「デジタルデトックス」とは?デジタルツールの過剰使用による弊害(前編) | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

「デジタルデトックス」とは?デジタルツールの過剰使用による弊害(前編)

体がだるくやる気がでない、頭の回転や集中力も上がらず、ミスや物忘れを繰り返す。
いつもイライラ・ムカムカとした感情に襲われ、ストレスを発散しようとしてジャンクフードに手をのばす。
そんなあなたは、デジタルデトックスが必要なのかもしれません。

スマホやPCなどのデジタルツールは生活を便利にしてくれますが、その反面、使い過ぎると私たちの心身に大きなダメージを与えます。デジタルデトックスを学び、デジタルツールとの関係性を見直しましょう。

今回はデジタル依存の弊害やデジタルデトックスの実践方法などについて、前編と後編に分けて解説をしていきます。

デジタルデトックスとは何か?

デジタルデトックスとは、デジタルツールの使用を自発的に控え、心身の疲労やストレスを軽減しようとする試みのことです。デジタルデトックスの主な対象ツールは「スマホ・タブレット・PC」が挙げられますが、実はその他にもたくさんのツールが挙げられ、サービス(アプリ・ソフト)までも含めると、対象ツールは広範囲に及びます(以下、デバイス類とサービス類を含めたものを「デジタルツール」と呼ぶ)。

【デバイス(機器)】
・スマホ
・タブレット
・PC
・ゲーム機(プレイステーション、VRヘッドセットなど)
・電子書籍

【サービス(アプリ、ソフト)】
・メール
・チャット(Chatworkなど)
・検索エンジン(Google、Yahoo!など)
・SNS(LINE、X、Facebook、Instagram、Snapchatなど)
・動画(YouTube、TikTokなど)
・サブスクリプション制動画配信サービス
・ゲームソフト
・メタバース(仮想空間)
・マッチングアプリ
・フリマサイト(オークションサイト)
・AI(ChatGPTなど)

デジタルデトックスの発祥はアメリカで、数年前には大きなブームが起きていました。現在でも、デジタルツールへの依存が見られる人たちを対象にして、デジタルデトックスキャンプやデジタルデトックスツアーなどが盛んに行われているようです。

また、シリコンバレー[※1]においては、PCやデジタルデバイスを一切使用しない小・中学校があり、この学校の7割以上の生徒が、グーグル、アップル、ヤフーなどIT関連企業に勤める親を持つと言われています。この事実は、「最先端のテック系企業の多くは、デジタルツールの危険性(弊害)を強く認識している」ということの表れだといえるでしょう。

日本では、近年、ICT教育[※2]の一環としてiPadなどを導入する学校が見られますが、学校側も保護者側もデジタルデトックスに対する認識が不十分なせいか、アメリカと比べると取り組みが遅れているようです。

これからの時代、AIテクノロジーの台頭もあり、今まで以上にデジタルツールに囲まれた暮らしが予想されます。デジタルデトックスは私たちにとって、必須の取り組みになっていくことでしょう。

※1.多くの新興企業や技術系のグローバル企業が密集する地域(米カリフォルニア州のサンフランシスコ南郊地域)。
※2. ICT(Information and Communication Technology):情報通信技術を活用したコミュニケーション

デジタルツールの過剰使用による弊害

元マイクロソフトCEOのビルゲイツは、自分の子供が14歳になるまでスマホを与えませんでした。また、iPhoneの産みの親であるスティーブ・ジョブズは、自分の子供に対してiPadの使用を厳しく制限していました。これらの事実は、彼らがデジタルツールの過剰使用による弊害を、しっかりと認識していたからだと考えられます。では、デジタルツールの過剰使用による弊害とは、具体的にどういったものが挙げられるのでしょうか。

スマホを主な例として、それぞれの弊害について見ていきましょう。

心身への影響

運動不足

座位行動が長くなるため、筋力の低下や心肺機能の低下、内臓脂肪の増加リスクが高まります。また、血流も悪くなるため、血色が悪くなり、首や肩のコリも悪化します。

目への影響
長時間モニターの光を見続けることで目が疲れ、クマができたり充血したりします。また、一定の距離にある画面を見続けることで、ピントを合わせる筋力が弱まるため、視力を低下させる原因にもなります。

睡眠への影響
画面から発せられるブルーライトには、眠りを促すホルモン「メラトニン」の血中濃度を下げる効果があります。就寝前に浴び続けると脳は覚醒状態となり、睡眠の質が低下します。それによって、慢性的な睡眠不足に陥り、生活のリズムが狂います。また、体の疲労回復機能や修復機能が働かず、疲労やダメージが蓄積していくことになります。

食生活への影響
生活のリズムが狂うと、食事摂取のパターンも乱れます。また、SNSなどを通して、なんらかのストレスを感じると、空腹でなくても体に悪いものをつまみ食いしやすくなります。これは、ストレスを解消するための無意識の行動で、「エモーショナルイーティング」と呼ばれます。

呼吸への影響
多くの人は受信したメールなどを読んでいるとき、呼吸が浅くなったり一時的に止めてしまうことがあります。この状態はマイクロソフトの元幹部リンダ・ストーンによって発見され、「スクリーン無呼吸症候群」と呼ばれています。スクリーン無呼吸症候群になり、正しい呼吸ができないでいると、自律神経の乱れに繋がります。

首への影響
本来、首の骨は自然な「S字カーブ」を描いています。しかし、うつむくような状態でスマホなどを長時間使用していると、そのカーブがなくなり、まっすぐな状態になってしまいます。この状態は「ストレートネック」と呼ばれ、これが進行すると「首部の痛み・関節可動域の低下・頸椎ヘルニア」を招くことがあります。ある研究によると、私たちがうつむいた状態でスマホを見ているとき、首にかかる負担は約27kgにもなると言われています。

脳の疲労
人間は受け取る情報を脳の中にある「前頭前野」という部分で処理しています。スマホなどに依存した生活を送っていると、インプットされる情報が多くなりすぎ、前頭前野が疲労してしまうのです(脳疲労(または脳過労))。その結果、脳の情報処理能力が大幅に低下して、もの忘れやケアレスミスを起こすようになります。また、やる気や判断力も低下して、感情のコントロールも難しくなります。このような脳疲労状態を放置していると、うつ病になるリスクが増大し、最終的にはアルツハイマー型認知症になることもあると言われています。さらに、脳は寝ている間に疲労物質を代謝したり、傷ついた細胞を修復したりしているため、良質な睡眠が不足すれば脳疲労が一層進行して、情報処理能力が低下したり、うつ病や認知症になったりするリスクが高まります。

認知障害
スマホに頼りすぎることによっても、脳機能は低下することがあります。これは「スマホ認知症」と呼ばれる状態です(正確には「認知障害」)。スマホ認知症は、上記で説明した脳疲労とあわせて、子どもの脳の発達を遅らせるリスクがあると考えられています。たとえば、2017年2月に日本医師会と日本小児科医会が発表したポスターには、「スマホを使うほど、学力が下がります」という衝撃的なフレーズが記載されていました。そして、この事実を裏付けるデータが文科省の調査によって示されています(1日当たりのスマホの使用時間が多い子どもほど、学力(平均正答率[%])が下がる)。

【図表】 普段(月~金曜日),1日当たりどれくらいの時間,携帯電話やスマートフォンで通話やメール,インターネット をしますか(携帯電話やスマートフォンを使ってゲームをする時間は除く)
出典:国立教育政策研究所「平成26年度全国学力・学習状況調査の結果(概要)」P.6より
https://www.nier.go.jp/14chousakekkahoukoku/summaryb.pdf

電磁波の曝露
電子機器を使用する以上、電磁波を完全に避けることはとても困難です。一般的によく問題視されているのは、スマホや電子レンジから発せられる電磁波でしょう。電子レンジの場合は使用中に本体から体を遠ざければそれほど大きな影響は受けませんが、スマホの場合は耳にあてた状態で使用することが多いため、脳への影響が懸念されています。人によっては、ワイヤレスイヤホンを使用して、スマホ本体を頭部に近づけないようにしている人もいますが、実はワイヤレスイヤホンも意外と電磁波を発しています。また、有線のイヤホンも、ワイヤレスイヤホンの使用時よりは電磁波の曝露を抑えられますが、それでも完全に電磁波を発していないわけではありません。一説によると電磁波は、脳の活動に影響を及ぼしたり、ガンの原因になったり、睡眠の質を低下させたりする可能性があると言われています。事実かどうか、また、その影響の度合いはどれくらいなのかについては議論の余地があり、完全に解明されているわけではありません[※]。しかし、現状では「リスクがない(または、小さい)」と断言することもできないため、避けられるようなら避けておいた方が無難と言えるでしょう。

※. 世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、家電製品などに関する電磁波の発がん性については、グループ2B(人に対して発がん性があるかもしれない)に分類しています。

メンタルへの影響
SNSに投稿された特定の動画や画像を見ていると、その投稿者の現況と、自分の現況とを比較して自己嫌悪に陥ってしまうことがあります。「あの人はあんなにもお金持ち(幸せそう・キレイ)なのに、私は…」、こういった自己嫌悪は、進行するとうつに繋がる可能性があります。一部のSNSでは、利用者の関心事(美容・金儲け・幸福感)を的確にとらえ、何度も同系統のコンテンツを見させる仕組み(アルゴリズム)が確立されています。投稿に対して羨望感を抱きやすい利用者は、こういったSNSを利用すればするほど、自己嫌悪を深めてしまうことになるため注意が必要です。また、デジタル依存に陥っている人は、感情や思考を司っている前頭前野の働きが低下(脳疲労)しているため、正常な判断(自己肯定)に戻ることが難しく、負の感情に支配されがちです。

集中力への影響
勉強や仕事をする上で「集中力」は非常に重要です。しかし、せっかく集中モードに入りかけていても、メールやSNSチャットの着信音が鳴ると、意識がそちらに向いてしまい、思考が中断されます。また、それらのメッセージに返信をする場合、それまでとはまったく異なる思考を始めることになるため、本来集中すべきことが後回しにされがちです。特に、仲の良い友人や恋人、会社の上司などからメッセージがあった場合、それらを無視することができず、ついつい返信を優先させてしまいますが、その返信がさらなるメッセージを招き、気づけば数時間も浪費してしまうこともあるようです。さらに、スマホ利用者の多くは様々なアプリやサービスを購入したり契約したりしていますので、それらの販売会社から頻繁に届けられる通知(ポリシーの更新情報・新サービスの案内情報など)にも、集中力をそがれることがあります。

社会性への影響

デジタル依存に陥ると、家族との会話の時間が減ります。その最たる例が食卓でのコミュニケーションです。食卓にスマホを持ち込むと、食事中にメールチェックや動画視聴、ひどい場合には電話をすることもあり、目の前の家族をないがしろにしがちです。また「何を食べたのか」や「どのような味がしたのか」といった記憶も曖昧になるため、料理をふるまった人との関係も次第に悪くなっていくでしょう。

仕事においては、脳の疲労や認知障害、集中力の低下、対面でのコミュニケーション能力の低下[※]などから、パフォーマンスが落ち、新たなスキルも身につきにくくなります。そうなるとビジネスチャンスを逃してしまうだけではなく、最悪の場合リストラの対象になることも考えられます。

また、デジタル依存は「ひきこもり」も招くことがあります。現実世界で生きづらさを感じている人にとって、ゲームの世界はまさに理想郷です。嫌な人との付き合いはなく、望みはすべて簡単にかなえられるため、現実世界に生きる魅力が見いだせなくなり、いわゆる「ネトゲ廃人(ネットゲーム廃人)」と化してしまうのです。

※. 語彙力の低下、活舌の悪化、表情表現の悪化、洞察力の低下、論理的思考力の低下など 

事故・事件のリスクが上がる

歩行中に「ながらスマホ」をしていると視野が狭くなり、車や自転車、別の歩行者と衝突しやすくなります。また、階段を踏み外したり、駅のホームから転落して電車にはねられてしまうこともあります。さらに、車の運転者がながらスマホをしている場合は、物損事故や人身事故、玉突き事故などの大事故を起こしてしまうこともあり、大変危険です。

また、事件のリスクも懸念されます。スマホのアプリには不特定多数の人と簡単に出会うことができる「マッチングアプリ」というものがあります。このアプリには手軽に恋人を見つけられるというメリットがある反面、詐欺や盗難、殺人事件が起きるリスクも含まれています。本来、人との出会いは親しい人との仲介があったり、信頼に値する情報がしっかり得られてから行われるものですが、スマホの手軽さに慣れている人は出会い方もインスタントになり、その結果、思わぬアクシデントに巻き込まれることがあるのです。また、SNSへのコメントを頻繁に行っている人は、それらのコメントが誤解され、「炎上」につながるリスクがあります。そうなると、過去に投稿した画像(画像に写り込んだ景色など)から、自宅や職場の住所が特定され、ストーカーや嫌がらせを受けることもあります。ひどい場合には、住所や顔写真、あらぬ噂などがネット上にさらされ、それらがデジタルタトゥーとして残ってしまうこともあります。

金銭面への影響

デジタルツールへの依存が強い場合、たくさんのサブスクリプションやサービス(アプリ・ソフト)を契約・購入するため、出費がかさみます。また、ゲームアプリにおいては「ゲーム内課金」がとられ、通信プランにおいては「高額プラン料金」がとられたりと、次々に出費がかさんでいくことになります。さらに、新しいサービスを利用するために、新型デバイス(新型スマホ)への買い替えも促進され、その新型デバイスに対応する周辺機器やアクセサリー類にも、お金を費やしてしまいがちです。

一方、日用品などの購入では、ECサイト上に設けられているボタンをポチポチとクリックするだけで購入が完了してしまうため、実際にお金が減っている感覚を得にくく、ついついムダ遣いをしてしまいます。また、オークションサイトでの購入(落札)では、他の入札者との価格の競り合いがスリル感をうみだし、落札した時の快感と相まって入札がやみつきになることがあります。「本当に欲しかった物品を落札する」という本来の目的を忘れて、むやみに入札を繰り返し、気づけばものすごい金額を請求されるケースもあるようです。

«後編へ続く»


参考文献

JBpress「「スマホ依存」はどれだけ人間の脳と知性を破壊しているか」

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/79366?page=3

筑後市立病院「広報誌いずみ Vol.43 睡眠不足とブルーライト」

https://www.chikugocity-hp.jp/outline/magazines/genkinotsubo/_2155.html

医療法人社団ベスリ会「ストレス食いの薬に頼らないTMS治療~エモーショナルイーティング~」

https://tms-clinic.jp/column/binge-eating/

東洋経済オンライン「メールは危険「スクリーン無呼吸症候群」のヤバさ メールとメッセージアプリは自律神経に悪影響-The New York Times」

https://toyokeizai.net/articles/-/698874?page=2

北戸田ナノ整形外科クリニック「ストレートネック(スマホ首)」

https://www.kitatoda-clinic.com/column/straight_neck.html

国立教育政策研究所「平成26年度全国学力・学習状況調査の結果(概要)」

https://www.nier.go.jp/14chousakekkahoukoku/summaryb.pdf

動画「今日から使える健康知識(中村仁)|ワイヤレスイヤホンの電磁波がヤバい!? 」

https://www.youtube.com/watch?v=W8Ue8SCAMMc

関西電力送配電株式会社「国際がん研究機関(IARC)の見解」

https://www.kansai-td.co.jp/corporate/energy/electromagnetic-wave/public-agency-opinion/iarc.html

雑誌「週刊ダイヤモンド(2015年5月23日号)」ダイヤモンド社 出版

雑誌「週刊新潮(令和元年・8月8日号)」新潮社 出版

書籍「最高の自分にリチャージする12章」ジュリー・モンタギュー 著