キャンプの水問題とは?飲み水の安全性、活用できる道具などを解説
キャンプを存分に楽しむためには事前の準備が大切ですが、器具や食料など揃えるものは沢山あり、できれば「軽く・少なく」したいところです。
絶対に欠かせないものはサイズや重量に関係なく持参するとして、「水」に関しては持参の必要性があるのでしょうか?「現地の水道設備、川の水、湧水」などを飲み水として利用できるのであれば、持参する必要性はなくなりますが、実際のところはどうなのでしょうか。
今回は、キャンプ場での「飲み水問題」について解説をしていきたいと思います。
目次
キャンプ場の水はそのまま飲める?
キャンプ場で水を確保する方法としては「現地の水道設備から確保する方法」と「自然から確保する方法」の2通りの方法があります。両者の水は安全なのでしょうか?それぞれ見ていきましょう。
現地の水道設備の水
ほとんどのキャンプ場には炊事場などの水道設備が備わっていて、蛇口をひねればすぐに水を手に入れることができます。
蛇口から出る水は、都市部や一般家庭に供給されているものと同じ「水道水」であることが多いようです。日本の水道水は水道法の水道水質基準をクリアした安全な水といわれていますので、基本的にはそのまま飲むことができます。
しかし、蛇口から出る水のすべてがそのような水とは限りません。中には、井戸水や川の水をそのまま引っぱってきているところもあります。井戸水や川の水には、有害物質や病原菌が含まれている可能性がありますので、そのまま飲むにはリスクがあります。
たいていの場合「飲用可能」もしくは「飲用不可」といった掲示がなされていますが、そのような掲示がまったくないキャンプ場もありますので、水質についてはあらかじめキャンプ場の運営会社に確認をしておくと良いでしょう。
ただ、飲み水に関して慎重なキャンパーは、屋外にある蛇口の衛生面なども考慮しています。そのため、たとえ「飲用可能」とされている水であっても、きちんと濾過(または煮沸殺菌)した上で、飲んでいることが多いようです。
自然の水(川の水や湧水など)
自然の水は清らかでおいしいイメージがあります。特に空気が澄んでいて、植物がみずみずしく生い茂っているところにある川の水や湧水は、ときに神々しさを感じることすらあります。
しかし、そのような水であっても、上流付近での野生動物の「飲水・水浴び・糞便・死骸」などが原因で、ウイルスやバクテリアなどが水中に含まれている可能性があります。
・ウイルス(ロタウイルス・ノロウイルス・A型肝炎ウイルスなど)
・バクテリア(大腸菌・サルモネラ菌・コレラ菌・赤痢菌など)
・原虫(エキノコックス・ジアルジア・クリプトスポリジウムなど)
また、上流付近にある民家や山小屋からは糞便や合成洗剤が流れ出ている可能性がありますし、農地があれば農薬の影響、地質が悪ければ有害な地質物質の影響を受けることにもなります。
「自然の水はすべて危ない」とは言えませんが、こういった危険性がある水を積極的に飲む必要はないでしょう。
キャンプ場で水を安全に飲むには
「水を安全に飲む」ことだけに注目した場合、ベストな方法は持参した水を飲むことと言えます。
しかし、キャンプの最中に持参した水が足りなくなってしまうこともあるかもしれません。そのような場合には、現地の水を飲み水として利用するしかありません。
水道設備の水が「飲用可能」な場合、基本的にはそのまま飲むことはできますが、万全を期すのであれば次の方法をとることをオススメします。
浄水器で濾過する
浄水器は家庭用のものからアウトドア用のものまで、実に多くの種類があります。中には、震災用やサバイバル用に使用できる本格的なものもあります。
浄水器の性能は、主にフィルターの目の粗さ(細かさ)によって評価されますが、キャンプ場で飲み水を確保するにあたっては、次のものをこしとるだけの性能は最低限備わっていた方が良いでしょう。
・ウイルス(大きさ:約0.5μm未満)
・バクテリア(大きさ:約0.5~10μm)
・原 虫(大きさ:約10μm以上)
[μm = マイクロメートル]
いろいろな種類の有害物質(有害微生物)に対応した高性能な浄水器(※)は、アウトドア用品店やネットショップなどで購入することができます。また、「ストロータイプ・ポンプタイプ・ボトルタイプ」など、ご自身のキャンプスタイルにあわせて、形状や濾過方式などを選ぶこともできます。
(※)すべての有害物質(有害微生物)を完全に除去できるわけではありません。また、除去対象数は製品によって異なります。
煮沸殺菌する
現地の水を使用する方法は、他にも「煮沸殺菌をしてから使用する」という方法があります。
水を沸騰させて、その状態を1~5分程度保つことで、水中のウイルスやバクテリアなどをほとんど死滅させることができます(※)。
煮沸殺菌をするにはナベやコンロといった器具が必要になるため、多少の面倒くささはありますが、浄水器がない場合にはこのやり方が有効です。
(※)ウェルシュ菌など、一部熱に強い菌は残る可能性があります。
濾過してから煮沸殺菌する
高性能な浄水器によって濾過された水は水質がかなり改善されますので、多くの場合そのまま飲むことができるようになります(※)。しかし、浄水器の性能がそれほど高くない場合や心もとない場合には、濾過した後に煮沸殺菌を行っておくと良いでしょう。手間はかかりますが、この作業によって飲み水のリスクはかなり抑えることができます。
(※)浄水器の浄化レベルが低い場合や原水の汚染レベルが高い場合には、そのまま飲めない場合もあります。
用途に応じて水を使い分ける
市販の飲料水を持参するにしても、現地の水を濾過(煮沸殺菌)するにしても、キャンプ場でキレイな水を準備するには少し手間がかかります。
しかし、そもそも論にはなりますが、水の用途はなにも「飲用」に限られているわけではありません。
実際には次のように、たくさんの用途があります。
・炊飯などの料理用
・レトルト食品などの加熱用
・食器や調理器具の一次洗浄用
・靴の裏やペグ(テントをはる際に使用する杭)の汚れ落とし用
・ケガをした時の傷口洗浄用 など
たとえば「炊飯などの料理用」として水を使う場合、飲用可能な水道設備の水であれば、万全を期して濾過や煮沸殺菌をしなくても使用することができるでしょう(煮沸調理することで煮沸殺菌と同じような効果を得られるため)。
また、靴の裏やペグについた土の汚れを洗い落とす場合、川の水を使用すれば、準備したキレイな水を使わずにすみます。このように、用途に応じて賢く水を使い分ければ、準備すべき水の量はそれほど多くなくてもよいことが分かります。
水を近場に確保しておく
サイト(自分のテントを張っているスペース)の近くに水道設備があれば、飲み水以外に使用する水をすぐに使うことができるため、なにかと便利です。
しかし、水道設備がサイトの近くにない場合は、水をなんらかの容器に入れて近場に置いておくことをオススメします。そうすることで「サイト⇔水道設備」間の往復回数をいくらか減らすことができますので、時間や労力をムダにせずにすみます。また、サイトから水道設備までが遠い場合、ついつい「準備したキレイな水」を飲用以外の用途に使ってしまうことも考えられます。水のストックが近場にあれば、こういったことも未然に防いでくれるのです。
水のストックには「ジャグ」がオススメ
キャンプで水をストックする際、よく使われているのは「ジャグ」と呼ばれるアイテムです。小さな樽のような形状で、側面の下の方には「ボタン式の吐水口(とすいこう)」または「蛇口」がついています。
ジャグによっては、トランクケースのようにキャスターや伸縮ハンドルがとりつけられていて、ハンドリングがしやすいものもあります。また、椅子として使用できるものや、ボディー部がジャバラになっていて折り畳めるものなどもあります。
容量は4~20リットルくらいのものが一般的ですが、中には10ガロン(38リットル)も入るようなビッグサイズもありますので、使用する人数などに合わせて選ぶと良いでしょう。
よくジャグの代替容器として「水筒」や「空のペットボトル」などが挙げられることもありますが、容量の大きさや蛇口の便利さ(手を放しても水が出続ける)などを考えると、ジャグの方が利便性は高いと言えるでしょう。
さいごに
自然を満喫することができるキャンプは、家族や友人との思い出作りにはピッタリです。
しかし、自然はそういった楽しさを与えてくれる一方で、様々なリスクをもたらすことがあります。飲み水のリスクや食べ物のリスク、怪我のリスクや野生動物のリスクなど、日常生活ではなかなか遭遇しないようなリスクがたくさんあります。キャンプに出かける際には、必ず保険証や胃薬といった「応急医療用品」も忘れずに持参するようにしましょう。
参考文献
世界保健機関(WHO)「飲料水水質ガイドライン(日本語・第4版)」
https://www.niph.go.jp/soshiki/suido/pdf/h24whogdwq/WHOgdwq4thJPweb_all_20130423.pdf
NIID 国立感染症研究所「パネル展示「病原体の種類」」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/open/2326-niidexhibition/oc-2015/5959-openhouse2015-18.html
日本板硝子株式会社「細菌とウイルスについて」
https://www.pcr-nsg.jp/pcr-and-virus/bacteria-and-virus
毎日新聞「クックパッドニュース:[料理の安心]加熱しても要注意!「ウェルシュ菌」を正しく知ろう」
https://mainichi.jp/articles/20181006/ckp/00m/100/005000c