわれております。
硬水のデメリット
前述のとおり、硬水には科学的な検証はないものの、中に含まれるミネラルの影響で、一定の健康効果が期待できそうです。しかし、内臓の働きが弱い人や、内臓になんらかの支障をきたしている人は、硬水を飲むことでその症状を悪化させてしまう可能性もあります。
下記に該当する人はもちろんのこと、該当しない人であっても、過剰に飲むことで体を傷めてしまう場合もあります。飲用にあたっては十分に注意をして、まずは少量ずつ飲んで様子を見るようにしましょう(内臓に問題を抱えている方は、必ず飲用前に医師の確認を取って下さい)。
腎臓の疾患を持つ人には不向き
腎臓の疾患(腎不全など)を持っている人が硬水をとりすぎると、カルシウムが正常に濾過できず、カルシウム過剰による「尿路結石」などを引き起こす可能性があります。また、腎不全に陥っている場合には、マグネシウムの排出能力も著しく低下していることが多いため、高マグネシウム血症を引き起こす危険性もあります。高マグネシウム血症に陥ると、低血圧や呼吸抑制などが症状としてあらわれ、重度の場合、心停止のリスクもあります。その為、摂り過ぎには注意が必要です。
内臓の弱い人や赤ちゃんには不向き
胃腸の弱い方や内臓が未発達な赤ちゃんは、ミネラルを多く含む硬水を飲むことは控えた方が良いでしょう。もともと日本人は硬水に慣れていないということもあり、健康な成人が飲んでもマグネシウムの働きなどによって、下痢になってしまうこともあります。特に赤ちゃんの場合は、内臓がまだ十分に発達していませんので、胃や腎臓へのダメージが心配されます。ミルクの調乳などには、軟水を使用した方がよいでしょう。
体力を消耗しやすい
硬水はミネラルがたくさん含まれている分、体内で吸収する際には、比較的多くのエネルギーが必要になります。疲労体質の方やガンと闘病中の方などにとって、硬水の飲用は体力の消耗をより加速させてしまうことになりますので注意が必要です。
食べ物との相性
硬水は肉料理を中心とした「西洋料理」に適しています。特にシチューなどの「煮込み系(煮物系)」にはピッタリです。スジ肉の長時間の煮込みや、牛スネ肉を使ったスープストック(煮出し汁)などをつくる際には、硬度300mg/Lくらいの硬水が抜群の相性をみせてくれます。
本来、肉類はたんぱく質の性質によって、煮込んでいくと硬くなってしまいます。しかし、そのたんぱく質にカルシウムが結びつき、アクとなって抽出されることによって肉が柔らかく仕上がるのです。しかも、長時間肉を煮込んでも臭みが出にくく、肉の成分もきちんと抽出してくれます。
硬水は他にも、パスタをゆでるお湯にも適していると言われています。パスタ内のデンプンと、硬水のカルシウムとが結びつくことによって、コシのあるアルデンテが作れるのです。
また他にも、チャーハンやパエリアなどに使用するごはんをパラパラとした食感にするために、炊飯用水として硬水(または中硬水)が使われることもあるようです。
飲み物との相性
まずはお茶についてですが、お茶は「日本茶・紅茶・中国茶」に大別することができます。その内、日本茶は「旨味」を重視し、紅茶や中国茶は「香り」を重視しているお茶ということができるでしょう。
お茶の「旨味」は、水の硬度が高いほど抽出されにくくなるため、硬水は日本茶には不向きです。逆にお茶の「香り」は、水の硬度が高いほど抽出されやすくなるため、紅茶や中国茶には硬水が向いているといえます(硬度100mg/L程度の中硬水がオススメです)。
次にコーヒーついてですが、使用する水は「中硬水」または「硬水」が一般的です。しかしコーヒーの場合は、そこから更にこだわりの調整がなされることもあるようです。それは「浅煎り・深煎り」といった豆の焙煎具合に合わせて、硬水の種類(ミネラル含有量)を変えるやり方です。この調整方法によって、酸味や苦みを自分好みにカスタマイズすることができるのです。なんとも奥が深いものです。
【コーヒー豆と水の組み合わせ】
・浅煎り豆 × カルシウムの少ない中硬水 = 酸味がより引き立つ
・浅煎り豆 × カルシウムの多い硬水 = マイルドな苦みに抑える
・深煎り豆 × カルシウムの多い硬水 = マイルドな苦みに抑える
・深煎り豆 × マグネシウムの多い硬水 = 苦みがより引き立つ
さいごに
軟水を飲み慣れている日本人からすれば、硬水はクセが強くて、あまり美味しくないと感じるかもしれません。しかし、何度か硬水を飲むうちに、味に対する印象はきっと変化してくるはずです。はじめは硬水を嫌っていた人が、いつの間にか硬水を好きになるといったケースは決して珍しくはありません。たくさんの硬水をいろいろと飲み比べてみて、お気に入りを見つけてみるのも面白いかもしれませんね。
参考文献
書籍「ミネラルウォーターパーフェクトガイド」日高良実 監修
書籍「水と体の健康学」藤田紘一郎 著
書籍「正しい水の飲み方・選び方」藤田紘一郎 著
書籍「知られざる水の「超」能力」藤田紘一郎 著
MSDマニュアル「高マグネシウム血症-10. 内分泌疾患と代謝性疾患」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/10-内分泌疾患と代謝性疾患/電解質障害/高マグネシウム血症