ウェルネスとは?バランスのとれた生活を実践しよう
「ウェルネスとは何ですか?」
この質問に対して、皆さんはすぐに返答することができますか?
ウェルネスとは「健康のこと」と答えた人は、まずまずの及第点、70点といったところです。ウェルネスは健康に近い概念ではありますが、同義ではなく、私たちの人生をよりよく導く「生き方」です。
今回は健康や幸福に大きな関係がある「ウェルネス」について、解説をしていきます。
目次
ウェルネスとは
ウェルネス(wellness)とは、心と体、そして人間関係や仕事など、社会的にも健康な状態であり、またその状態を目指す生き方です。
語源は「壮快・心地よい・元気」を意味する英語の「well」で、イルネス(illness:病気)に対する言葉として使われ始めました。これを聞いて、「病気の反対は、ヘルス(health:健康)では?」と思われた方もいるかもしれません。確かに文脈によっては、それが正解の場合もあります。しかし、ヘルスは「単に病気にかかっていない状態」といったニュアンスにウェイトが置かれた言葉として、ウェルネスとの対比においては区別されているようです。
また、ヘルスの他に、ウェルネスと混同されやすい言葉として、ウェルビーイング(well-being)が挙げられます。これも文脈によって、意味に幅が生じる言葉ですが、一般的にはヘルスやウェルネスの達成によって湧き上がる幸福感や充実感などを指した言葉です[※]。
それぞれの言葉を分かりやすくするため、より簡易的に表すと以下のようになります。
- ヘルス・・・病気にかかっていない状態
- ウェルネス・・・人生を最適化して健やかに送ろうとするスタイル
- ウェルビーイング・・・健康で前向きな暮らしによって得られる幸福状態
つまり、ヘルスはウェルネスに内包され、ウェルネスはウェルビーイングに内包される、こういった位置関係にあると言えるわけです。
「人生の最適化」、「健やかなライフスタイル」、こう聞いてもよく分からないという人もいることでしょう。
以下では、より具体的な例を示しながら説明をしていきます。
※. SDGs(エスディージーズ)での訳語は「福祉」になっています。
ウェルネスの要素
初めてウェルネスという言葉に触れた人にとっては、何となく難しい概念のように思われるかもしれません。しかし、ウェルネスはとても簡単で身近なものです。ウェルネスを理解するにあたっては、さまざまな切り口がありますが、まずは「心・体・関係・暮らし」といった4つの要素から理解を深めていきましょう。
精神的なウェルネス(心)
精神的なウェルネスを高める方法としては、以下のものが例に挙げられます。
自分の心理状態を確認する
リラックスはウェルネスの基本です。日ごろから自分の心理状態を客観的に確認する習慣を身につけましょう。また、感情的になってしまった自分をどのように落ち着かせるか、そのクールダウンの方法も知っておくと良いでしょう。
自分の価値観を再確認する
自分にとって大切なものをスラスラと列挙できますか?列挙できない人は、何が自分にとって大切なのかを考え、明確に定義できるようにしましょう。列挙できる人は、それらを実際に大切にできているか、また優先順位をつけられているかを再確認しましょう。判断がスムーズになり、悩みが減ります。
いつもにこやかでいる
「悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しい」これは「ジェームズ=ランゲ説」の説明によく出てくる一節です。これを逆に捉えた場合、笑うことで楽しい気持ちを作り出すことも可能ということになります。この説はあくまで「仮説」ですが、実際に今すぐ1分ほど笑ってみて下さい。些細なイライラは緩和され、楽しくなってきます。
身体的なウェルネス(体)
身体的なウェルネスを高める方法としては、以下のものが例に挙げられます。
自分の食生活を再確認する
何をもって「良い食生活」と言うか、きちんと定義できますか?まずは「食べる物・食べる順番・食べる量・食べる時間帯・食べる速度・食べる回数」に対する知識を深め、現状の食生活と対比してみましょう。それができている人は、次のステップとして、ファスティングの有用性や、過度な減量の危険性、オルトレキシアなどについても調べてみるとよいでしょう。
座り過ぎに注意する
座り過ぎは病気を招き、寿命を縮めると言われています。毎日しっかり運動をしていても、長時間イスに座り続けるような生活をしていては、健康を促進することは難しくなります。これまで座りながら行っていた作業のうち、立っていても行える作業は、できるだけ立つようにするとよいでしょう。スタンディングデスクやステッパーなどの活用がオススメです。
睡眠時間を確保してから計画する
忙しいビジネスパーソンの場合、一時的に睡眠を犠牲にすることはよくあることです。しかし、その代償は大きく、将来の疾病リスクを高めます。継続的に仕事を行うため、そして仕事でのパフォーマンスを高めるためにも、まずは睡眠時間を固定タスクとして設定し、その上で他のタスクを組み入れるようにすると良いでしょう。
社会的なウェルネス(関係)
社会的なウェルネスを高める方法としては、以下のものが例に挙げられます。
スキンシップを増やす
デリカシーのない過度なスキンシップは相手に不快感をもたらしますが、適度なスキンシップは関係構築に役立ちます。特に現代はSNSなどの発展によって、ふれあいの機会が減少していますので、それを取り戻すという意味でもスキンシップは大切です。握手や肩組み、ハグ、ハイタッチ、そういったスキンシップは、相手に信頼感や友情、愛情、高揚感をもたらし、それが良好な関係に繋がって、ウェルネスが向上します。
人を誘う
いつも何気なく行っている行動に、誰かを誘ってみて下さい。例えば、食事をする場合、一人で食べることもできますが、誰かを誘うことで食事の時間が楽しくなり、食べるものもおいしく感じられるでしょう。誘う相手は友人でなくても構いません。むしろ、自分の生活から縁遠い人であればあるほど、知見が深まり、関係の和が広がります。
「ありがとう」を増やす
「ありがとう」という言葉は、ある人が別のある人に対して発する言葉ですので、ベクトルは一方向に見えます。しかし、心のこもった「ありがとう」は、好意に形を変えて自分の元に戻ってきます。つまり、言った人も言われた人も、互いに嬉しい気持ちになるわけです。関係のウェルネスを高める方法として、これほど強力な手段は他にないかもしれません。「ありがとう」は、誰も損をしない魔法の言葉です。ぜひ一度心を込めて言ってみて下さい。
環境的なウェルネス(暮らし)
環境的なウェルネスを高める方法としては、以下のものが例に挙げられます。
断捨離をする
不要な物を捨てきれず、残していませんか?「もったいないから」、「もらいものだから」、そういった気持ちを持つことは大切ですが、ある程度の見極めは必要です。不要な物が視界に入るたびに「捨てようかな…、でも●●だから」という思考がループして、ずっと気にし続けるのは不健全です。不要なものは誰かに譲るか、リサイクルショップに持っていきましょう。その際、手放す物に対して感謝を持てれば、ウェルネスはさらに向上するはずです。
室内の空気に気を使う
「空気」は目に見えませんが、間違いなく実在し、私たちの気持ちに作用します。換気を行ったとき、森林浴を行ったとき、好きな香水を匂ったときなど、私たちはその空間に存在する空気の状態によって、気分が左右されることを体験的に知っています。朝一番の新鮮な空気を取り込むこと、エアコンフィルターをこまめに掃除すること、お気に入りのアロマを焚くこと、この3つを行うだけでも居住空間は快適になります。
室内の光(照明)に気を使う
光量が強すぎる照明機器を使用していると、眼精疲労をはじめ、肩こりや不眠を招きやすくなります。シームレスな光量調節ができる照明機器を設置したり、目に優しい「電球色(オレンジっぽい色)」の蛍光灯に切り替えたりするとよいでしょう。また、壁紙や机の天板などが、光を強く反射している場合もありますので、インテリアの買い替えや配置換えを検討してみるのもよいでしょう。
効率的なウェルネス実践方法
ウェルネスは、「心・体・関係・暮らし」をトータルで改善していくことが大切です。このうち、心と体の不調を一緒に改善する、効率的なウェルネスの実践方法があることをご存知ですか?それは、腸内環境を整えること、いわゆる「腸活」です。
腸には、全免疫細胞の60~70%が集まっているため、感染症などのかかりやすさは、腸の状態によって大きく左右されると言えます。また、腸の状態が良いと便の排出がスムーズになり便秘が起きにくくなります。これによって、健康的な肌の色やツヤは保たれ、大腸ガンのリスクも軽減できるのです。
さらに、腸の良好な状態は「脳(感情)」にも良い影響を与え、気持ちを明るくしたり、イライラやムカムカを抑制したりしてくれます。一見、関係性がないように見える「脳」と「腸」ですが、実は互いに強い影響を与えあう密接な関係性があるのです。これは「脳腸相関(のうちょうそうかん)理論」と呼ばれ、近年の研究によって明らかになった事実です。
- 脳が健やかだと、腸も健やかになる
- 腸が健やかだと、脳も健やかになる
脳と腸、物理的な改善において実践しやすいのは「腸」になるため、まずは腸内環境を整えることがウェルネス向上の近道になるのかもしれません。
以下の記事では、「脳腸相関」について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
【脳腸相関とは?脳と腸の関係性について解説】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/30283/
さいごに
ウェルネスの最終的な目標は、個人の幸せな暮らしにあります。しかし、この目標は「自分一人だけが幸せになればいい」というエゴ的な意味ではありません。自分が感じた幸せを他の人にも波及させ、自他ともに幸せな状態にい続けることが、最終的に個人の幸せな暮らしを実現させることになります。
個人レベルでの健康活動に幸福感(充実感・満足感)を感じられない人は、ウェルネスの視点で人生や暮らしを見つめ直してみてはいかがでしょうか?
参考文献
視力ケアセンター「照明ひとつで、仕事も勉強も、食事も睡眠も変わる。」
https://www.shiryoku15.jp/illumination2#04
書籍「ウェルネスメッセージ -一億人の健康革命-」砂田登志子 著
書籍「ウエルネスライフのすすめ -健康で快適な生活のために-」古川文隆 著
書籍「三省堂現代新国語辞典 第7版」 三省堂 出版