犬の食器がぬめる原因とは?ヌルヌルを洗い落とす方法
ペットを飼っている人にとって、食事シーンを眺めることは大きな楽しみの一つと言えるでしょう。
しかし、餌やりからしばらく経った後の食器には「ヌルヌルの膜」が付着していることがあり、食器を洗うことについては、苦手意識を持っている人もいるようです。
このぬめりは洗ってもなかなか落ちず、力を入れてこすったり、食器用洗剤を使って丁寧に洗い落とそうとしても、完全に除去することが難しいため、悩まれている飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はペットの中でも「犬」に焦点をあて、このヌルヌルの膜の正体と原因、そして効果的な食器の洗浄方法について解説します。
目次
犬の食器がぬめる原因
犬の食器がぬめる主な原因は「犬の唾液」にあります。
食事の際、犬の唾液に含まれている細菌が食器に付着し、そこで繁殖した細菌がヌルヌルとした触感の膜(バイオフィルム)を形成するため、犬の食器がぬめってしまうのです。
「犬の唾液」以外の原因としては、食べ残したものや飲み残したものに細菌が付着し、そこからバイオフィルムが形成されることもあります。
また、環境中に存在する微生物が食器に付着して、そこからバイオフィルムが形成されることもあります。
いずれにしても、室内の温度や湿度が高いと細菌の繁殖が促進されることになるため、夏場などは特に注意が必要です。
バイオフィルムとは
「バイオフィルム」とは、繁殖した細菌群によって形成される薄い膜のことで、ヌルヌルとした触感と、ベトベトとした強い粘着性があるのが特徴です。
上記でも触れましたが、このバイオフィルムは「犬の唾液」からのみ形成されるものではなく、「環境中に存在する微生物」が原因となって形成されることもあります。
そのため、下記のようにペットを飼っていない人の暮らしの中にも、多く見ることができます。
・おフロの排水溝
・キッチンのスポンジや三角コーナー
・洗濯槽の裏側
・入れ歯
・歯ブラシや歯ブラシスタンド
・エアコン(カーエアコン)の内部 など
バイオフィルムは、単に触感が気持ち悪いというだけではなく、人間にとっても病気(感染症)の原因になることがあるため、医療現場においては特に警戒されています。
犬の唾液に含まれる細菌
犬の口腔内には約400種類以上もの細菌が存在していると言われており、その中には人間に害を及ぼす可能性のある細菌類も存在していることがあります。
・レンサ球菌
・ブドウ球菌
・大腸菌群
・カンジダ
・パーフリンゲンス菌(通称:ウェルシュ菌)
・パスツレラ菌
・カプノサイトファーガ菌 など
レンサ球菌やブドウ球菌は、犬の皮膚や被毛に存在する常在菌として一般的に知られており、これらの細菌は毎日の毛づくろいなどによって、絶えず口の中に入ってくるのは当然といえるでしょう。
また、犬はお尻をなめたり、道端に落ちているものをくわえたり食べたりすることがあるため、上記のような細菌が唾液に多く含まれていても不思議ではありません。
犬の唾液の特徴
犬の唾液の特徴としては、「pH(ピー・エイチ)」が高いことが挙げられます。
pHとは、溶液の酸性度やアルカリ性度を示す際に用いられる指標で、0から14までのスケール(数値基準)で表されます(7が中性、7未満が酸性、7より大きい場合はアルカリ性)。
人間の唾液はpH「6~7」の弱酸性ですが、犬のpHは「8~9」と言われており、アルカリ性になります。
細菌の種類にもよりますが、一般的にアルカリ性の環境は細菌の繁殖に適しているとされ、アルカリ性に傾いている犬の唾液は細菌の繁殖を助長すると考えられています。
中性洗剤で洗う場合
バイオフィルムは細菌同士が強く結合しあっていて、食器にも頑固に付着しているため、流水ですすいだり手洗いをする程度では落とし切ることができません。
そこで多くの人は、家庭用の食器洗剤を使ってぬめりを洗い落とそうと試みますが、これもあまり効果的な方法とは言えません。
というのも、一般的な家庭用の食器洗剤は「中性洗剤」に属しているものが多く、アルカリ性の犬の唾液から形成されるバイオフィルムをしっかりと中和・分解させることができないためです。
中性洗剤を使用する場合は、入念に洗浄を繰り返すことで、ある程度バイオフィルムを除去することができるでしょう。
ただし、中途半端な洗浄をしてしまうと、中性洗剤の一部がバイオフィルムと一緒に食器に残留する可能性もありますので、注意しなければいけません。
効果的に除去する方法
バイオフィルムを形成している細菌は、時間の経過とともに繁殖していくため、洗浄を手早く済ませるためには、エサやりを終えた後、すぐに食器を洗うことがポイントです。
しかし、何らかの理由によって食器を放置し、バイオフィルムが付着してしまった場合には、次の方法で除去するのがオススメです。
まずは紙や布でぬぐう
食器の洗浄前に、紙や布を使ってバイオフィルムを大まかにぬぐい取っておくと良いでしょう。
そうすることによって、食器に付いているバイオフィルムが破壊され、そのあとに行う洗浄工程がとても楽になります。
紙を使う場合は、柔らかいティッシュなどで行うよりも、ある程度コシのある「キッチンペーパー」を使うと良いでしょう。
酸性の洗浄剤を使用する
犬の唾液によって形成されたバイオフィルムはアルカリ性ですので、それをきれいに除去するためには、その対極にある「酸性の洗浄剤」の使用が効果的です。
ペットショップなどでは、ペットの食器洗いに特化した洗剤も市販されていますが、日常的に使用することを考えると、少し割高に感じられます。
代用品としては、スーパーなどで市販されている「クエン酸」や「お酢」を使っても良いでしょう。
水で薄めたクエン酸やお酢をスプレーボトルに入れ、食器に吹きかけてからスポンジなどでこすれば、楽にバイオフィルムを除去することができます。
また、どちらも食べ物に含まれている成分ですので、安心して使用できるというメリットもあります。
酸性水を使用する
整水器と呼ばれる機器から生成される「酸性水」を使ってバイオフィルムを除去するという方法もあります。
一般的に、整水器といえば「電解水素水」というアルカリ性で水素を含んだお水を生成するための機器として知られていますが、更には電気分解によって「酸性水」を生成することもできます。
この酸性水は「洗顔、洗い物、掃除」などに役立つ便利なお水です。
その名のとおり「酸性」の性質を持つお水ですので、犬の唾液によって形成されたバイオフィルムの除去にもオススメです。
※日本トリムの整水器は、用途に応じて酸性水レベルも選択が可能です。
また酸性水は、整水器の浄水機能により水道水をしっかりと濾過(ろか)した上で生成されますので、水道水中に含まれる不純物などの心配もありません。
さいごに
ペットを飼っている人は「食器の洗浄」に限らず、ありとあらゆるお世話をしてあげる必要があります。お散歩、お風呂、排泄物の処理、病気予防などなど・・・。
多くの飼い主さんは、これらのお世話を「ペットライフの醍醐味」として捉え、楽しみながら行っていることでしょう。しかし、これらのお世話はペットの命や健康を守るための大切な取り組みという一面もあります。
特に、何をどれだけ食べさせるかや、何をどれだけ飲ませるかについては、ペットの健康状態に直結する大きな問題ですので、より注意深く考えてあげる必要があるでしょう。
※下記の記事では、「ペットに与えるお水の種類や飲水量」について詳しく解説しています。
ぜひ参考にしてみて下さい。
【ペット(犬・猫)に与える水は何がいい?水道水でも大丈夫?】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/30219/
参考文献
板橋区消費者センター「食中毒を防ぐ3つの原則・6つのポイント」
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/151/attach_96259_6.pdf
ラジオ日経「感染症TODAY|バイオフィルムとバイオフィルム関連感染症」
https://www.radionikkei.jp/kansenshotoday/__a__/kansenshotoday_pdf/kansenshotoday-210412.pdf
信州医学雑誌「信州大学医学部 山﨑善隆|バイオフィルム」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinshumedj/53/2/53_91/_pdf/-char/ja
わんちゃんホンポ「犬の口腔内にはどれだけの細菌がいるの?キスは避けるべき?」
https://wanchan.jp/column/detail/20509
わんちゃんホンポ「犬の食器の『ヌルヌル』を取り除く方法3選!放置していると悪影響も…?」
https://wanchan.jp/living/detail/21412
帝塚山ハウンドカム通信「ペットとの生活編:テーマ「唾液中の細菌たち」」
https://www.houndcom.com/blog/archives/7730
ポラン動物病院「犬のう蝕歯(虫歯) - 症例集」
https://www.polan-ah.com/case/p_1749/
わんクォール「犬の食器のヌルヌルの正体は?正しい洗い方も紹介」
https://www.wanqol.com/articles/hygiene_02