気になる口臭の原因とは?口臭予防のためにできること
昔に比べ、現代の日本は「無臭」や「消臭」が、絶対的なマナー(常識)として確立しているように思われます。
新聞やネットの広告には、無臭や消臭をセールスワードにしている商品がたくさん載せられていて、実店舗でも多種、多量の商品が販売されています。さまざまな臭いを無臭化する風潮の中で、会話時に強烈な臭いを放つ口臭は、現代日本人にとって何が何でも消し去りたい代表的な臭いと言えるでしょう。
しかし、実際にフタを開けてみると、口臭が強い日本人はたくさんいます。そういった人たちの中には、自分の口臭に気づけていない人もいますが、他人からの指摘などによって自覚し、歯磨きを徹底している人もたくさんいます。歯磨きを徹底しているにもかかわらず口臭が残っている人に関しては、「口臭の原因」がつかめていない可能性があります。
口臭の原因にはどのようなものがあるのか、そしてそれらを見極めるにはどうすればよいのかを、学んでいきましょう。
目次
口臭の原因とは?
口臭はその発生原因によって、以下の種類に分けられます。
・生理的な口臭
・飲食物(嗜好品)による口臭
・病的な口臭
・心因性の口臭
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
生理的な口臭
生理的な口臭というのは、私たちが普通に生きていく上で、当然出てしまう口の臭いです。
たとえば、以下のようなものが挙げられます。
・起床時の口臭
・空腹時の口臭
・緊張時の口臭
・疲労時の口臭
・月経時の口臭
・妊娠時の口臭
・思春期の口臭
・更年期の口臭
・加齢性の口臭 など
日頃、口臭がそれほど出ていない人であっても、起床時や空腹時などのタイミングには、口臭が強く出ていることがあります。生理現象ではありますが、人と話すときなどは気にとめておくと良いでしょう。
飲食物(嗜好品)による口臭
口臭は食べ物や飲み物、嗜好品によっても出ることがあります。ニラやニンニク、お酒やタバコなど、口にしたものの臭いが、口腔内に残留して口臭となるのです。飲食後すぐに歯磨きをしたとしても、胃の中にある未消化の食べ物の臭いがゲップとして口から出れば、他人からすると口の臭い人と思われることになります。
タバコについては、仕事の休憩時間や外出先など、歯磨きができない場所で吸われることも多くあるようですが、産業医科大学の研究によれば、喫煙後、口臭レベルが喫煙前の状態に戻るまでには、「45分」ほど必要になると報告されています。ただし、常習的に喫煙をしている人は、歯にヤニ(タール)が蓄積し、それが臭いの原因になっていることもあるため、それをきちんと除去するまでは臭いが出続けることも考えられます。
また、あまり知られていないことですが、栄養ドリンク剤が口臭の原因になっていることもあり、ニンニクエキス、フルスルチアミン、ビタミン剤などが含まれているものを常時飲んでいると、ニンニク臭やビタミン独特の臭いが息から出てくることがあります。
病的な口臭
なんらかの病気が口臭の原因となる場合もあります。口臭が出る主な病気としては歯周病や虫歯が知られていますが、口腔内に関する病気には他にも以下のようなものが挙げられます。
【口腔内の病気】
・歯周病
・虫歯
・唾液分泌量の減少
・舌苔(ぜったい)
・入れ歯の汚れ
・口腔ガン など
口腔内の病気がない場合には、次のような病気にかかっている可能性も考えられます[※]。
【鼻や喉の病気】
・副鼻腔炎(蓄膿症)
・慢性鼻炎
・慢性扁桃炎
・咽喉頭ガン など
【呼吸器系の病気】
・化膿性気管支炎
・肺ガン
・肺のカンジダ症 など
【消化器系の病気】
・食道憩室
・食道狭窄
・食道ガン
・逆流性食道炎
・胃潰瘍
・胃ガン など
【その他の病気】
・糖尿病
・腎不全
・尿毒症
・肝硬変
・慢性肝炎
・トリメチルアミン尿症 など
このように、たくさんの病的原因が考えられますが、それらの中でも「口腔内の病気」が原因となっているものは、全体の9割以上を占めています。お近くに「口臭外来科」のクリニックがない場合、まずは歯科医院から受診すると良いでしょう。
※. 複合的な罹患が原因となっている場合もあります。
心因性の口臭
口臭を気にしている人の種類を「実際に口臭が出ているかどうか」で区分けをすると、「他臭症」と「自臭症」に大別されます。
①他臭症:実際に口臭が出ていて、他人にもその臭いを感じさせる口臭(生理的口臭や病的口臭など)
②自臭症:自分は口臭が出ていると思い込んでいる状態で、他人にはその臭いを感じさせない錯覚による口臭
このうち、心因性の口臭とは「自臭症」のことを指しています。自臭症の人は、会話中に相手が鼻をかいたり横を向いただけでも「自分の口臭を避けるために、そのような仕草をしている」などと思い込む傾向があります。その思い込みがひどい場合、「対人恐怖症」や「社会的不適応」を起こしてしまうこともあるのです。
自臭症は、生理的口臭などの一時的な口臭が出たときに「他人から指摘された経験」が軽いトラウマとなり、それが起因となって陥ることがあるとも言われています。また、自臭症の人は、人との会話や接近に対して強いストレス(プレッシャー)を感じるため、そのストレスによって実際に口臭(緊張時口臭)が出てしまうこともあるようです。
精神的な疾患が見られる場合、治療にあたっては主に精神科を受診することになりますが、そこで薬物療法が長期に行われた場合、その薬物の成分が血中に絶えず存在し代謝されるため、呼気に薬物の代謝産物の臭いが混じることがあります。さらに、精神薬の副作用として唾液分泌の抑制を受けるために、口腔内の「自浄性の低下」や「口腔内の環境悪化」などが起こり、呼気からも口腔内からも悪臭が発生することがあります。
口臭予防のために
口臭を予防するためには、個人での取り組み(努力)とあわせて、歯科医院や口臭外来クリニックで定期的なチェックを行うことが大切です。
個人での取り組みとしては、以下のことが挙げられます。
・口腔内を清浄に保つ
・唾液をたくさん出す
・ホルモンバランスを整える
・ストレスを少なくする
・内臓をいたわる
・口臭を抑える飲食物をとる など
これらをより具体的に説明すると、以下のようなものが挙げられます。
・正しい歯磨き(舌磨き)方法を学び直す
・ツールの活用を試みる(タンクリーナー、フロス、歯垢染め出し液、洗口剤、口臭チェッカーなど)
・起床後と就寝直前の「歯磨き習慣」を身につける
・唾液分泌の促進方法を学ぶ(唾液腺マッサージ、舌と口の体操など)
・生活習慣の見直しを図る(睡眠リズム、喫煙習慣、口呼吸など)
・ストレスマネジメントを行う(運動、趣味、禅、自己啓発など)
・胃腸に悪い飲食物をとらない(ファストフード、暴飲暴食、お酒の飲みすぎなど)
・胃腸に良い水を飲む(電解水素水)
・口臭を抑える飲食物をとる(パセリ、パイナップル、キウイ、緑茶、烏龍茶、昆布、牛乳、梅干しなど)
歯科医院での定期チェックでは、「歯垢の除去」や「詰め物、被せ物の再治療」が行われ、歯周病や虫歯の進行による口臭を予防することができます。また、口臭検査を希望すると、私生活の送り方までも綿密にカウンセリングを行い、生活習慣の改善提案や治療方針(他科の病院提案も含め)を決めてくれる歯科医院もあるようです。さらに、歯周病予防の基本である正しい歯磨きの仕方や、タンクリーナー、フロスの使い方、入れ歯洗浄剤の使い方など、口腔内を衛生的に保つための情報も提供してくれることがあります。
こういった検査は、すべての歯科医院で必ず行っているものではありませんが、「歯周病認定医(歯周病専門医)[※]」や「口臭外来クリニック」では比較的対応している可能性がありますので、まずはそういった医院をネットなどで検索し、問い合わせてみると良いでしょう。ちなみに、医院によっては「歯科人間ドック」を実施しているところもありますので、より徹底したチェックを希望される場合には、こういったものを利用してみても良いでしょう。
※. 日本歯周病学会ならびに日本臨床歯周病学会による資格名で、技能の習得や専門試験の合格など、厳しい基準要件をクリアした歯科医に与えられています。
さいごに
口臭は基本的に自分では気付きにくいものですが、口臭チェッカーを使うことである程度チェックすることができます。
また、より簡単な自己チェック法として、コップに息を吹きかけて臭いを嗅いでみる方法もあります。あまり他の人に見られたくない光景ですが、これによって口臭の有無はある程度分かります。この方法を起床時に行えば「生理的な口臭」の強さがわかり、朝一番の歯磨き習慣につながるかもしれません。また、毎朝この方法を行っていると、体に異常(病気)があらわれたときに、臭いにも変化がでますので、早期の対処が可能になります。朝一番の口臭に異常を感じたら、一度歯磨きをして、再び臭いをチェックしてみて下さい。嗅ぎなれない口臭(悪臭)が残っているようなら、一度歯科医院に相談してみた方がよいでしょう。
参考文献
産業医科大学(大和浩教授)「喫煙後の呼出煙と三次喫煙」
http://www.tobacco-control.jp/slides/documents/190325_SHS_THS.pdf
英デンタルクリニック「ヤニ取りしたい」
https://hide-dc.jp/general/yani/
書籍「「息さわやか」の科学」川口陽子 著
書籍「もう、口臭で悩まない!」本田俊一 著
書籍「お口のさわやかエチケット」松尾通 著
書籍「口臭を消す」内田安信 著
書籍「これでもう大丈夫!お口のニオイ」内田安信 著
書籍「女性の口臭・歯周病はこうして防ぐ!」花田信弘 著