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パレオダイエットの効果と実践方法

旧石器時代の人々は肥満や生活習慣病に悩まされることがなく、意外に健康的だったのではないかと言われています。その理由は、よく走り、よく眠ることもさることながら、加工や品種改良がされていない自然の食べ物を摂取していたからだと言われています。近年、彼らの自然な食生活を模倣して、痩身と健康の両方を手に入れようとする「パレオダイエット」が注目を集めているようです。

旧石器時代の自然な食生活とは、一体どのようなものだったのでしょうか?
今回は、原始の食事法を取り入れた「パレオダイエット」について解説していきます。

パレオダイエットとは

パレオダイエットとは、旧石器時代の人々が食べていたと思われる食べ物を食べ、健康的にやせようとする痩身法のことを指します[※1]。この名称に使われている「パレオ」という言葉は、旧石器時代を意味する「Paleolithic(パレオリシック)」の略です。直訳すると「旧石器時代ダイエット」となりますが、一般的には「原始人ダイエット」などと呼ばれることもあります。

パレオダイエットは、1970年代にウォルター・ヴォーグトリン(Walter Lyle Voegtlin)という医師によって考案され、その後、たくさんの支持者によって細かなアレンジや調整が加えられ、近年再び注目されるようになりました。

パレオダイエットの主な取り組みは、先ほどもお伝えした通り「旧石器時代の食生活を模倣する」ということになりますが、その根底には「我々の祖先が長く続けていた食生活に戻そう」というコンセプトがあります。つまり、長く続けられていた原始(旧石器時代)の食生活こそが、人間の体(遺伝子)にもっとも適した食生活である、という考えが根底にあるのです。

旧石器時代という時代区分は国や地域によって、それぞれ指している年代が異なりますが[※2]、地球規模では今から約260万年前に始まり、約1万年前に終わりを迎えたと考えられています。大まかに捉えた場合、旧石器時代は約260万年続いたということになり、その間、人類はずっと狩猟や採集によって食をまかない、現代病のような病に悩まされることなく、一定の健康状態を保っていたと言われています。そこから、人類の進化にともなって食の生産に革命が起き、約1万年前に農耕や牧畜が始まり、約100年前に加工食品などの現代食が普及し始めたのです。

現代を生きる私たちにとって、加工食品の摂取は日常的に行われ、もはや「ベーシックな食事メニューの一つ」であるかのように捉えられている風潮があります。しかし、加工食品に依存した現代の食生活は、先ほどの変遷をみてもお分かりのように、人類の長い歴史の中ではまだまだ「かけだしの食生活」であり、人類との適合が十分に検証されていない食生活という見方もできます。実際、加工食品に含まれている素材や添加物などの常習的な摂取が人体に悪影響を及ぼし、肥満や生活習慣病、ガンなどを助長する原因となっている事例も多く見受けられます。パレオダイエットは、そういった現代の食生活に対して、異議を唱えるような食事法と言うこともできるでしょう。

※1. 広義には、「運動法」や「睡眠法」などが含まれる場合もあります。
※2. 日本の旧石器時代は、今から約3万7千年前から約1万6千年前までの期間を指します。

「摂取/排除」すべき食べ物

パレオダイエットで食べてもよい食べ物は、原則「旧石器時代の人々が食べていたと思われる食べ物」に限定されます。一方、排除すべき食べ物はその逆で、「旧石器時代には存在していない食べ物」になります。

例外も含め、それぞれの食べ物について見ていきましょう。

食べてもよい食べ物

パレオダイエットで食べてもよい食べ物は、以下の通りです。

【食材】
・肉
・魚貝類
・卵
・野菜
・海藻
・果物
・ナッツ類
・タネ類
・キノコ類
・根菜類 など

【飲み物】
・お茶
・コーヒー
・100%ストレートジュース など

【味付け(塩味、辛味など)】
・ハーブ
・スパイス
・粗塩
・香味野菜
・柑橘果汁
・酢
・塩麹
・昆布、鰹節、煮干し(いりこ)など

【味付け(甘味)】
・蜂蜜
・デーツシロップ など

【調理油】
・ココナッツオイル
・オリーブオイル
・アボカドオイル
・マカデミアオイル
・ウォールナッツオイル
・アマニ油 など

「肉」は、牛・豚・鶏・羊など、どれを食べても構いませんが、ダイエットの観点から言えば、できるだけ脂肪分の少ない赤身の肉を選んだ方がよいでしょう。また、より体に良い肉を食べたいという人は、放牧された動物の肉がオススメです。放牧された動物の肉は、放牧されていない動物の肉に比べて「活性酸素」の含有量が少ないため、体への酸化ストレスリスクを低く抑えることができるというのが、その理由になります。また、活性酸素を多く含む肉は、ダイエットに有用なホルモン「インクリチン」の分泌を減らしてしまうことにもなるため、その意味でも避けた方がよいと言えます(インクリチンについては後述します)。

次に、根菜類に関しては、糖質が含まれているため摂取を控えようとする人もいるかもしれませんが、パレオダイエットは「糖質制限ダイエット」ではありませんので、基本的には食べてもいい食べ物に分類されます。ただし、ジャガイモに関しては、パレオダイエット推奨者の間でも「食べない方がよい」または「少量だけなら可」という意見が多く見られますので、なるべく食べないようにした方がいいかもしれません。

排除すべき食べ物

パレオダイエットで排除すべき食べ物は、上項の「食べてもよい食べ物」以外の食べ物、ということになりますが、その中でも特に意識して避けて頂きたいのが、以下の食べ物になります。

・穀類(米や小麦など)
・豆類
・砂糖
・乳製品
・加工食品全般
・アルコール類
・加糖ジュース

穀類や豆類は、旧石器時代にも存在していたと思われますが、それらは天然(自生)のものだったはずです。それに対して、現代の「穀類・豆類」は品種改良が何度も行われており、原始の食べ物としてはふさわしくありません。また、旧石器時代には、まだ農耕が行われていませんので、当時の人々が日常的に食べていたとは考えられないという点も、排除の理由になるでしょう。

豆類については、基本的にはすべて排除の対象となりますが、「納豆」だけは例外的に摂取が推奨されているようです。その理由は、納豆に含まれている「納豆菌」が、肉類を摂取したときにあらわれる弊害(動脈硬化など)を抑制してくれるためだと言われています。「納豆は旧石器時代には存在していないのでは?」という声が聞こえてきそうですが、そこはアレンジの一環ということで、目をつむっておきましょう。

パレオダイエットに期待される効果

パレオダイエットに期待される効果は沢山ありますが、代表的なものとしては、次の2つが挙げられます。

  • 健康・老化防止
  • 体がやせやすくなる

それぞれについて見ていきましょう。

健康・老化防止

パレオダイエットで推奨されている食べ物には、余計な添加物が含まれていないため、継続していくことで徐々に体が健康になっていきます。また、パレオダイエットでは、加工食品に多く使用されている小麦を摂取しないため、「グルテン」による体への悪影響を受けることもなくなります。

【グルテンの有害性】
・アレルギーを引き起こすリスク
・腸への負担(腸内環境の悪化)
・リーキーガット症候群[※1]   など 

さらに、調味料は比較的やさしい味わいの天然調味料を使用するため、徐々に味覚が正常に戻り、薄味でも満足できるようになっていきます。その結果、砂糖や塩分の過剰摂取を抑えることができますので、それらを原因とする病気を予防することができるでしょう。

加えて、パレオダイエットは長寿やアンチエイジングにも貢献すると考えられています。パレオダイエットの食事を摂ることで「インクリチン」というホルモンがたくさん分泌され、それが食事中に早期の満腹感をもたらします。すると「カロリーリストラクション[※2]」が達成されて、体が老けにくくなるということがいくつかの研究によって報告されているようです。

※1. 腸壁バリアが壊れて隙間ができ、腸内にあるべき細菌や食物成分が、身体の中に漏れ出す現象
※2. 必要栄養素を十分に摂りつつ、総摂取カロリーを通常の70~80%ほどに落とす食生活を継続すること。アンチエイジングや健康、長寿に繋がると言われています。

体がやせやすくなる

パレオダイエットでの食事は、一般的な食事よりも「インクリチン」というホルモンが、小腸からたくさん分泌されます。このホルモンはダイエットに役立つホルモンと言われており、次のような働きをします。

①脳の中枢神経系(満腹中枢)に働いて、食事後、早期に満腹感を得ることができる
②膵臓に働いて、速やかなインスリン分泌を促す[※]
③胃から腸への食べ物の送り出しを遅らせる
④筋肉細胞のインスリン感受性を高め、血糖を多く取り込ませる など

上記のうち②~④は、「インスリンの過剰分泌」を防ぐことを意味しています。インスリンには血糖値を一定に保つ働きのほか、脂肪を合成する働きもあるため、過剰な分泌は肥満の原因になります。しかし、インクリチンがたくさん分泌され、インスリンの過剰分泌が抑制されれば、肥満予防に大きく貢献するわけです。インクリチンがたくさん分泌される理由については、まだハッキリとは分かっていませんが、パレオダイエットによって「腸の状態がよくなるから」という説があるようです。

たとえば、パレオダイエットでは整腸作用のある食物繊維を豊富に含んだ野菜をたくさん食べるほか、赤身の肉や魚など、鉄分を多く含んだ食べ物もたくさん食べます。それらが腸での解毒作用に働いて、腸が健やかに保たれるというわけです。また、パレオダイエットでは魚もたくさん食べますので、それらに含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)が、インクリチンを分泌する細胞を刺激することも、インクリチンがたくさん分泌される理由の一つとして考えられています。

また、パレオダイエットでは、通常の食事よりタンパク質の摂取量が多く、糖質の摂取量が少ないこともダイエットの促進要素に挙げられるでしょう。タンパク質は筋肉の原料ですので、筋トレなどの運動と組み合わせることで十分に筋肉が作られ、その筋肉によって代謝が上がり、体がやせやすくなります。そして、パンやお菓子などの加工食品は食べませんので、一般的な食事に比べて糖質の摂取量を大幅に減らすことができ、ダイエットを促進させることができます。

※. インスリンが速やかに分泌されない場合、遅れたタイミングでインスリンが過剰に分泌されることがあります(遅延過剰分泌)

パレオダイエットの実践方法

現在、パレオダイエットは様々な人たちによって推奨されています。その中には、「運動法」や「睡眠法」まで含めたものをパレオダイエットと呼んでいる人もいるため、実践方法は多岐多様です。ここでは「食事法」に特化した基本的な実践方法についてご紹介をしますが、この方法が唯一の方法(正解)ではありません。参考程度にご覧頂き、ご自身の体調などと照らし合わせながら、微調整していくことをオススメします。また、健康に問題がある人は、必ず担当医に相談した上で実践するようにして下さい。

①近所のスーパーに行き、食べてもよい食品をリストアップしていく(上項「食べてもよい食べ物」を参照)

②継続性を維持するため、手軽に入手できる食材をみつけておく

③原料表示がされているものは必ず確認し、余計な添加物があるものは避ける

④食事メニューが定まらないうちは、「とりあえず加工食品だけは食べない」というルールでもOK

⑤毎回の食事メニューは、おおよそ以下のような比率で構成する
【比率3】肉・魚貝類・卵など
【比率3】野菜・イモ類など
【比率1】果実
【比率1】ハーブ・スパイス
【比率2】ナッツ・タネ類・良質の脂

⑥毎回の食事メニューには、少なくとも手の平くらいの大きさの肉か魚を取り入れるようにする

⑦無理に食べる量を減らそうとしないこと(満腹感を感じるまで食べてもOK)

⑧ひと口あたり30回ほど噛み、満腹感を確かめながらゆっくりと食べること

⑨間食を避け、夕食は早めに摂る

⑩野菜から食べ始め、肉や魚を連続して食べず、合間に食物繊維を摂るよう意識すること

⑪継続が難しい場合には、週に一度「チートデイ」を設けておくと継続しやすい(1週間のうち7~8割の達成率でもOK)

注意点

パレオダイエットの注意点としては、食事メニューのかたよりが挙げられます。例えば、タンパク質の摂取比率を高めようとして、肉類ばかりを食べ続け、野菜などの食物繊維をあまり食べないでいると、ガンや動脈硬化を引き起こす可能性が高まります。

ある大規模調査の結果によると、食物繊維の摂取量が極端に少ない場合、大腸がんのリスクが高くなる可能性があると報告されています。また、別のある研究では、肉類ばかりを食べ続けていると腸内細菌が様変わりし、その置き換わった腸内細菌のためにTMAO(トリメチルアミン-N-オキシド)が増え、動脈硬化性の心血管疾患を引き起こすと報告がされているようです。

健康を保つ上で肉類の摂取は重要ですが、偏食をすると逆に健康を損ねてしまいます。肉類を食べるときには、野菜をはじめ、食物繊維も同じくらいしっかりと食べるようにしましょう。

さいごに

タンパク質を多く摂取するパレオダイエットでは、有用な腸内細菌を守ることが大切です。本文でも少し触れましたが、「納豆」は有用な腸内細菌を増やし、肉を摂取したときにあらわれる弊害(動脈硬化など)を抑制してくれる有用な食品です。値段も安く、どのスーパーでも手軽に入手することのできる食品ですので、毎日食べることをオススメします。

また、腸内細菌を守る上では、毎日の腸内ケアも大切です。手軽にできる腸内ケアとしては、「電解水素水」の飲用がオススメです。

以下の記事では、「胃腸症状の改善効果」がある電解水素水について解説をしていますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
【付加価値を持つ水とは?腸活に役立つ電解水素水について解説!】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/29468/


参考文献

日本旧石器学会「工藤雄一郎(国立歴史民俗博物館)|旧石器時代の教科書」

https://palaeolithic.jp/primer/6/index.htm

自然免疫応用技研「リーキーガット症候群とは?不調の原因と症状をやわらげる対処法2つ」

https://www.macrophi.co.jp/special/1291/

城内病因「カロリーリストリクションで長寿遺伝子サーチュインを活性化」

https://jyonai-hp.sankenkai.or.jp/general-medicine/calorie-restriction/

国立がん研究センター「がん対策研究所 予防関連プロジェクト|食物繊維摂取と大腸がん罹患との関連について」

https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/286.html

日本内科学会「日本内科学会雑誌第104巻第1号|腸内細菌は動脈硬化症に関連するか?」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/1/104_66/_pdf

NATURE「Wang Z, et al,|Gut flora metabolism of phosphatidylcholine promotes cardiovascular disease」

https://www.nature.com/articles/nature09922

書籍「Dr.奥井式 原始人ダイエット」奥井識仁 著

雑誌「ゆほびか(2019年5月号)」マキノ出版 出版

雑誌「クロワッサン(2017年1月25日号)」マガジンハウス 出版