肥満は万病のもと|肥満のタイプや原因について | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

肥満は万病のもと|肥満のタイプや原因について

一般的に「肥満」という言葉は、肥満体型の人との会話においてはタブー視されがちです。大抵は「ふくよかな体」、「ぽっちゃり系」など、オブラートに包んだ形で表現されます。これは相手の見た目(外見)に対する配慮であり、一種のマナーと言えるでしょう。

しかし、身内や親しい間柄においては、時として「肥満」について積極的に当人と話し合う必要があります。なぜなら、肥満は命を奪う危険な病気につながる危険性があるからです。自分自身、そして大切な人を守るためにも、肥満についての知識を深め、予防や改善に努めましょう。

今回は、肥満のタイプや原因などについて解説をしていきます。

肥満とは

肥満とは、摂取したエネルギーが体内で脂肪に変わり、過剰に蓄積した状態をいいます。単に体重が重いということではなく、体を構成する組織のうち、脂肪(脂肪組織)の占める割合、いわゆる「体脂肪率」が正常値よりも高い状態を指します。

例えば、力士やプロレスラーのように身長の割に体重があり、外見上は太っているように見える人でも、その内側に筋肉がしっかりとあり、体脂肪の割合が少なければ肥満とは言いません。逆に、スリムなモデルのように痩せていて体重が軽くても、その内側に筋肉が少なく体脂肪の割合が多ければ、肥満という扱いになります(この場合は「隠れ肥満」と呼ばれます)。

つまり、肥満を解消するのであれば「体重」を落とすのではなく、「体脂肪」を減らす(適正値にする)ことが求められるのです。

肥満の判定

肥満の判定においては、主に二つの指標が用いられています。

①【体脂肪率】
体脂肪率では、以下の基準値を超えると肥満になります。

男性──25%以上
女性──30%以上

体脂肪率は計算式でも求めることはできますが、体脂肪計などを使って計測するのが一般的です[※1]。

②【BMI】
もうひとつは「BMI(Body Mass Index):体格指数」という指標です。
これは「体重と身長のバランス」や「病気になりやすいかどうか」の度合いを数値化したものです(体脂肪率や脂肪の重さを示すものではありません)。

BMIは、以下の計算式で算出することができます[※2]。

  • BMI = 体重(kg)÷ 身長2(m)

BMIで算出された数値は、統計学的に「22前後」が最も病気になりにくく死亡率が低いと言われており、その前後20%くらいが健康的かつ標準的な体格だとされています。

BMIで肥満かどうかを判定する場合、日本では「25以上」という数値が基準値として用いられています[※3]。つまり、上記のBMIの計算式で算出された値が25以上であれば、日本では「肥満」という扱いになるのです。

そして、これらのことを踏まえた上で、ご自身の「理想的な体重(標準体重)」を具体的に知りたい場合には、以下の計算式で算出することができます。

  • 理想的な体重(標準体重) = 身長2(m)× 22

また、肥満認定をされた「肥満者」のうち、糖尿病や高血圧といった肥満関連の健康障害がある場合や、腹部CTやMRI検査で算出された内臓脂肪面積が100㎠以上蓄積している場合は、減量が必要な「肥満症患者」と診断されます。つまり、「単に大柄な人」と「肥満者」、「肥満症患者」は、それぞれ異なるものになるわけです。

※1. 測定方法や機器の精度によって誤差が生じることがあります。より正確な測定が必要な場合や、医学的な評価が求められる場合には、医療機関で計測を依頼して下さい。
※2. BMIでは、筋肉量や骨格の大きさなどを考慮しないため、特に筋肉質の人や高齢者では、肥満の判定に誤差が生じることがあります。※3.日本肥満学会による判定基準。WHOの国際的な基準では「30以上」が肥満になります。

肥満のタイプ

肥満のタイプは、次の2つに大別されます。

  • 皮下脂肪型肥満(下半身肥満型)
  • 内蔵脂肪型肥満(上半身肥満型)

1つ目の「皮下脂肪型肥満」は、皮膚の下(皮下)に脂肪が蓄積するタイプです。
下半身肥満型とも呼ばれていて、お尻や太ももなどの下半身に脂肪が蓄積する傾向があります。女性に多く見られる肥満で、生活習慣病のリスクは比較的低く、妊娠や出産など、高いエネルギーを必要とするイベントに備えるための「体の準備反応」と考えられているようです。生活習慣病リスクが低いことは良いことなのですが、皮下脂肪は落ちにくいという特徴があり、ダイエットをしてスリムになりたいと考えている人にとっては、かなりの難敵と言えるでしょう。

2つ目の「内蔵脂肪型肥満」は、腹腔内の腸間膜[※1]などに脂肪が蓄積するタイプです。
上半身肥満型とも呼ばれており、おへその奥深く(内側)にある内臓周辺に脂肪が蓄積し、胸からおへそにかけて膨らんでいるのが特徴です。内臓脂肪には「つきやすく、おちやすい」という特徴があるため、不摂生をしているとすぐについてしまいますが、それに気づいて運動などに取り組むと、比較的簡単に落とすことができます。ただし、内蔵脂肪型肥満は生活習慣病を招きやすく、高脂血症や糖尿病、高血圧などとも深い関わりがあるため、最初から「必要以上につけない」ような生活を心がける必要があるでしょう[※2]。

※1. 腸を支えて位置を安定させる役割を持つ、腹腔内にある薄い膜状の組織。
※2. 本来、内臓脂肪は必要なものですが、その蓄積が一定の基準を超える場合、体に悪影響を及ぼします。

内蔵脂肪型肥満には要注意

内蔵脂肪型肥満は、生活習慣病の罹患や重症化、突然死などのリスクを高めるため、特に注意をしなければいけません。

生活習慣病とは、不適切な食生活、運動不足、喫煙、過度の飲酒などが原因で起こる病気の総称で、「高血圧・糖尿病・脂質異常症(高脂血症)」の3つの病気が内蔵脂肪型肥満に重なると「死の四重奏」と呼ばれ、互いに関連しあいながら動脈硬化を促進させます。そして、自覚症状がないままに病気が進行していき、ある日突然、医師から死の宣告を受けたり、狭心症や心筋梗塞によって突然死してしまうことがあるのです。そのため、食生活の改善を行ったり、運動習慣を取り入れることはもちろんのこと、定期的に体脂肪率やBMIをチェックするなど、日常的に危機感を持つことが大切です。

以下の数字は、標準体型の人と比較した場合の、肥満者の罹患リスクを示したものです。
過食癖のある人や運動嫌いな人は、これらの数字をいつでも見られるようにしておくと良いでしょう。

糖尿病───5倍
不妊症───3倍
胆 石───3倍
高血圧───2.5倍
痛 風───2.5倍
心疾患───2倍
関節障害──1.5倍

肥満の原因

肥満の主な原因は、以下の3つです。

・摂取エネルギーの過多
・消費エネルギーの過少
・肥満(関連)遺伝子の変異

それぞれについて、見ていきましょう。

摂取エネルギーの過多

一般的に、摂取エネルギーの過多については「食べ過ぎ(一回の食事量の多さ)」だけが問題視されがちですが、次の3つの要素も問題点として挙げられます。

・食事回数が多い(間食などによってトータルの摂取エネルギーが増加)
・食事速度が速い(満腹感を感じる前に食品をたくさん摂取)
・高カロリー食品(脂質や糖質が多く含まれる食事メニュー)

つまり、「一回の食事量」の他、「食事の回数」や「食事の内容」なども摂取エネルギーを多くする要因になるため注意が必要です。ただし、摂取エネルギー(カロリー)を抑えようとして、日常的に「朝食」を抜くことはオススメできません。なぜなら、朝食にはいくつかの作用があり、摂ると体は痩せやすくなり、摂らないと太りやすくなるからです。

以下の記事では、朝食が肥満とどのように関わるかについて解説していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
【朝食を摂ることが大事な理由】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/32854/

消費エネルギーの過少

一般的に、消費エネルギーの過少については「運動不足」が問題視されています。特に現代人はテクノロジーの進化にともなって、便利なインフラやサービスを利用するようになり、知らず知らずのうちに運動量が低下していると言われています。若い世代においては、SNSやVRゲームなどへの過剰依存も、運動不足を加速させる要因と言えるでしょう。

運動量が低下すると、摂取したエネルギーは効率的に消費されないため、脂肪として体内に蓄積され肥満を招きます。また、運動量が低下すると、それにともなって筋肉量も減少していくため、その結果として基礎代謝[※]が落ちてしまうことになるのです。さらに、中年以降はホルモンバランスの変化によっても基礎代謝は低下していくため、中高年の方々は特に注意した方がよいでしょう。

※. 安静時に生命を維持するために必要な最低限のエネルギー消費量のことで、筋肉量が多いほど高くなる傾向にあります。

肥満(関連)遺伝子の変異

肥満は、食べ過ぎ飲み過ぎや運動不足といった「生活習慣要因」だけではなく、「遺伝要因」も大きく影響を及ぼします。

つまり、ある人が生まれながらにして持つ遺伝子の組み合わせは「肥満のなりやすさ」に影響を及ぼす可能性があり、肥満に影響を及ぼす遺伝子は一般的に「肥満(関連)遺伝子[※]」と呼ばれ、現在50種類以上が確認されていると言われています。

・β2アドレナリン受容体遺伝子(β2AR)
・β3アドレナリン受容体遺伝子(β3AR)
・脱共役タンパク質遺伝子(UCP1)
・ob遺伝子 など

先天的にこれらの遺伝子に変異があり複数組み合わされていると、肥満になる確率が高くなります。たとえば、「β3アドレナリン受容体遺伝子」と「脱共役タンパク質遺伝子」の遺伝子に変異がある人は、ない人と比べて基礎代謝が合計300kcalほど低くなるため、太りやすいと言われています。

※.脂肪の分解やエネルギーの発散、食欲の減退など、遺伝子ごとに様々な働きがあります。

さいごに

あまり知られていないことですが、実は肥満になりやすいかどうかは、「睡眠の質」も大きく関わっています。

不十分な睡眠(質の悪い睡眠)は、食欲を増加させるホルモンであるグレリンの分泌を促進し、満腹感をもたらすホルモンであるレプチンの分泌を抑制します。それによって空腹感が異常に強まり、間食や夜食をたくさん摂ってしまうなど、食習慣の乱れを引き起こしてしまうのです。また、睡眠不足は体のエネルギー消費を低下させたり、運動への意欲も低下させるため、肥満を予防したり解消したりする上では、大きな問題点と言えるでしょう。

以下の記事では、「睡眠の重要性」と「意外な改善方法」について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
【睡眠の重要性(前編)|睡眠不足が心身に及ぼす影響とは
https://www.nihon-trim.co.jp/media/32808/
【睡眠の重要性(後編)|腸内環境と睡眠の関係性について
https://www.nihon-trim.co.jp/media/32810/


参考文献

株式会社JMDC「健康年齢|検査値の解説」

https://kenko-nenrei.jp/bmi.html

DHC株式会社「DHCオンラインショップ|Q.肥満関連遺伝子とは? 【よくあるご質問】」

https://www.dhc.co.jp/faq/faq1823.jsp

書籍「肥満タイプ別オンリーワンダイエット」NPO法人KYG協会 編