冬に日焼け対策は必要?油断できない冬の紫外線
夏には徹底して取り組まれていた紫外線対策も、冬になるとそのガードは緩みがちです。ギラギラと照り付けるような日差しがおさまったことが気の緩みに繋がっていると思われますが、冬は冬で気をつけなければいけない理由があります。
また、紫外線対策は一般的に、美容対策の一環として取り組まれることが多いようですが、実は健康を維持する上でも重要な取り組みです。まずは、紫外線についての基本(正体や有害性)を学び直すとともに、冬であっても紫外線対策を続けた方がよい理由について学びましょう。
今回は、油断できない冬の紫外線について解説をしていきます。
目次
光線の種類
太陽からの日射は、波長によって次のように分けられます。
【 赤外線 ・ 可視光線 ・ 紫外線 】
波長[長] ←←←← | →→→→ 波長[短]
可視光線とは読んで字のごとく、目に見える光線で「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」と、いろいろな色の光線が混じっています。そして、可視光線よりも波長が長いものが「赤外線」、短いものが「紫外線」と呼ばれます。この2つの光線は、可視光線とは違って目には見えません。可視光線の「外」にある光線であることから、ネーミングに「外」という文字が使われています。
- 赤外線:IR(infrared rays)
「赤の外」── 可視光線に含まれている「赤」よりも、さらに波長が長い光
- 紫外線:UV(ultraviolet rays)
「紫の外」── 可視光線に含まれている「紫」よりも、さらに波長が短い光
「IR」や「UV」という略語は、日常においては「IRヒーター」や「UVカットサングラス」などの商品総称として、よく聞かれると思います。この2つの光のうち、人体への悪影響が強く懸念されているのは「紫外線」の方です。
ただ、この「紫外線」という名称は、実は総称であり、実際にはそこからさらに細分化されます。
【 UV-A ・ UV-B ・ UV-C 】
波長[長] →→→→→→→ 波長[短]
「UV-A、UV-B、UV-C」この3つの紫外線のうち、もっとも有害なものは「UV-C」です。しかし、UV-Cは成層圏および上空のオゾンと酸素分子によって吸収されますので、地表には到達しません。ですので、私たちが実生活において避けるべき光線は、主に「UV-A」と「UV-B」の2つということになります[※1]。
【 UV-A:ultraviolet-A(紫外線A波)】
・太陽光線の中には、UV-Aが「5.6%」含まれている
・皮膚の内側(真皮層)にまで到達し、影響を及ぼす
・メラニン色素が沈着する原因
・日焼けで黒くなるのは、主に「UV-A」の作用によるもの(サンタン)
・UV-Bほど急激な作用は見られないが、悪影響は蓄積していく
【 UV-B:ultraviolet-B(紫外線B波)】[※2]
・太陽光線の中には、UV-Bが「0.5%」含まれている
・主に皮膚の外側(表皮層)に影響を及ぼす
・メラニン色素が生成される原因
・日焼けで赤くなるのは、主に「UV-B」の作用によるもの(サンバーン)
・UV-Aと比べると、急激な作用が見られる
一般的に、両者は「紫外線」という名称で一括りにされることが多く、ここでもそのように扱いますが、日焼け止めなどの機能表示を理解する上では、紫外線の種類をある程度は知っておいた方がよいでしょう。
※1. UV-AとUV-Bも地球の大気に吸収されますが、その一部は地表に到達して、生物に様々な悪影響を与えます。
※2. UV-B有害性は、UV-Aの600~1000倍とも言われています。
紫外線の有害性
紫外線を浴びると、体の中でビタミンDが合成され、それがカルシウムの吸収を助けて、骨や歯が丈夫になると言われています。これは、紫外線が「絶対悪ではない」ことを示した、分かりやすい例と言えるでしょう。
しかし、ビタミンDは食事(魚類、キノコ類など)からも摂取できますので、必要量のすべてを日光浴でまかなう必要はありません。バランスの良い食事がとれていれば、冬の場合、日中に一時間程度の日光浴(顔と両手への日光浴)を行うだけで、ビタミンDは十分まかなえると言われています[※1]
ひと昔前までは、日光浴はさかんに推奨され、日曜日の公園などでは何時間も日光浴をしている人をよくみかけました。また、母子手帳の記載にも、日光浴を薦めるような一文が載せられていて、当時のママさんは積極的に赤ちゃんに対して日光浴をさせていたようです。しかし現在では、日光浴の推奨は以前ほどには行われなくなり、母子手帳においても推奨の記載が消されています[※2]。これは紫外線の有害性が、徐々に解明されてきたことを示していると言えるでしょう。
では、紫外線にはどのような有害性があるのでしょうか?代表的なものをいくつか見ていきましょう。
・皮膚の炎症
日焼けをすることによって皮膚に炎症が起こり、火傷をした時のように赤くなってヒリつきます。また、ひどい場合には、水膨れができることもあります。
・皮膚の老化
シミやシワなどの皮膚の老化現象は、主に加齢によって現れますが、紫外線を長時間浴び続けると、その老化スピードが早まると考えられています。
・皮膚ガン
紫外線によって遺伝子が傷つき、ガン細胞が生じることがあるため、将来的には皮膚ガンの原因になることも考えられます。
・免疫力の低下
紫外線を浴びると免疫力が一時的に落ち、新しい免疫反応が起きなくなります。また、すでに獲得している免疫も10日間くらいは消失または低下すると言われています(免疫抑制:トレランス)。
・白内障
目に紫外線を長時間浴び続けると、目の水晶体の濁りを促進し、白内障が起こりやすくなります。
・雪目(角結膜炎)
雪山などで強い紫外線を目に受け続けた場合、角膜の表面が傷つき、6~10時間程度で「白目の充血、目のゴロゴロ感、涙が多く流れる、目の強い痛み」といった症状が現れます。
・疲労
紫外線を浴び続けると、体が疲れやすくなることが分かっています。ある動物実験では、紫外線を目に照射した場合でも、ストレスを受けた時と同様に、血中の疲労物質が増加したそうです。
※1. 地域や天候、肌色などによって異なります。
※2. 以前は日光浴と外気浴の両方が推奨されていましたが、1998年7月改訂版以降の母子手帳では、外気浴だけが推奨されるようになりました。
冬と夏の紫外線の違い
冬も夏も、基本的には紫外線の「性質」が変化することはありません。変化するのは「紫外線の量」と「照射角度」です。
まず、「量」については、やはり冬の方が紫外線量は少なくなります。
UV-A・・・夏と比べて、2分の1程度に減少
UV-B・・・夏と比べて、5分の1程度に減少
ただし、紫外線からの影響を受けなくなるほど減少しているわけではありません。それにもかかわらず、気の緩みや思い違いなどによって、多くの人がこの時期に紫外線に対するガードを緩めてしまいます。
一般的には「夏は紫外線量が多く、冬は少ない」などと言われていますが、ここで使われている「少ない」という表現は、あくまでも相対的なものです。人体に影響を及ぼす量としては、決して少ないわけではないということを覚えておく必要があるでしょう。
次に「照射角度」について説明をします。
季節の変わり目には、よく「日が高く(低く)なる」という表現が使われますが、これは「太陽高度」のことを指しています。中学の理科の授業で習った通り、夏は太陽高度が高くなり、冬は低くなります。これによって、夏に真上からの照射が多かった紫外線は、冬になるとやや横からの照射となり、顔や目が照らされやすくなるのです。
さらに、雪が一面に降り積もった場合には、下からの「照り返し」も加わるため、紫外線を浴びる量は増加することになります[※]。よくスキーやスノボを楽しんだ後、顔が日焼け(雪焼け)してしまうことがありますが、これは雪による照り返しを長時間浴び続けた典型的な例と言えるでしょう。もちろん雪山(ゲレンデ)と市街地とでは、標高(空気の澄み具合)が異なるため、紫外線の量には違いがあります。しかし、市街地であっても積雪した屋外に長時間いれば、やはり紫外線を多く受けることになりますので、注意が必要です。
※. 紫外線は、新雪の雪面では80~95%も反射されると言われています。積雪環境においては、紫外線によるダメージは通常の2倍近くになることを覚えておきましょう。
紫外線と乾燥の凶悪タッグ
上記の通り、冬であっても紫外線は降り注ぎ、その照射角度は顔や目にダメージを与えやすくします。また、積雪環境においては、目や体に照射される紫外線量は増えることになりますので、冬の紫外線対策は手を抜けません。
さらに、冬には「乾燥」という大敵が、紫外線による肌へのダメージを、より大きなものにしてしまいます。
「冬特有の乾燥した外気」と「暖房によって乾燥した室内の空気」、これらの乾燥した空気によって肌が乾燥すると、肌のバリア機能が低下して、紫外線などの外部刺激に対して炎症を起こしやすくなります。また、慢性化した炎症はメラノサイト(色素細胞)を刺激して、シミの原因になることもあるのです。
紫外線と乾燥の凶悪タッグを組ませないことも、冬の紫外線対策を怠ってはいけない理由の一つなのです。
冬の紫外線対策
冬の紫外線対策は、夏の紫外線対策とほとんど同じです。以下の対策を参考にして、紫外線を防ぎましょう。
サングラスをかける
サングラス選びは「レンズの色の暗さ」だけで選ばないようにしましょう。レンズの色が暗いと、目は取り込む光の量を増やそうとして、瞳孔を大きく開こうとします。瞳孔を大きく開くことで、光は多く取り込めるようになりますが、それと同時に紫外線も多く取り込んでしまいます。目の紫外線対策を行うのであれば、紫外線透過率の表示[※]を確認した上で購入するようにしましょう。
ただし、使用する場所によっては「眩しさ(グレア)」を抑える為に濃い色のレンズが必要になることもありますので、特殊な場所で使用する場合には、一度店員に相談してみるとよいでしょう。
また、紫外線はレンズと顔の隙間からも侵入しますので、フィット感が高く、目じりの方まで覆うようなサングラスを選ぶことも大切です。
なお、コンタクトレンズは紫外線を防ぎますが、レンズが覆えない白目部分は無防備になることを覚えておきましょう。
※. サングラスは家庭用品品質表示法により、紫外線透過率の表示が義務付けられています。
時間帯や天候を考慮する
一日の内で紫外線量が最も多いのは「10時~14時」の間です。この時間帯の外出は控えるようにし、やむを得ない場合には、極力日陰に入るようにしましょう。
また、「雨天<曇天<晴天」の順に紫外線量は多くなりますので、出かける前には天候をチェックし、屋外での滞在時間などを調節しましょう。ただし、雨天や曇天であっても紫外線は降り注いでいますし、屋内であっても紫外線(UV-A)は窓ガラスを透過して降り注がれますので、油断は禁物です。
日焼け止めを塗る
冬は肌の露出が少ないため、日焼け止めを塗る部分は、主に顔と両手の甲になります。しかし、服のコーディネートによっては、首まわりが露出する場合もありますので、その場合には、首やデコルテも忘れず塗るようにしましょう。
日焼け止めの防御レベルは「SPF20以上・PA++以上」のものを使用し、朝と昼の計2回塗るのがオススメです(SPF・PAについては後述します)。
【朝のケア】
まずは、適量の日焼け止めを手のひらに取って下さい。
・クリームなら、真珠の玉2個分
・ローションなら、百円硬貨1枚分
その日焼け止めを、顔の日焼けしやすい部分(額、頬、鼻の頭、顎など)にポンポンと置いていき、置き終えた後に、それらを顔全体に塗り伸ばして下さい。顔全体に塗り終えたら、首の前後、デコルテ、耳、両手の甲にも塗り込みます(ハンドプレスを行って、肌への浸透を促進させるのも有効です)。
【昼のケア】
日焼け止めは、時間の経過とともに防御性能が失われ、発汗や摩擦によっても物理的に落ちてしまうことがあるため、昼に「重ね塗り」をしておいた方がよいでしょう。女性の場合、メイクの上からでも塗ることができる日焼け止めを購入しておけば、メイクの崩れを気にせずに塗ることができますのでオススメです。
昼に塗る日焼け止めの量は、朝より少なくて構いません。少量(クリームであれば、米粒1つ分ほど)を手にとり、手のひらで透明になるまでよくなじませて下さい。それを「額、頬、鼻、顎」などに塗っていくわけですが、メイクをしている方はこするとメイクが崩れますので、手のひらや指を使って、軽くプレスしながら塗布するとよいでしょう。「顔→首→デコルテ→両手の甲」と塗り終えたら、完了です。
日焼け止めの表示
日焼け止めには、「SPF」と「PA」の表示が必ずされてあります。これらの表示は「サンケア指数」と呼ばれ、肌をどれくらい紫外線から守ってくれるかを示した指標になります。
- SPF(Sun Protection Factor)
・UV-Bに対する防御効果の指標
・防御レベルは2~50までの「数値」で表し、それ以上は「50+」と表示する
・国内での最高値は「SPF50+」
- PA(Protection Grade of UVA)
・UV-Aに対する防御効果の指標
・防御レベルは「+」の数で表す
・国内での最高値は「PA++++」
徹底した紫外線対策を行いたい人は、冬であっても最高値の日焼け止めを使用しがちです。しかし、防御レベルが高ければ、それだけ肌の負担は増える傾向にあるため、天候や季節とのバランスを見ながら、防御レベルが過剰にならないよう注意しましょう。
また、防御レベルが低くても肌に合わない場合があるため、新しい商品を使う場合には、事前にパッチテスト(試し塗り)を行って、肌への適性を確認しておきましょう[※]。
【簡易パッチテストの方法】
・二の腕の内側に日焼け止めを塗る
・塗り込む面積は、百円玉サイズくらい
・30分経過したら洗い流す
・洗い流した直後、24時間後、48時間後に肌の状態を確認する
※. すでに肌に異常がある場合や、確実な適性を知りたい場合は、皮膚科でパッチテストを行って下さい。
さいごに
紫外線が肌に悪いという話は、多くの女性にとって「常識」なのかもしれません。しかし、女性の方たちのあいだでも、それほど知られていないのが「唇への影響」です。唇は肌の中でも極端にメラノサイト(メラニンを作って肌を守る細胞)が少ないため、紫外線のダメージを受けやすいと言われています。冬の時期、乾燥した空気と顔に当たりやすくなった紫外線は、唇を容赦なく襲ってきますので、適切なリップケアが必要です。
以下の記事では、冬のリップケアについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
【唇の乾燥やダメージの原因とは?カサカサ荒れた唇のケア方法】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/31356/
参考文献
GOLSEN「紫外線の種類(UV-A,UV-B,そしてUV-C)」
http://www.golsen.jp/ultraviolet/kindofu.html
愛知県薬剤師会「薬に関するQ&A|Q15.ビタミンD剤の働きについて教えてください?」
https://www.apha.jp/faq/entry-42.html
中外製薬「よくわかる ほねとひざ.com|2.骨粗しょう症の検査と治療」
https://hone-hiza.com/op/treatment_4.html
健達ねっと「ビタミンD生成に日光は重要?必要な時間や効果など解説」
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/11907
骨粗鬆症財団「40歳からはじめる「骨粗しょう症検診」」
https://www.jpof.or.jp/Portals/0/pdf/chirasi/leaf/Age40_A4_S_220810.pdf
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586561.pdf
アリナミン製薬株式会社「真夏でなくても油断禁物!紫外線と「疲れ」の意外な関係」
https://alinamin.jp/tired/topics_21.html
千寿製薬「目の病気 雪目[電気性眼炎]」
https://www.senju.co.jp/consumer/note/disease_yukime.html
メゾンコーセー「紫外線の基礎知識」
https://maison.kose.co.jp/site/p/uv-care_01.aspx
日比谷ヒフ科クリニック「雪焼けに日焼け止めは効果ある?日焼けとの症状の違いや顔が赤い時の対策まで解説。」
https://www.hibiya-skin.com/column/202302_01.html
クラシエ「Kampoful Life|日焼け止めのSPFやPAとは?正しく、日焼け止めを選んで紫外線対策!」
https://www.kracie.co.jp/kampo/kampofullife/beauty/?p=5024
yusukin「肌育研究所|日焼け止めが肌に合わない原因と親子でできる日焼け対策」
https://www.yuskin.co.jp/hadaiku/detail.html?pdid=73
書籍「紫外線から香りまで美しく年を重ねるヒントⅡ」求龍堂 出版
書籍「紫外線から子どもを守る本」双葉社 出版
書籍「紫外線Q&A お日さまと仲良くつき合う方法」市橋正光 著
書籍「学んで実践!太陽紫外線と上手につきあう方法」丸善出版 出版
雑誌「CREA(2016年10月号 vol.324)」文藝春秋 出版
雑誌「クロワッサン(2018年 12/10 No.986)」マガジンハウス 出版
雑誌「岳人」ネイチュアエンタープライス 出版
雑誌「きょうの健康(2014年6月号)」NHK出版 出版