運動・スポーツに水分補給が欠かせない3つの理由と、上手な水分補給の仕方
「スポーツの最中に水分補給はしない!」といった、耐えることが美徳であるかのような話はもう一昔前の事。
今では、スポーツ中の水分補給がどれだけ大切かということが広く知られています。
きちんと水分補給しながら運動・スポーツを行うことは、脱水による危険な状態を回避することはもちろん、よりよいパフォーマンスでスポーツを行うことに繋がります。
では、どんな飲料水をどんなふうに補給したらよいのでしょうか?
一度にたくさん水分補給してお腹が痛くなってしまった…
スポーツドリンクを飲んでいたら、余計に喉が渇いた…
などという経験がある方も多いのではないでしょうか。
そこでこのサイトでは、運動・スポーツ時の水分補給の仕方を徹底解説!スポーツと水分補給の関係を詳しく見ていきます。
目次
運動・スポーツ時の水分補給の必要性
汗で失われる水分
なぜ、運動やスポーツをしているときに水を飲んだ方がよいのでしょうか。答えは運動時にかく「汗」にあります。
人間の体の水分量は、約60%。私たちは普通の生活を送っているだけで、尿や汗、また不感蒸泄(呼吸と共に蒸発する水、皮膚から出ていく水)として多量の水分が失われており、それを補うため必要とされる1日の水分量2.5ℓのうち、飲み水からの補給はおよそ1.2ℓだと言われています。
また、運動・スポーツをすれば汗をかくので、さらに多くの水を補給する必要があります。
汗の量は運動量や外気温などによっても異なりますが、1時間程度の運動で1ℓほどの汗をかくこともあるそうです。
それだけの水分が失われたのにも関わらず、水を飲まないでいれば、体内の水分量が不足して体にさまざまな不調をきたすことになるのです。
水とスポーツパフォーマンス
汗として体の水分が失われても水分補給しないでいるとどうなるのでしょうか?
その影響はまず、行っているスポーツのパフォーマンスレベルの低下として現れます。
長く運動を行っていると、次第に動きが鈍くなってくるということはよくありますが、これには疲労や体力の消耗だけではなく、体の水分量の低下も関係しています。
パフォーマンスの低下は、体重の約1%の水分が低下したあたりから徐々に始まると言われています。
2%が失われると喉の渇きを覚えるようになり、3%の減少では疲れや苦しさが出てきて、自他ともにパフォーマンスの低下を認識するようになるそうです。
例えば体重が50kgの人であれば、500mlの水分が失われればパフォーマンスの低下が始まり、1ℓが失われれば確実に低下するということになります。
可能であれば、運動の前後に体重を測ることでどのくらいの水分が失われたかの目安になると思います。
高いパフォーマンスを保ち続けるためにも、スポーツ時には正しく水分補給を行いましょう。
脱水症の危険
体重の3%以上の水分を失い、かつそのまま水分補給しないでいると、単にパフォーマンスが低下するだけではなく、命の危険が生じることもあります。それが、脱水症です。
体の中の水分は、次のような役割を果たしています。
- 血液として栄養素や酸素を運ぶ
- 老廃物を集め、体外へ排出する
- 汗をかくことによって、体温を調整する
しかし体内の水分量が低下すれば、当然これらの働きが正常に行われなくなり、さまざまな体調不良の症状が現れることになるのです。
具体的には、めまいや吐き気、痙攣などが起こり、最悪の場合には死に至ることさえもあると言われています。
脱水症のサインとしては、
- 口の渇き
- 尿が濃くなり、回数が減る
- 皮膚がカサカサになる
- 目がくぼむ
などがあります。
これらの症状が出ているときにはすでに体が脱水気味になっているということですので、迅速かつ適切な水分補給が必要です。
水分補給は普段からこまめに行なうことがもっとも大切だといえます。
運動・スポーツ時にどんな「飲料水」を飲むか
運動・スポーツにおける水分補給の必要性は今や多くの方が認識していると思いますが、気になるのは「何を飲めばよいか」ということですよね。
ここでは、運動・スポーツ時に最適な「飲料水」について見ていきます。
水分補給は「水」で良い?
運動やスポーツをしているときに補給すべき水分というのは、基本的には「水」で構いません。
汗の99%は水ですから、失われた汗の分を補うためには水を飲めばよいのです。ただし、次のような点に気を付けて飲む必要があります。
水道水かミネラルウォーターか
「水」と一口に言っても最近ではさまざまな種類がありますが、運動・スポーツ時の水分補給としては、これでなければならないということはありません。
手に入れやすく、また自分にとって飲みやすい水を選べばよいと思います。
運動時にはミネラルが多く含まれている水の方が良いと言われることもありますが、硬度の高い水をいきなり飲むとお腹をこわしてしまうこともあるので注意しましょう。
温度
運動やスポーツをして汗をかいたときには冷たい水がおいしく感じられますが、冷たすぎるものは内臓に負担をかけます。
常温、あるいは11~15℃くらいに冷やしたものが理想的です。
塩分の必要性
運動・スポーツ時の水分補給は水でよいと言いましたが、一つ気を付けなければならないことがあります。それが、塩分の必要性です。
汗には、わずかではありますが塩分が含まれています。ですから、激しい運動や長時間のスポーツをして大量の汗をかいたときには、塩分も失われてしまうことになります。
体内の塩分(ナトリウム)が減少すると
- 筋肉の痙攣などが起こる
- ナトリウム濃度を保つために水分の排出が行われ、脱水に陥りやすくなる
などといった体調不良が起こることがあります。
運動やスポーツで大量の汗をかいたときに普通の「水」だけを補給していると、このような塩分不足を助長してしまうこともあります。
ですから、多くの汗をかいたときには水と一緒に塩分も補給する必要があります。
具体的には、塩分が0.1~0.2%程度含まれた飲み物を飲むというのがおすすめです。また、カロリー補給のために糖分が4~8%含まれているとよいと言われています。
ただし前にも述べたように1時間程度の運動であれば「水」でも十分であり、反面、塩分や糖分はむしろ摂り過ぎが心配されることもあります。
塩分や糖分の補給は、状況に応じて上手に補給するようにしましょう。
ドリンクの種類
運動・スポーツ時の水分補給のためには、水以外にもさまざまなドリンクが登場しており、またそれを実際に活用している人も多いと思いますが、それぞれ本当に水分補給として適しているのでしょうか?
清涼飲料水
喉が渇いたときに飲むジュースや炭酸飲料はおいしいものですが、水分補給にはあまり適していません。
運動の後には糖分4~8%の飲み物を飲むと良いと言われますが、これはあくまでも1時間を超えるような激しい運動をした場合です。
飲み過ぎると糖分の過剰摂取になる恐れもありますので注意しましょう。
お茶
お茶は糖分が含まれておらず、水に比べて飲みやすいとして水分補給に活用している人も多いかもしれません。
お茶にもさまざまな種類があり、例えば緑茶のようにカフェインが含まれたものは利尿作用が懸念されます。
麦茶であればそれほど問題はありませんが、激しい運動の際には塩分などの補給も心がけましょう。
スポーツドリンク
水分補給のためのスポーツドリンクも数多く登場しています。スポーツドリンクというくらいだから当然スポーツの際に適していると思われがちですが、少し注意も必要です。実際に飲んで「甘い」と感じる人も多いように、スポーツドリンクには多くの糖分が含まれています。
市販のものを利用する場合には糖分や塩分の濃度を確認し、また状況に応じて水やミネラルウォーターで薄めてから飲むとよいと言われています。
水分補給のタイミングと量
運動・スポーツの際には、どのような飲み物で水分補給をするかだけではなく、どのように補給するかも大切です。ここでは、水分補給のタイミングや量について確認しておきます。
水分補給は運動前・運動中・運動後?
水分補給は、運動前・運動中・運動後のどのタイミングで行うのがベストなのでしょうか?
まず基本的なこととして、水は喉が渇く前に飲むということが大切です。
喉が渇いたと感じるときには体がすでに脱水気味になっているということであり、パフォーマンスも低下してしまっている可能性があります。
さらに、喉が渇いてからだと一度にたくさんの飲料水を飲んでしまいやすく、胃が重くなって腹痛が起こるなどといったことも考えられます。
ですから運動時の水分補給は、喉が渇く前に意識してこまめに行っていく必要があるのです。
特に1時間程度の運動を行う場合には、運動前・運動中・運動後のそれぞれのタイミングに、きちんと水分補給の時間を取るようにしましょう。
どのくらいの量を飲むか?
ではどのタイミングでどのくらいの量を補給すればよいのか。一般的には次のようなことが言われています。
- 運動前…運動をする30分前までに、250~500mlの水を飲んでおく
- 運動中…1時間で500~1000ml(20~30分ごとに150~200ml)を飲む
- 運動後…運動前後の体重変化の4分の3程度を補うように飲む
脱水症状に陥らないことはもちろん、運動・スポーツをより楽しく、よりよい状態で行うためにも、水分補給はとても大切です。
運動・スポーツ時の水分補給への意識をしっかりもちながら、健康的にスポーツをしたいですね。
まとめ
それでは最後に、スポーツと水分補給の関係をまとめておきます。
- スポーツ時には汗によって体の水分が失われ、スポーツパフォーマンスの低下や脱水症に陥る危険性がある
- スポーツ中の水分補給は基本的に水でよいが、場合によっては塩分や糖分が含まれた飲み物を活用するとよい
- 運動前、運動中、運動後のそれぞれに適量の水分補給をすることが大切
<参考文献>
公益財団法人日本スポーツ協会
(https://www.japan-sports.or.jp/)
環境省熱中症予防情報サイト
(https://www.wbgt.env.go.jp/)