体における水の3つの役割とは―血液・尿・汗と、体の水の関係
私たちの体のおよそ60%を占める、水。健康に過ごすためにはもちろん、生命を維持する上でも欠かすことのできないものです。
その役割は大きく、血液、尿、汗の3つです。
では、この3つの役割において水が具体的にどう関係しており、水が不足するとどうなってしまうのでしょうか?ここでは、私たちの体をめぐる水の役割について確認します。
目次
血液と水
血液とは
体の水の役割として、まず「血液」があります。血液は、血球(赤血球と白血球)と血小板、そしてそれらを浮遊させている血漿からなっています。この血漿成分のうち約90%を占めるのが「水」なのです。
血液が体の中で果たす役割には、次のようなものがあります。
- 呼吸によって取り込まれた酸素を運搬する
- 栄養を運搬する
- 代謝によって生み出された老廃物を運搬する など
どれを見ても、私たちが生きていく上で欠かすことができない役割であることがわかります。
水分不足と血液の異常
では、体内の水が不足すると、血液にどのような異常が生じるのでしょうか?
・サラサラ血液とドロドロ血液
「サラサラ血液」と「ドロドロ血液」といった言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。
「サラサラ血液」は流動性が高い状態を指し、健康な人の血液を特徴づける表現として用いられます。一方、「ドロドロ血液」は、赤血球の変形や白血球の粘着、血小板の凝集などにより、粘度が高くなっている状態を指します。とくに、高脂血症や糖尿病といった生活習慣病の方にこの「ドロドロ血液」が多いとされます。
血液がドロドロになる理由としては、動物性脂肪の多い食生活や喫煙、ストレスなどが挙げられます。そしてもう一つ、水分の不足も大きく関係してきます。
先述のとおり、血漿の約90%は水ですが、体内の水分量が低下することにより、血液中の血漿が少なくなって血球や血小板の割合が増加することから、粘度の高いドロドロの血液となってしまうのです。
・ドロドロ血液が引き起こす病気
では、ドロドロの血液はなぜよくないのでしょうか。
血液は酸素や栄養素、そして老廃物などを運搬する役割を担っています。しかし、粘度が高く流動性の低い血液は、こうした運搬作業を上手に行えなくなってしまうのです。
その結果、体の機能が正常でなくなるほか、重大な病気を引き起こす可能性もあります。
尿と水
尿とは
・老廃物を排出する尿
体の中の水は、「尿」としても重要な役割を担っています。
先ほど説明したように、血液は代謝によって生じた老廃物を集めて運搬します。これが腎臓に集められ、多量の水とともにろ過されて、尿として体外に排出されるのです。
成人が1日に排出する平均的な尿の量はおよそ1.2リットル。体の老廃物をきちんと排出するには、少なくとも0.5リットルの尿が必要とされています。
・体内の水を調整する尿
尿にはもう一つ、大きな役割があります。それは、体内の水分量を調整することです。
飲み物を多く摂ったときに尿の量が多くなる経験をした方も多いと思います。反対に体内の水分量が減少すると、腎臓が尿の量を減らします。これは、私たちの体が水分不足に陥らないための重要な仕組みなのです。
水分不足と尿の異常
体の中の水分量が少なくなると、腎臓は尿の量を減らします。
尿は、老廃物を体外へ排出する役割を果たすもの。その尿の量が減少すれば、それだけ老廃物が体内に溜まりやすくなってしまいます。その結果、体が疲れやすくなったり、循環がきちんと行われないことで体がむくみやすくなったりするのです。
また、尿とともに流れ出るはずの細菌が体内に溜まりやすくなり、膀胱や尿路の炎症が起こる可能性も高まります。
体内の水分量が不足気味かどうかは、尿の色を見ると分かります。尿の量が濃い黄色で泡立っているときは、尿の量が減少して濃縮されている可能性がありますので、水分補給を心掛けるようにしましょう。
汗と水
汗とは
最後に、体の中の水の役割として「汗」についてみておきましょう。
汗は皮膚の表面から分泌されるもので、およそ99%が水です。そして、体温を調節する役割を担っています。皮膚から水分を蒸発させる際に熱を放出することで、体温の上昇を防いでいます。
私たちは、体温が1℃上がっただけでも体の不調を感じ、2℃や3℃も上がれば日常の健康な生活を送ることが難しくなります。つまり、汗をかいて体温を下げることは、生きていく上でなくてはならない体の機能なのです。
水分不足と汗の異常
私たちは、運動をしたり、外気温が高かったりするときは、汗をかくことで体温を調節します。このとき水を飲まないでいると、「脱水症」の危険性が高くなります。
「脱水症」は、体内の水が不足している状態。また水分と一緒に電解質も失われ、体の機能がうまく働かなくなってしまうのです。
症状としては、次のようなものが現れます。
- 口の渇きや尿量の減少
- 全身倦怠感
- 頭痛
- めまい
- 嘔吐 など
私たちの体は、汗をかいて水分が多く失われると、それ以上の発汗をストップして、脱水を防ごうとします。それによって体温が急激に上昇し、意識障害を起こすこともあります。
目に見えて汗の量が増えたときはもちろんですが、発熱や軽度の運動などの際にも皮膚から水分が蒸発していますから、 意識して水を飲むことが必要です。
まとめ
最後に、体の中の水が果たす役割について確認します。
- 血液の大部分は水であり、酸素や栄養を運び、老廃物を集める役割を行っている
- 血液中の水分量が減少すると、粘度の高いドロドロの状態になり、体の不調や病気の原因となる
- 血液によって集められた老廃物は、尿として多量の水と共に体外に排出される
- 体内の水の量が減少すると、尿の量も減少し、老廃物が溜まりやすくなる
- 汗はその99%が水であり、体温を調整する役割を果たしている
- 汗をかいたまま水を補給しないと、脱水症に陥る危険性がある
参考文献
「『健康のため水を飲もう』推進運動」厚生労働省
(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html)
「熱中症環境保健マニュアル2018」環境省
(http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf)