腸漏れが引き起こす体の不調とは?腸漏れと免疫力の関係性
長期にわたって治療を続けていても、なかなか改善されない不調や病気を抱えていませんか?それらの真因は、もしかすると「腸漏れ」にあるのかもしれません。
腸漏れはアトピー性皮膚炎や糖尿病、関節リウマチ、自閉症、うつ、片頭痛など、様々な不調や病気と関係しています。そのため、長引く不調や病気に悩まされている方は、現在の治療を続ける一方で、腸漏れが起きている可能性を疑ってみることも大切です。
今回はなかなか気づきにくい腸の異常「腸漏れ」について解説をしていきます。
目次
腸漏れ(リーキーガット)症候群とは?
腸漏れ症候群(リーキーガット症候群)とは、腸の細胞の間隔が緩み、その隙間から腸内の異物が血液中に漏れ出す状態をいいます。
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、日本人の7~9割がこの状態に陥っていると推測されています。その中には乳幼児も含まれており、近年、多くの乳幼児に見られる食物アレルギーも、腸漏れ症候群が原因になっているのではないかと考えられています。
腸漏れ症候群になると、通常は取り込まれない大きな分子の栄養素(分解が不十分な栄養素)が血液中に入り込みやすくなります。そして、その大きな分子に免疫細胞が反応して攻撃し、体内でアレルギー症状が引き起こされてしまうのです。
また、化学物質や汚染物質も体内に侵入しやすくなるため、化学物質過敏症などのアレルギー性疾患を起こすリスクも高まります。さらに、細菌やウィルスも侵入しやすくなるため、感染症にもかかりやすくなりますし、腸漏れが進行してくると栄養素の吸収がうまく行われなくなるため、疲労感を感じやすくなったりもします。
腸漏れ症候群の主な原因は、食品添加物や小麦食品の摂取、そして抗生物質をはじめとする薬の乱用や過剰なストレスなどが挙げられます(詳細は後述)。これらの原因は、いずれも私たちの暮らしに深く関わっているものばかりです。
腸漏れ症候群は、現代の暮らしに対する警鐘として現れているものなのかもしれません。
腸壁の構造と役割
私たちが食べた物は、以下の順番で体内を移動していきます。
①口
②胃
③小腸(十二指腸→空腸→回腸)
④大腸(盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸)
③の段階では、小腸は体に必要なもの(栄養や水分)を吸収する一方で、異物(細菌やウィルス、分子の大きい未消化の食べ物など)を吸収しないようにガードをしています。そのガードの役割を担っているものの一つが、「上皮細胞」の連結構造である「タイトジャンクション」です。上皮細胞とタイトジャンクション、この2つをより詳しく知るためには、小腸の内側の構造からトップダウンアプローチで見ていくとよいでしょう。
小腸の内側には、デコボコとした輪状のひだ(ケルクリングひだ)があり、蛇腹ホースの内側のような形をしています。この輪状のひだを拡大して見てみると、表面に指のような突起(絨毛)が沢山ついています[※1]。そして、さらにこの突起を拡大して見てみると、表面にイソギンチャクのようなものがビッシリと敷き詰められています。このイソギンチャクのようなものが「上皮細胞」です(イソギンチャクの触手にあたる部分を微絨毛といいます)。
上皮細胞は、隣接する別の上皮細胞とホッチキスのようなもので結合されています[※2]。この上皮細胞どうしの結合が「タイトジャンクション(以下「TJ」)」です。通常、TJは上皮細胞と上皮細胞の間をしっかりと塞いで(結合して)いるため、異物の通過を許しません。しかし、TJが何らかの理由によって緩んでしまうと、そこから小腸内の異物が血液中に漏れ出し、様々な不調を引き起こしてしまうのです。
※1. 大腸には輪状のひだがなく「半月ひだ」があります。そして、その表面に絨毛はなく、直接、上皮細胞が並んでいます。
※2.「クローディン」などのタンパク質によって結合されています。
腸漏れが起きる原因
腸漏れが起きる主な原因には、以下のものが挙げられます。
【薬】
・抗生物質
・非ステロイド系抗炎症薬(イブプロフェン、インドメタシンなど)
・避妊用ホルモン(ピル)
・コルチコステロイド(抗炎症薬)など
【飲食物】
・刺激の強いもの(アルコール、カフェイン飲料、唐辛子など)
・カビや菌によって腐敗、汚染されたもの
・食品添加物を多く使用しているもの(着色料、防腐剤、酸化防止剤、一部の人工甘味料など)
・農薬を多く使用している食品
・小麦食品(グルテン)
・高糖質食品[※1]
・遅発型アレルギーを引き起こすもの [※2]
【その他】
・ストレス など
また、これらの原因の多くと深い関係を持っているのが「腸内細菌」です。腸内細菌は上皮細胞の代謝を促す働きがあるため、抗生物質や食品添加物、ストレスなどの影響によって、腸内細菌叢(腸内フローラ)に異常が生じると、上皮細胞の代謝が低下することになります[※3]。
腸内細菌叢の異常
・腸内細菌の総数の減少
・腸内細菌の種類数の減少
・善玉菌の減少
・悪玉菌の増加 など
上記のような異常が生じて代謝が低下すると、上皮細胞は徐々に弱まり、TJの緩みに繋がるのです。
※1.糖質や人工甘味料は悪玉菌のエサになるため、摂り過ぎると腸内環境が乱れる原因になります(オリゴ糖などの一部の糖質を除く)。
※2. 遅発型アレルギーについては「腸漏れの予防・改善の為に」の項で解説します。
※3. 小腸の上皮細胞は、他の部位に存在する細胞よりも代謝が速く、わずか2〜4日で新旧が入れ替わると言われています。この高速代謝によって、外敵(病原菌など)の侵入に対する防御力を高めているのです。
腸漏れが引き起こす体の不調
腸から漏れ出た異物は血流にのって体中に拡散され、様々な部位で炎症を起こします。
その結果、以下のような不調を引き起こすことがあります。
【自己免疫疾患系】
・関節リウマチ
・糖尿病(1型)
・橋本甲状腺炎
・強直性脊髄炎 など
【呼吸器、口腔系】
・喘息
・嚢胞性繊維症
・口内炎、歯肉炎 など
【がん】
・脳腫瘍(グリオーマ)
・乳がん
・肺腺がん
・卵巣がん
・膵がん など
【心臓】
・弁膜症 など
【消化器系】
・下痢、便秘、腹痛(小児)
・胸やけ、過度のガス生成
・未消化食物
・逆流性食道炎
・過敏性大腸炎
・グルテン過敏症 / 不耐症
・クローン病
・セリアック病
・SIBO(小腸内細菌異常増殖症)
・潰瘍性大腸炎
・炎症性腸疾患
・糖尿病 など
【皮膚疾患】
・じんましん
・アトピー性皮膚炎 など
【脳症状】
・脳の霞(ブレインフォグ)
・片頭痛
・めまい
・腫れぼったい目
・苛立ち、不安
・自閉症、うつ病
・パーキンソン病
・アルツハイマー病
・慢性疲労症候群
・多発性硬化症
・ADHD(注意欠如、多動性障害)
・統合失調症 など
【その他】
・骨粗しょう症
・低マグネシウム血症
・女性乳房症 など
腸漏れと免疫力の関係性
前述の説明では、TJは血液中に異物が漏れ出すのをガードする役割を担っている、とお伝えしました。このガードする役割(働き)のことを「腸管バリア機能」といいます。腸管バリア機能はTJによる物理的なバリアも含め、以下の三つに大別されます。
①物理的バリア
・粘液層[※1]やTJなど
∟物理的に作られた防御壁(土塀や防波堤など)のような役割
②生物学的バリア
・免疫細胞や抗菌ペプチド[※2]など
∟防御壁を突破しようとする悪者(異物)を倒す兵隊のような役割
③環境バリア
・腸内細菌
∟防御壁の形成を手伝ったり、兵隊を元気づけたりする助っ人のような役割
∟悪者グループ(悪玉菌)の台頭を抑える調整者のような役割
①の物理的バリアの弱まりによって、異物が上皮細胞の層を突破し、その下にある粘膜固有層に侵入すると、そこにいる免疫細胞が異物を「非自己」と認識して攻撃を開始します(免疫応答)。この攻撃が起こることによって、私たちの体は感染症などから守られているわけですが、腸漏れによって異物の侵入が続いている状態では、免疫細胞も常に活性化し続けているため、攻撃がだんだん過剰になっていきます。その結果、免疫細胞の攻撃が正常な細胞にまで及んで、本来守るべきはずの体に炎症が引き起こされてしまうのです。
また、侵入した異物は腸付近に留まらず、血流に乗って様々な臓器や組織に運ばれるため、体のアチコチで炎症が起き、やがて多様な病気を引き起こします。つまり、腸漏れ状態を改善しないまま不健康な食事を繰り返していると、体内でこのような事態がずっと続くわけです。
そして、このような状態が長く続くと、免疫力が低下して、感染症にかかりやすくなります。その理由は、免疫細胞の働きが間に合わなくなるからです。そもそも、免疫細胞は私たちが呼吸をする際に口や鼻から侵入してくる異物に対して、24時間戦ってくれています。しかし、腸漏れが起きて異物が腸からも侵入してくると、免疫細胞はそれらの異物とも戦わなければなりません。つまり、戦力が分散されるような形になるわけです。
当然、免疫細胞の数や活力には限界がありますので、こういった状態が長く続いたり亢進したりすると、手薄になった免疫のガードをウィルスや細菌が突破するようになり、やがて感染症などが引き起こされてしまうことになるのです。
※1. 上皮細胞の一種である「杯(さかずき)細胞」の分泌物から形成される層。物理的・化学的な刺激から上皮細胞を守ります。
※2. 上皮細胞の一種である「パネート細胞」の分泌物。細菌やウィルスなどの有害な異物を選択的に排除します。
腸漏れの予防・改善の為に
腸漏れを予防・改善するためには、以下のような取り組みが大切です。
フードアレルギー検査を受ける
フードアレルギーには、食べてすぐに発症する「即時型」と、食べて数時間後または数日後に発症する「遅発型」とがあります。
遅発型は発症までに時間がかかるため、発症時には、食事以外の理由によって症状が現れていると勘違いしてしまう人が多いようです。また、発症までの間には、間食をしたり、次の食事を行うこともあるため、どの食べ物がアレルゲンになっているかを特定するのが難しいとも言われています。
アレルゲンとなっている食べ物が「主食」や「好物」になっている場合、その食べ物を繰り返し食べることになりますので、腸内では炎症が蔓延化し、腸漏れが起きやすくなるのです。
アレルゲンの特定にはフードアレルギー検査が必要ですが、即時型と遅発型とでは検査の方法が異なります。一般的なフードアレルギー検査では、即時型のフードアレルギーしか分かりませんので、別途、遅発型のフードアレルギー検査を行って、主食や好物の中にアレルゲンが含まれていないかを確認しておくとよいでしょう。
食生活の改善
食生活を改善するにあたっては、「避けるべき食べ物」と「摂るべき食べ物」の両方を知っておくことが大切です。
避けるべき食べ物については、「腸漏れが起きる原因」の項を参照して頂きたいと思いますが、まずは常食しがちな小麦食品(菓子パンや麺類など)を特定し、それらを優先的に減らしていくとよいでしょう。そうすることで、食品添加物、糖質、グルテンなどの摂取を大幅に抑えることができます。
一方、摂るべき食べ物においては、まず「水溶性食物繊維を豊富に含む食べ物」と「発酵食品」を食事メニューに加えるとよいでしょう。
具体的には、以下のような食べ物が挙げられます。
・水溶性食物繊維を豊富に含む食べ物
∟オートムギ、人参、パプリカ、キャベツ、果物(特にリンゴ)など
・発酵食品
∟味噌、醤油、納豆、ザワークラウト(発酵キャベツ)、ピクルス、チーズ、ヨーグルト など
これらの食べ物は、善玉菌のエサとなる(善玉菌の数を増やす)だけではなく、食べ物に含まれている栄養素も腸を強くすると言われています。
そして、その中でも特にオススメなのがザワークラウトです。
ザワークラウトは、塩もみしたキャベツを発酵させて作る料理で、腸漏れの予防や改善に有用な栄養素をたくさん含んでいます。
・水溶性食物繊維(善玉菌のエサになる)
・乳酸菌(善玉菌の一種で、発酵によって増える)
・オリゴ糖(善玉菌のエサになる)
・ビタミンU(粘膜を修復する作用がある)
簡単に作れて食材費も安いため、ぜひ食事メニューに加えて頂きたいと思います。
腸内環境を整える
先述のとおり、腸内細菌は腸の上皮細胞の代謝をサポートしています。そのため、腸漏れを予防・改善するためには、腸内環境を整える(腸内細菌の「善玉菌 / 悪玉菌」バランスを適正に保つ)ことが重要です。
腸内環境を整えるためには、上記で説明した「食生活の改善」の他、「睡眠・運動・ストレス」の正しい管理が求められます。これらの取り組みを継続的に行うことによって、腸内環境が徐々に改善され、腸漏れが起こりにくくなるでしょう。
また、お酒の飲み過ぎや食べ過ぎなどによって、すでに不快な胃腸症状(胃もたれや膨満感など)が現れている場合には、まずはそれらの症状を改善する必要があります。市販の胃腸薬などを服用する方法もありますが、より自然な方法で改善したいのであれば「電解水素水」の飲用がオススメです。電解水素水とは、整水器から生成された水素を含むアルカリ性のお水のことで、「胃腸症状の改善効果」が認められています。
以下の記事では、電解水素水について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
【付加価値を持つ水とは?腸活に役立つ電解水素水について解説!】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/29468/
さいごに
現代食の多くは、食品添加物によって「見た目、風味、保存性」などの改良がされています。それらの改良は、食品の低価格を実現し、バリエーションを増やし、さまざまな利便性を私たちに与えてくれています。しかし、それらの改良は腸内細菌にとっては改悪であることが多く、低品質な現代食を常食にしていると、腸内フローラは徐々に悪化し、やがて重篤な病気を招くことにもなります。
私たちは自分自身が食べるもの(飲むもの)に、責任を持たなければいけません。スーパーで食品を購入する際には原材料表示を確認し、粗悪な食品添加物の摂取をできるだけ避けるようにした方がよいでしょう。
以下の記事では、食品添加物の基礎知識について解説していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
【食品添加物とは?安全性や人体への影響など基礎知識を解説】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/29689/
参考文献
日本生化学会「タイトジャンクションの構造・機能連関の新しい視点」
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2020.920731/data/index.html
MSDマニュアル家庭版「喘息の予防薬と治療薬 - 07. 肺と気道の病気」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/07-肺と気道の病気/喘息/喘息の予防薬と治療薬
株式会社パールエース「もっと知りたい! オリゴ糖の特徴とその働き」
https://www.pearlace.co.jp/know-and-fun/tips/post-47.html
NHK「⑭「腸INTESTINE」」
https://www.nhk.jp/p/jintai/ts/MX3M2RV87M/blog/bl/pqO1kmEMnj/bp/peGP8AmM1K/
株式会社シクロケムバイオ「腸管バリア機能不全リーキーガットを改善するためのαオリゴ糖」
http://www.cyclochem.com/cyclochembio/watch/watch_096.html
日本食品微生物学会雑誌「小林杏輔・浅見幸夫|腸管バリア機能に対するヨーグルトの効果」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfm/36/1/36_32/_pdf
国立消化器・内視鏡クリニック「腸管バリアのしくみと機能。食事と腸内細菌が大きく関与!」
https://kunitachi-clinic.com/column/腸管バリアのしくみと機能。食事と腸内細菌が大/
日本経済新聞「「腸漏れ」で免疫が暴走する その原因と対策の食事術 ストレス解消のルール」
https://www.nikkei.com/nstyle-article/DGXZQOLM231HN0T20C22A5000000/
ウェルネスクリニック神楽坂「コロナ後遺症」
https://wellnesskk.net/blog/covid19/longcovid/
慶應義塾大学医学部・医学研究科「疾患の裏に免疫あり…知られざる免疫の役割と治療応用の最前線」
https://www.med.keio.ac.jp/features/2021/8/8-81824/index.html
日本臨床免疫学会「岡本隆一&渡辺守|腸上皮機能と炎症性腸疾患」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsci/39/6/39_522/_pdf/-char/ja
日経Gooday「腸は全身の防御システム 抗菌作用やバリア機能で外敵から守る:腸内細菌と私たちのふかーいい関係」
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/21/101100037/121100020/
東京大学医科学研究所「腸管バリアに重要なパネート細胞サブセットの発見」
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00146.html
書籍「人の命は腸が9割」藤田紘一郎 著
書籍「体の不調は「腸もれ」が原因」藤田長久 著
書籍「毛細血管は「腸活」で強くなる」藤田紘一郎 著
書籍「隠れ病は「腸もれ」を疑え!」藤田紘一郎 著
書籍「自閉症を含む軽度発達障害の子を持つ親のために」佐藤真司&瀬田剛&馬場悠輔 共著
書籍「小麦で起きる現代病”パン好きな人”気をつけて!」食べもの通信社 出版
書籍「40歳からはパンは週2にしなさい」藤田紘一郎 著
雑誌「壮快(2015年7月号)」ブティック社 出版
雑誌「週刊新潮(令和4年1月20日号)」新潮社 出版
雑誌「一個人(2015年11月号)」一個人出版 出版