お腹が冷える原因は?内臓型冷え症の改善方法
「手足は温かいのに、お腹だけが冷えている──」
そのような症状が続いているのであれば、それは「内臓型冷え性」なのかもしれません。
内臓型冷え性になると胃腸の機能が低下し、食べ物の消化や吸収がスムーズに行われなくなります。
また、腸は「免疫の要」とも呼ばれる重要な器官ですので、機能が低下すると感染症にも罹患しやすくなります。
「たかがお腹の冷えでしょ?」なんて放置をしていると、思わぬトラブルを招くことにもなりかねません。
今回は、内臓型冷え性の原因や症状、改善方法について解説していきます。
目次
お腹が冷える原因とは?
お腹が冷えてしまう原因にはさまざまなものが挙げられますが、それらは「急性の冷え」と「慢性の冷え」に分けることができます。
急性の冷えというのは、一時的にお腹が冷えている状態のことで、例えば次のような原因によって引き起こされます。
・外気の寒さ
・室内の冷房
・入浴後の湯冷め
・プール
・薄着
・水仕事 など
急性の冷えになると下痢や腹痛、冷感といった症状が現れることがありますが、それらは一時的ですぐに回復するのが特徴です。
一方、慢性の冷えというのは、長期間ずっとお腹が冷えている状態のことをいい、その原因は体質的または習慣的なものにあることが多いようです。
急性の場合と同様に下痢や腹痛、冷感といった症状が現れることがありますが、症状は他にもいくつかあり、それらが長引いたり繰り返したりして回復しづらいのが特徴です。
このように、慢性的にお腹が冷えて症状も長引いているような状態を「内臓型冷え性」と言います。
ここからは、この内臓型冷え性について話を進めていきます。
胃腸の弱り
内臓型冷え性の原因として最も考えられるのが「胃腸の弱り」です。
胃腸の全長は7~9mほどあると言われており、これは日本人の平均身長(約165cm)のおよそ5倍にあたります。
この7~9mほどある胃腸は、私たちが食事をすると「消化・吸収」を行うために一斉に動き出し、その際にはエネルギーを消費して熱を生み出します。
しかし、胃腸の働きが弱くなると熱を生み出しにくくなるのと同時に、胃腸の筋肉も徐々に弱まっていきます。
そうなると、胃腸付近の血流が悪くなり、さらなる冷えを招くことになります。
体の弱り
次に考えられるのが「体の弱り」です。
内臓型冷え性は、胃や腸といった局所的な弱りのほかに「体全体が弱る」ことによっても引き起こされることがあります。
体全体が弱るというのは、たとえば慢性的な疲労や先天的な虚弱体質、病気や老化による体力の衰えなどがこれにあたります。
体が弱ると全身を温める力も衰えるため、必然的にお腹(内臓)も冷えて「内臓型冷え性」を招くことになるというわけです。
内臓型冷え性の症状
内臓型冷え性になると、下痢や腹痛、冷感といった症状以外にも、以下のような症状が現れることがあります。
それぞれについて、見ていきましょう。
太りやすくなる
内臓(とくに胃腸)の働きは基礎代謝の大部分を占めているため、内臓が冷えて機能が低下すると消費カロリーが少なくなって太りやすくなります(体脂肪を蓄えやすくなります)。
また胃腸の機能が低下すると、食べ物に含まれている栄養の吸収もうまくできなくなり、代謝アップに必要な栄養が不足して、結果的に痩せにくい体となってしまうのです。
さらに内臓型冷え性になると、人によっては便秘になることもあり、その便秘が原因でお腹がポッコリとして太ったようなシルエットになることもあります。
婦人科系のトラブル
女性の場合、お腹周辺の臓器と言えば「子宮」も含まれることになります。
そのため、お腹が冷えるということは、同時に子宮も冷えやすくなることを意味しています。
子宮が冷えると生理痛がひどくなったり、生理不順が起きたりするだけではなく、子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣嚢腫といったさまざまな婦人科系のトラブルを招くことにもなりかねません。
免疫力の低下
腸は「免疫の要」とも呼ばれる重要な器官で、体内の免疫細胞の約7割は腸に存在しています。
つまり、腸は人体最大の免疫システムを司っているため、腸が冷やされると免疫細胞(リンパ球)の働きが弱まり、免疫力が大きく低下することになるのです。
具体的には、腸内温度が35度以下になると免疫細胞の働きが弱まって、風邪やインフルエンザ、アレルギー症状、がんのリスクが高まると言われています。
お腹の冷えの改善方法
内臓が冷えると、血行不良によって機能が低下し、さらなる冷えを招いてしまいます。
まさに、冷えが冷えを呼ぶ悪循環の状態です。
本格的な悪循環に陥る前に、できるだけ早く改善させましょう。
腹巻をする
お腹の冷えと言えば腹巻、なんとも安直な感じは否めませんが、ある意味で伝統的な必勝法とも言えます。
着けておくだけで一日中ずっとお腹を温めてくれますので、内臓型冷え性にはピッタリです。
腹巻をすることで、熱の産生量が多い「肝臓・腎臓・腹筋」の働きを促して代謝を良くすることに繋がり、かなりの熱が産生されるようになります。
最近の腹巻は、シックなデザインからカジュアルで可愛いデザインのものまで幅広く、ファッション感覚で気軽に着けることができます。
また、腹巻つきパンツ(ヒップ腹巻)や、カイロ用ポケットつき腹巻など、機能がアップした進化版の腹巻も販売されているようです。
腹筋を鍛える
人間の体にもともと備わっている「自然の腹巻」といえば、腹筋です。
腹筋を鍛えると腹筋自体が温められるのと同時に、腹筋に包まれている「胃腸・肝臓・胆のう・膵臓・脾臓・腎臓・副腎・子宮・卵巣」などの内臓も一緒に温めることができます。
仰向けになった状態でおこなう腹筋運動が一般的ですが、筋力のない人は難しいかもしれません。
そのような方には「アイソメトリック運動」がオススメです。この方法だと筋力のない人でもできますし、いつでもどこでも、そして座ったままでも行うことができます。
アイソメトリック運動は、同じ部位を鍛える場合でもやり方はさまざまですが、ここではその一つをご紹介します。
【腹筋を鍛えるアイソメトリック運動】
①:背筋を伸ばした状態でイスに座る
②:両手を太ももの上に置いて、下方向に力を加える
③:逆に太ももはその力を跳ね返すように、上方向に力を入れる
④:腹筋を意識しながら②③を同時に行う(1秒1回のプッシュを10秒間)
⑤:次に両腕をクロスさせた状態で、②③を行う(1秒1回のプッシュを10秒間)
⑥:②~⑤を1セットとして、3セット行う
白湯を飲む
体の内側から温める方法としては、温かい食べ物を食べたり、温かい飲み物を飲んだりすることも有効です。
しかし、胃腸が極端に弱っている場合には、流動食であっても食べ物を受け付けないときがあります。
そのような場合であっても、白湯(さゆ)なら胃腸にほとんど負担を与えません。
また、カフェインや人工甘味料などの食品添加物も含まないので、いつでも気にせずに飲むことができます。
身近で簡単に作れるということもオススメのポイントでしょう。
さいごに
お腹の中には「胃、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、胆のう、膵臓、脾臓、腎臓、副腎、子宮、卵巣・・・」といった、人体の臓器のほとんどが含まれています。
これだけ多くの臓器が含まれているお腹が慢性的に冷えているということは、やはりそれだけの健康リスクがあるといってもよいでしょう。「冷えは万病のもと」、この言葉は内臓型冷え性のためにある言葉だといっても言い過ぎではないかもしれません。
最近では「腸活」という言葉の他に、「温活」や「腸温活」といった言葉も現れ、メディアなどでも多く取り上げられています。お腹の冷えを改善するには、こういった取り組みも参考になるかもしれませんね。
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参考文献
クラシエ「Kampoful Life|お腹が冷たい!お腹が冷える!お腹の冷えに効果のおすすめ対策とスパイス」
https://www.kracie.co.jp/kampo/kampofullife/body/?p=7125
湧永製薬株式会社「わくわく健康情報館|「冷え」からおこるやせない体の仕組み」
http://www.wakunaga.co.jp/health/success/17.html
EPARK「お腹が冷えるのはなぜ?冷え体質の改善が腹痛・下痢・風邪の予防に」
https://mitsuraku.jp/kiji/stomach-cold
吉兆堂薬局「婦人科系のお悩みと「下腹部の冷え」との深い関わり」
https://kicchodo.com/hujinka-shitabara-hiesyou-2/
ウェザーニュース「大腸専門医が「ホット」を飲む理由」
https://weathernews.jp/s/topics/202203/310275/
書籍「女医が教える冷え性ガールのあたため毎日」土井里紗 監修
書籍「お腹を温めれば病気にならない」石原結實 著