砂糖は合法ドラッグ!?砂糖依存がもたらす健康リスクとは | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

砂糖は合法ドラッグ!?砂糖依存がもたらす健康リスクとは

お菓子を食べ始めると、つい止まらなくなってしまった経験はありませんか?
特に砂糖を含む食品は、一度口にするとやめられなくなることが多いものです。

実は、この現象には科学的な根拠があり、砂糖には麻薬のような依存性があることが多くの研究で明らかになっています。ある専門家によると、いくつかの食品メーカーは砂糖のこうした特性を利用し、消費者を引き付けようとしていると警鐘を鳴らしています。

砂糖の過剰摂取は単に体を太らせるだけではなく、健康を損ない、さらには命に関わるリスクをもたらす可能性もあります。甘いものがやめられない方は、ご自身が依存状態に陥っていないかをチェックする必要があるでしょう。

今回は、砂糖依存が健康に与える影響や、依存のチェック方法、そして無理なく抜け出すための対策について解説していきます。

砂糖は麻薬のようなもの?

「砂糖は麻薬のようなもの」と言うと、かなり過激で極端な表現のように思われるかもしれません。しかし、ラットを使った動物実験において、砂糖には麻薬に似た作用があることが示されています。その作用とは依存性や中毒性のことです。

ボルドー大学(旧・ボルドー第2大学)のセルジュ・アーメ博士らの実験報告(2007年)では、糖質(ショ糖)や糖質以外の甘味(サッカリン)は、コカインよりも依存性が高い可能性があるということが示されています。この実験では、はじめに43匹のラットに、コカインと加糖水の報酬性(摂取時の快楽)を学習させました。その上で、「コカインの静脈注射」と「加糖水」の選択肢を与えたところ、43匹中40匹のラットが、加糖水を選択し続けるという結果になったのです。
また、ラットを使った別の実験でも、砂糖に麻薬と同じような中毒性があることが報告されています[※]。

麻薬の中毒性を判断する場合、以下の3つの段階を経ることが要件になると言われていますが、ラットにエサを与えず、砂糖水を与え続けた場合でも、同様の状態が観察されたそうです。

【耐性の発生】
摂取量を増やさないと同じ快感が得られなくなっている状態

【禁断症状の出現】
摂取を中断すると、身体や精神に苦痛や不快感、焦燥感などが現れる状態

【渇望と摂取回帰】
強烈な欲求に駆られ、得るための労力を厭わなくなり、最終的には我慢できずに再び摂取する状態

具体的には、加糖水の摂取量がどんどん増え、供給を止めると歯ぎしりや震えなどの禁断症状が現れ、砂糖水の出るレバーをひたすら押すようになったのです。
こういった実験結果の情報は、ネットや書籍などで広く知られるようになり、それにともなって砂糖は麻薬に例えられることが多くなりました。

※. 「動物実験において、砂糖の中毒性はコカインの8倍」と主張する専門家もいるようです。

もしかして依存症かも?

日ごろからお菓子やジュースなど、明らかに甘い食品をたくさん食べている人は、砂糖の依存性や中毒性には薄々気が付いていることでしょう。しかし砂糖は、そういった分かりやすい食品だけに含まれているわけではありません。総菜や加工食品、調味料の中にも含まれている場合があります。

さらに、代謝の観点で言えば、炭水化物(に含まれる糖質)の過剰摂取も、砂糖の過剰摂取と同じ意味を持つことがあります。炭水化物の代表例としては、パンやごはん、パスタなどが挙げられます。これらは口に含んでも、お菓子のような甘味を感じることはありませんが、糖質を摂取していることには変わりはありません。

このように、私たちが口にするもののほとんどには、砂糖の使用や糖質の含有が見られます。そして、それらを知らず知らずのうちにたくさん摂取して、砂糖依存に繋がるケースもあるのです。

砂糖依存度チェック

血液中に糖質(ブドウ糖)がどれだけ含まれているかを知るには、血糖値を調べるのがもっとも分かりやすい方法です。しかし、砂糖依存に陥っているかどうかを知るためには、ご自身の行動パターンや思考パターン、体調などを客観的に見ることが大切です。

以下のリストは、客観的に見るための補助ツールです。事例として、参考にしてみてください。

・自宅や職場には、常にお菓子やジュースのストックがある
・食後に甘いものを食べないと気が済まない
・お腹が減っていなくても、何かを食べたくなる
・目の前のお菓子がなくなるまで食べ続ける
・「お菓子を食べる→罪悪感を覚える」を何度も繰り返している
・毎日、エナジードリンクで仕事を乗り切ろうとする
・仕事や人づきあいのストレスを、甘いもので解消しようとする
・コンビニやスーパーに入ると、必ずスイーツコーナーに立ち寄る
・コーヒーや紅茶などを飲んでいると、甘いものがないと落ち着かない
・数時間ごとに甘いものを食べていないと、頭が回らない
・何もしていなくても、疲労感がある
・気分の浮き沈みが激しい
・甘いものを控えると、イライラしたり、不安になる
・年々、甘いものを食べる量が増えてきている

心身に与える悪影響

砂糖をたくさん摂ると、体が太りやすくなり、虫歯のリスクも高まります。このことは、一般的にもよく知られています。しかし、砂糖依存が心身に与える悪影響については、あまり知られていないようです。

砂糖依存はさまざまな症状を引き起こし、重篤な病気を発症するリスクも高めます。
砂糖依存が心身に与える主な悪影響は、以下のとおりです。

【精神的な症状】
・集中力が続かない
・思考がまとまらない
・落ち込みやすい
・怒りっぽい など

【身体的な症状】
・手足が震える
・妙に疲労感がある
・軽作業で、めまいや立ちくらみが起きる
・頭痛がする
・朝起きるのがつらい など

【発症リスクが高まる病気】
・2型糖尿病
・心臓病
・心臓発作
・脂質異常症
・膵臓ガン
・高血圧
・動脈硬化
・アルツハイマー
・うつ病
・腎臓病
・肝障害
・骨粗しょう症 など

上記に挙げた「発症リスクが高まる病気」のうち、いくつか病気は「糖化」という反応と強い関わりがあります。糖化とは、体内に存在する糖がタンパク質などと結びつき、老化を促進したり、いくつかの病気のリスクを高めたりする「AGEs(終末糖化産物)」という物質を作り出す反応のことです。

近年、体の「酸化」が老化や病気の原因の一つとして警戒されていますが、糖化は酸化と同じくらい、または、酸化よりも警戒すべき反応として警鐘を鳴らす専門家もいます。

以下の記事では、糖化やAGEについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【AGE(終末糖化産物)とは?】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/31051/

砂糖の適正な摂取量

砂糖依存を断つには、当然ながら砂糖を断つことが有効です。しかし、砂糖依存に陥っている人が、いきなり砂糖を完全に断つのは現実的ではありません。

また、そもそもの話として、問題となっているのは「砂糖の過剰摂取」であって、「砂糖の摂取」自体が絶対的に悪いというわけではありません。そのため、砂糖依存に陥っている人は、「過剰に摂っている砂糖の量を段階的に減らしていき、適正な摂取量に戻す」ことを目標にするのがよいでしょう[※1]。

では、適正な摂取量とはどれくらいなのでしょうか?

WHO(世界保健機構)の2015年のガイドラインでは、成人及び児童の1日の砂糖(糖類)の摂取量を、総エネルギー摂取量の10%未満に抑えることを推奨しています。例えば、2000kcalの食事を摂取している成人の場合、砂糖の摂取量は1日50g未満ということになります[※2]。また、このガイドラインでは、砂糖の摂取量を総エネルギー摂取量の5%未満(上記の例でいうところの「1日25g未満」)にまで抑えた場合、健康効果はさらに増大するとも説明しています。

「50gや25gと言われても、イメージしづらい」という方は、以下のリストを参考にしてみてください。

【ティースプーン換算】
砂糖50g・・・ティースプーン約12杯
砂糖25g・・・ティースプーン約6杯

【お菓子の砂糖含有量】
炭酸ジュース(500mL)・・・約50~60g
プリン(1個)・・・約11g
シュークリーム(1個)・・・約8g
板チョコ(1/2枚)・・・約24g
あんパン(1個)・・・約26g
クッキー(3個)・・・約5.1g
グミ(10個)・・・約20g

※1. すでに心身に重度の症状が現れている方や、何らかの基礎疾患をお持ちの方などは、「減糖」ではなく「断糖」をすぐに始めなければいけない場合もあります。心当たりのある方は、早めに医療機関で受診してください。
※2. 砂糖1gのカロリーは「4kcal」です。

減糖を始めるにあたって

仮に、1日の砂糖摂取量の上限を「50g未満」と設定した場合、皆さんはそれを守る自信がありますか?
現在の砂糖摂取量によって答えは異なるかもしれませんが、おそらく多くの人は守ることが難しいかもしれません。その理由のひとつに、500mLの炭酸ジュースを1本飲むだけで、簡単に上限を超えてしまうことが挙げられます。さらに、砂糖はお菓子やジュースだけでなく、総菜や加工食品、調味料にも含まれているため、無意識のうちに摂取してしまうことが少なくありません。そのため、減糖を成功させるには、砂糖1gの重みを意識すると同時に、日々の食事に含まれる砂糖の量を注意深くチェックする姿勢が必要になります。つまり、なんとなく「減らそう」と思うだけでは、効果的な減糖は難しいということです。

ただし、無理なく続けるためには、あまり厳しすぎるルールを設けるのも考えものです。初めから大幅に制限するのではなく、少しずつ減らしていく柔軟な姿勢が大切になります。また、うまくいかない日があっても、落ち込むのではなく、改善点を振り返りながら前向きに取り組むことが重要です。

以下のリストでは、減糖を成功させるための具体的な方法や、心構えについて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

砂糖の摂取量を減らす工夫

砂糖の摂取量を減らす工夫としては、以下のものが挙げられます。

ストレス管理を行う
ストレスを感じると甘いものが欲しくなる傾向があるため、自分にあったストレス解消法を見つけるようにしましょう。

睡眠時間をしっかりとる
睡眠不足になると、食欲が増して甘いものが欲しくなる傾向があるため、良質な睡眠をしっかりとるように心がけましょう。

糖分含有量の計算方法を知る
清涼飲料水の糖分量を知ることで、どれだけ飲んでいいか・悪いかの判断がしやすくなります。

スイーツの代わりになる食べ物を探す
砂糖不使用のダークチョコやミントガム、ナッツ、スルメ、野菜スティックなど、スイーツの代替食品を準備しておくことも有効です。

タンパク質を意識して摂る
タンパク質は満腹感(満足感)を持続させる効果があり、間食を防ぐのに役立ちます。たとえば、鶏の胸肉は比較的値段が安く、良質なタンパク質が摂れるのでオススメです。

人工甘味料の種類を知る
いくつかの人工甘味料は、砂糖の数百倍の甘さがあり、依存性や中毒性が懸念されています。また、食欲増進ホルモン「グレリン」の分泌を促進させるとも言われています。そういった人工甘味料を避けるためには、人工甘味料の名称や特性を知っておくことが大切です。

お菓子を小分けにする
食べる前にお菓子を小分けにし、必要最低限の量だけを残して、それ以外の分は保管場所にしまっておきましょう。そうすることで、惰性で平らげてしまうことがなくなります。

ゆっくり食べる
お菓子は少量ずつゆっくりと食べるようにしましょう。その際、脳が満足したかどうかを常に確かめながら食べてください。満足感が現れたら、すぐに食べることを中止して、お菓子を残してください。

誘惑に負けた時は「記録」と「翌日相殺」する
砂糖の誘惑に負けた時は、「いつ、どこで、誰といた時に、どんな体調で、どんな精神状態だったか」を記録し、今後の予防に活かしましょう。また、摂り過ぎた分は、翌日の摂取量を抑えて相殺するようにしましょう。摂り過ぎた自分を責め続けるのは非生産的です。また、それがストレスとなって、ヤケ食いに繋がる恐れもあります。

分かる範囲で「厳密」に摂取量を記録する
ほとんどの場合、食品に使われている砂糖の量は、正確に知ることはできません。それでも分かる範囲で厳密に記録をとり、概算で摂取量をつかんでおくことは、モチベーションを維持する上で非常に重要です。

買い物リストを作ってから買い出しに行く
買い物リストを作ってから買い出しに行き、そのリスト通りに買い物を済ませれば、余計なもの(甘いお菓子など)を衝動買いしてしまうことがなくなります。また、スイーツコーナーを避けるような動線をあらかじめイメージしておくことも有効です。

できるだけ自分で調理する
外食や加工食品に使用されている砂糖の量は、正確に知ることはできません。しかし、自分で作った料理はかなり正確に知ることができます。また、使用する砂糖の量を調節することもできるため、時間に余裕があるときには、できるだけ自分で調理したものを食べるようにしましょう。

さいごに

安価な加工食品の多くは、栄養価が低く、砂糖や粗悪な添加物がたくさん使用されています。価格だけを基準にして食品選びをしていると、短期的には節約ができたとしても、長期的には体の健康を損なって、高額な治療費を払うことにもなりかねません。

食事は「自分への投資」です。良質で新鮮な食品にお金を払うことは、もはや必要経費と言ってもよいでしょう。スーパーやコンビニなどで、食品選びをするときは、手に取った商品が本当に自分にとって有用なものなのかどうかを、しっかりと見極める必要があります。特に、砂糖依存や砂糖中毒に陥っている人は、衝動的な判断をしてしまいがちですので、より注意深く、冷静な判断が求められます。


参考文献

PLOS ONE「Magalie Lenoir et al.|Intense Sweetness Surpasses Cocaine Reward」

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0000698

大和薬品株式会社「糖質と甘味は中毒になる」

https://www.daiwa-pharm.com/doctor/7388/

明治薬科大学セルフメディケーション学研究室「疲れたときに甘いもの?本当はこわーい砂糖のはなし」

https://u-lab.my-pharm.ac.jp/~self-medication/wordpress/疲れたときに甘いもの?%e3%80%80本当はこわーい砂糖の/

New York Daily News「Sugar as addictive as cocaine, heroin, studies suggest」

https://www.nydailynews.com/2008/12/11/sugar-as-addictive-as-cocaine-heroin-studies-suggest/

スポーツナビ「砂糖中毒に陥る前に!甘い食べ物との賢いつきあい方」

https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201806140022-spnavido

品川メンタルクリニック「甘いもの好きな人必見! 砂糖依存症について」

https://www.shinagawa-mental.com/column/psychosomatic/suger/

福島県立医科大学「いごころVol.27|そんなあなたは砂糖依存症…… 太るだけでなくさまざまな病気の原因に」

https://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/kouhou/vol_27.pdf

四国新聞社「砂糖取りすぎは高リスク/膵臓がん、8万人調査で」

https://www.shikoku-np.co.jp/national/medical_health/20061109000166

日経Gooday「老化の真犯人は「糖化」 悪玉物質が見た目と体を老けさせる:糖化の真相・老けない人の習慣」

https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/23/121100049/121100001/

WHO「Guideline:Sugars intake for adults and children(2015)」

https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/149782/9789241549028_eng.pdf?sequence=1

食品安全委員会「食品安全関係情報詳細|世界保健機関(WHO)、ガイドライン「成人及び児童の糖類摂取量」を発表(2015年3月4日)」

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04220570294

日本経済新聞「1日の糖類は小さじ6杯分まで WHOが新指針」

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFK05H07_V00C15A3000000/

ナチュラルクリニック代々木「砂糖の害」

https://www.natural-c.com/blog/2024/01/post-254-797043.html

マイ広報誌「あさぎり町健康推進課|まちの保健室 取りすぎてない?見えない“糖分”を意識しよう」

https://mykoho.jp/article/熊本県あさぎり町/広報あさぎり-2024-8月号/まちの保健室-取りすぎてない見えない糖分を/

DM三井製糖株式会社「お砂糖まめ知識」

https://www.msdm-hd.com/jp/study/knowledge.html

名古屋ハートセンター「「エンプティ・カロリー(空っぽのカロリー)」大切なものを放棄した食事をしていませんか」

https://nagoya.heart-center.or.jp/div04_7_archive/div04_7_200201.html

ドキュメンタリー映画「FedUp」