「老化」を学ぼう|加齢とともに起こる身体の変化 | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

「老化」を学ぼう|加齢とともに起こる身体の変化

多くの人は老化を嫌い、アンチエイジングを行って、その進行をできるだけ抑えようとします。しかし、「老化するとどうなるのか?」という根本的な疑問に対しては、明確な答え(知識)を持っていない人の方が多いのかもしれません。

老化についての具体的な知識を持っている人と、持っていない人とでは、アンチエイジングの的確性に大きな違いが生じます。また、具体的な知識を持っていれば、必要以上に老化を恐れることもなくなります。冷静に老化と向き合い、健康的な高齢期を送るためには、老化についてしっかりと学ぶことが大切です。

今回は、老化によって起こる身体の変化について解説をしていきます。

加齢とともに起こる身体の変化

人間の体は年を重ねるごとに成長していき、ある時期(ピーク)を境に、身体の健全性が低下していきます。ピークとなる時期については諸説ありますが、一般的には20~30歳前後と言われています。

老化の進行によって身体はどのように変化するのでしょうか?

眼の老化

目の老化は、多くの人が最初に気づく老化現象の一つです。具体的には、近くのものが見えにくくなる「老眼」や、目のレンズが濁る「老年性白内障」などが代表的な症状です。

老眼
ものがハッキリと見える一番近い点を「近点(きんてん)」と言いますが、この近点は年をとると段々遠くなっていきます(老眼は40歳を過ぎたころから始まると言われています)。これは、眼の水晶体が弾力性を失って硬くなったり、水晶体の厚みをかえる筋肉(毛様筋)が衰えることによって起こる現象です。

老年性白内障
老年性白内障になると、レンズの役割を果たす水晶体に濁りが生じて(透明度が低下して)、よく見えなくなります。目の濁りは、60歳以上の人の60~70%、80歳以上の人では100%発症すると言われています。

耳の老化

聴力の衰えは、30歳代から徐々に始まると言われ、特に高音域の聞き取りが困難になっていきます。しかし、聴力の衰えを自覚するのは、早い人でも50歳代で、多くの人は70歳代くらいになって、ようやく自覚するようです。

音は外耳道というトンネルを通過して、鼓膜を振動させ、その振動は耳小骨と呼ばれる小さな骨に伝えられた後、蝸牛(かぎゅう)に到達します(振動伝達系)。振動はそこで神経刺激の形に変換され、脳に送られます(神経伝達系)。年をとると、振動伝達系と神経伝達系の両方が衰えると言われています。

皮膚の老化

年をとると、皮膚は「皮脂腺の働き・汗腺の働き・水分保持能力」が低下するため、乾燥します。すると、見た目や肌ざわりが粗くなり、シワもできやすくなります。

深くて大きなシワについては、真皮にも大きな問題が見られ、弾力性がある真皮のコラーゲン繊維が老化によって減少したり、変質してしまうことも原因になります。また、真皮にある弾性繊維も弾力性に関わっていて、老化の進行とともに異常があらわれるようになり、シワやたるみの原因になるのです。

シワ以外の皮膚の老化現象としては、シミも挙げられます。シミはメラニンの増産によって作られ、日光(紫外線)を浴びることで現れやすくなりますが、年をとると日光にあたることをやめてもメラニンの増産が止まらず、シミを過剰生産することがあります。

骨の老化

年をとると、以下のような骨の老化現象が見られます。

・腰や背中に痛みがあらわれる
・腰が曲がって後ろに丸く突き出る
・身長が縮む
・骨が折れやすくなる(骨粗しょう症)

最後に挙げた「骨粗しょう症」というのは、簡単に言うと、骨の中がスカスカになる病気です。ちょっとした転倒でも骨折する恐れがあり、特に大腿骨頸部(足のつけ根)の骨折は、寝たきり老人をつくる原因の一つとして知られています。

骨は主に「コラーゲン」と「ハイドロキシアパタイト」で作られていて、これらの素材を作る細胞は「骨芽細胞」と呼ばれ、壊す細胞は「破骨細胞」と呼ばれています。この二つの細胞によって骨は「作る・壊す」を繰り返し、入れかわり続けているわけです。しかし年をとると、作る速さと壊す速さのバランスが崩れるため、骨粗しょう症が起きると考えられています。

また、骨粗しょう症は、腎臓などの機能低下によっても起きやすくなると言われています。骨の形成に重要な役割を担うカルシウムは、ビタミンD3のサポートによって、腸での吸収が促進されますが、ビタミンD3はそのままでは作用せず、腎臓と肝臓で活性型に変化して初めて効果を発揮します。しかし、年をとると、腎臓の「ビタミンD3を活性型に変える働き」が低下するため、活性型のビタミンD3が不足し、カルシウムの吸収効率が低下することになるのです。その結果、骨の分解が進み、骨粗しょう症が起こると言われています。

歯の老化

年をとると歯が抜けやすくなりますが、その原因は歯の変化によるものではなく歯周組織(歯を支える組織)の変化にあります。

【主な歯周組織】
歯槽骨(しそうこつ)・・・顎から立ち上がっていて、歯を支える骨
歯根膜(しこんまく)・・・歯の根っこと歯槽骨の間にある薄い膜で、歯槽骨との接着を担う
歯肉(しにく)・・・歯の周りを覆うピンク色の部分(はぐき)

歯周組織が老化したり病気になることで、以下のような変化が生じます。

・歯槽骨の骨量が減り、高さが低くなる
・歯根膜の主成分であるコラーゲンが変質する
・歯肉が萎縮する

つまり、歯を支える部分の強度低下が原因の一つになっているのです。また、歯の根元がむき出しになることで、食べ物のカスがたまりやすくなり、その結果、歯周病にもなりやすくなります。歯周病は、歯槽骨の低下や歯肉の萎縮を進めるため、一層歯が抜けやすくなるという悪循環に陥ります。しかも、歯は1本でも抜けると、正しいかみ合わせが難しくなる為、残っている歯を弱らせ、連鎖的に抜けてしまうこともあるようです。

関節の老化

年をとると、軟骨の性質に変化が生じたり、コラーゲンの量が減るため、軟骨の層が薄くなります。軟骨の層が薄くなると、関節のクッション作用が弱まるため、関節痛が現れたり動かしにくくなります。この状態が続くと、やがて炎症が起き、関節が壊れたり変形する「変形性関節症」になるのです。年をとると、非常に大勢の人がこの疾患になると言われており、特にヒザ関節においては、60歳を過ぎるとほとんどの人が変形性関節症になるようです。

変形性関節症は「軟骨と周囲の組織の損傷を引き起こす慢性疾患」と定義されていますが、広義においては老化現象の一つと言うこともできるでしょう。

筋肉の老化

年をとると、筋肉量が減少し、それにともなって手足の筋力は弱まり、動作が緩慢になります。

筋肉量の減少とは、筋細胞数や筋原繊維の減少のほか、一つ一つの細胞が細くなることも指しています。こういった物理的な身体変化に加え、「筋肉を使わない」という意図的な選択も、老化による筋肉の衰えを加速させます。たとえば、競技に対する関心の低下、定年退職による活動量の低下、感染症予防のための外出控えといった多くの高齢者に見られる傾向が、運動量を低下させることに繋がります。

運動量が低下してくると、真っ先に衰えが表れてくるのは足腰です。ここがダメになると、機能的に運動が難しくなり、より筋力の低下が進むことになります。

血管の老化

血管の老化による一般的な症状に、高血圧が挙げられます。加齢性高血圧の主な原因は、血管に含まれるコラーゲン繊維の質的・量的な変化です。これによって、血管壁が硬化して血管の伸縮性が損なわれ、血圧が上がると考えられています。

また、年をとると「動脈硬化」という病気になる人も増えてきます。動脈硬化はコレステロールの蓄積などによって、動脈の内膜が厚くなったり、弾力性が失われたりして、動脈が硬くなる疾患です。動脈硬化になると、血液の流れが悪くなるため、臓器に血液が届きにくくなり、酸素や栄養の供給が不十分になります。また、動脈硬化が起こる過程では血管内に血栓が形成されやすく、それが心筋梗塞や脳梗塞を招くこともあります。

心臓の老化

心臓のポンプ機能は、年とともに衰えます。安静時には若い人と大差はありませんが、運動をするとその差は如実に表れます。心拍数の上昇で比較してみると、若い人は「180回/分」ほどですが、60歳代では「140回/分」ほどが限界と言われています。

また、心肥大(心臓の筋肉の肥大化)という病態もよく挙げられます。先述のとおり、血管は老化すると、だんだん硬くなり、伸縮性が低下します。それによって、血液の流れが悪くなるのですが、心臓はその悪くなった血液の流れを元に戻そうとして、通常よりも頑張ろうとします。その結果、心臓に大きな負担がかかり、心臓の筋肉が肥大化してしまうのです。心肥大は、心不全や不整脈、突然死のリスクを高める病態です。

腎臓の老化

腎臓は、臓器の中でも老化を受けやすい臓器の一つであり、老化のモデル臓器と呼ばれることもあります。

腎臓はネフロンという組織がたくさん集まってできており、その中には糸球体(しきゅうたい)と呼ばれるさらに小さい組織があります。糸球体は血液を濾過して尿をつくる組織です。この糸球体の濾過能力は、年とともに、ほぼ直線的に低下します[※]。

この他、腎臓の「ナトリウムの排泄調節機能」や、「血圧調節物質の生産機能」なども低下します。これらの原因は、ネフロンの減少や、相対的に結合組織(コラーゲン)の割合が増加することなどが考えられています。

※. 30歳を100とした場合、80歳で50くらいにまで落ち込むと言われています。

免疫機能の老化

いくつもの細胞が関わる免疫システムの中で、中心的な役割を果たすのは「T細胞」です。年をとると、このT細胞を作る能力が低下します。

T細胞の元は骨髄で作られた後、血流にのって心臓の上にある胸腺(きょうせん)にやってきます。胸腺とは、T細胞の元を増殖させたり、立派な免疫細胞へと育て上げる働きを持つ重要な器官です。この重要な器官である胸腺は、20歳代で半分くらいが脂肪に置き換わり、老人になるとほぼ全部が脂肪になってしまいます。この現象によって、T細胞をつくる能力は低下し、それにともなって免疫は徐々に弱まっていきます。その結果、免疫系の異常(自己免疫現象)が現れやすくなったり、感染症にかかりやすくなったりします。

脳の老化

脳は表面(表層)に「灰白質(かいはくしつ)」と呼ばれる領域があり、その内部(深層)に「白質」と呼ばれる領域があります。

年をとると、白質の領域が萎縮して、脳の重量が軽くなり、それにともなって物忘れなどの脳の衰えが表れ始めます。ちょっとした物忘れ程度の状態であれば、常識や判断力は失われず、社会生活にそれほど大きな問題は起こりません。問題なのは、その程度がひどい場合です。

たとえば、映画を観た後に「映画のタイトルが思い出せない」といった状態であれば許容範囲ですが、「映画の鑑賞自体を思い出せない」といった状態になると、社会生活に大きな問題が生じます。そして、症状がここまでひどくなると、病院で検査が行われ、たいていは「認知症」による記憶障害と診断されます。認知症は、血管性認知症とアルツハイマー型認知症の二つに大別されます。

血管性認知症
老化にともなう脳の血管障害(動脈硬化や高血圧による脳梗塞や脳卒中など)が原因で起きます。酸素と栄養を供給する血液の流れが、血管の障害によって途絶えると、脳神経細胞は死滅して認知症を引き起こします。

アルツハイマー型認知症
発症原因の一つとして、脳から排出されるはずの「アミロイドβ」が、脳に蓄積することが挙げられます。排出が正しく行われなくなる原因は完全には解明されていませんが、加齢や遺伝子の型などが原因の一つとして考えられています。

健康寿命を意識した生活のすすめ

私たちは生命である以上、老化は避けられません。しかし、遺伝子が許す範囲内で、寿命を長くすることは可能です。また、単に長生きするだけではなく、健康寿命(心身が健全な状態で生きている期間)をのばすことも私たちの取り組み次第で、ある程度コントロールすることができます。

そのためには「食事・睡眠・運動・ストレス・嗜好品」、この5つの項目を見直して、管理していくことが大切です。また、見直しの際には「質・量・時間」の観点で、改善(現状より少しでもベターであればOK)を積み重ねていくと良いでしょう。

たとえば、菓子パンを夜に3個食べている人の場合、質的な改善では「米粉を使った菓子パンに切り替えよう」、量的な改善では「2個までにしよう」、時間的な改善では「15時以降は食べない」などが挙げられます。もちろん、明らかな悪習慣はすぐに断つのがベストですが、急激な生活習慣の変化は大きな負荷がかかるため、人によっては挫折してしまうこともあります。無理をして挫折してしまうくらいなら、小さな改善を段階的に積み重ねていった方が堅実でしょう。

まずは改善案を紙などに書き出し、それぞれの改善案の横に日付を付しておきます。そうすることで、改善のとりくみを振り返った時に、どれくらい継続できているかが一目で分かり、モチベーション維持に繋がります。また、途中で挫折した場合には、見直しをはかった日からどれくらいの日数で挫折をしたのかが分かるため、改善案の難易度調節を行うのに役立つでしょう。

以下の記事では、健康寿命をのばす方法について解説していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
【健康寿命ってどんなもの?寿命との違い、健康寿命をのばす方法】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/28594/

さいごに

老化という言葉の響きは、私たちに不安や絶望を抱かせます。それは、「容姿の衰え・苦痛・病死」などのイメージが、この言葉に包含されているからではないでしょうか。しかし、それらのイメージが、将来そのままの形で必ず訪れるとは限りません。どのような将来を迎えるかは、遺伝子が決定しているところもありますが、私たちの日ごろの生活態度も大きく関係しています。まずは、変えられるものと変えられないもの、この見極めを明確に認識し、変えられるものについては、最善を尽くすことが大切です。

また、それとともに、老化を受け入れ、生命活動の一環として俯瞰的に味わえる心のゆとりを醸成することも大切です。図書館やネットを活用すれば、いつでも先人が残した著書(キケロの「老年について」など)を読むことができます。先人の英知に触れ、老化に対する新たな考え方を学ぶのも良いかもしれません。


参考文献

MSDマニュアル家庭版「変形性関節症 - 08. 骨、関節、筋肉の病気」

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/08-骨、関節、筋肉の病気/関節の病気/変形性関節症

書籍「老化のしくみと寿命(図解雑学)」藤本大三郎 著