アロマテラピーとはどんなもの?期待できる効果や実践方法について | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

アロマテラピーとはどんなもの?期待できる効果や実践方法について

花の香りは、私たちを優しい気持ちにしてくれます。また、森林の樹木の香りはストレスを和らげ、リラックスした状態にしてくれます。香りは見ることができませんが、たしかに存在し、私たちの心身に大きな影響を与えていると言えるでしょう。この香りを「療法」に活かしたものが、アロマテラピーです。

アロマテラピーは、一部の人たちの間では「香水をつけること」と同じような位置づけで捉えられていることがあります。しかし、推奨されているやり方を正しく行うことで、精神を安定・集中させたり、体の不調を緩和したりすることもできると言われています。心身のちょっとした不調を自然の力で癒したい、そう考える人にとってアロマテラピーはピッタリな方法なのかもしれません。

今回はアロマテラピーについて解説をしていきます。

アロマテラピーとは

アロマテラピーとは、植物の香りや成分を使って心身の治癒をはかる療法のことです。自然療法や植物療法の一種でもあり、日本語では「芳香療法」と訳されることもあります。

アロマテラピーでは「精油(エッセンシャルオイル)」と呼ばれる、香り高い植物抽出オイルを使用します。このオイルは、植物が持っている有効成分の凝縮液のようなもので、これを塗布・吸入・吹きつけることによって、心身の不調を癒したり、美容や生活シーンに役立てることができるのです。

ちなみに「アロマテラピー」という言葉は、「Aroma(香り)」と「Therapy(療法)」を組み合わせた造語で、フランスの科学者であるルネ=モーリス・ガットフォセによって1937年に生み出されました。そこから時が流れ、ジャン・バルネ(フランス)や、マルグリット・モーリー(オーストリア)、ロバート・ティスランド(イギリス)らの評価や働きもあって、アロマテラピーはたくさんの国々に広がっていきました。

日本でアロマテラピーが認知されるようになったのは1985年頃からで、ロバート・ティスランドの著書「The Art of Aromatherapy(香療法の理論と実際)」が大きなきっかけとなったと言われています。

どのような効果が期待できるか?

期待できる効果は使用する精油によって異なりますが、アロマテラピーを大枠で捉えた場合、次のような効果(作用)が期待できます。

【精神面に作用する】
精油には、心の緊張をほぐしてストレスを緩和したり、思考をクリアにして集中力を高める効果があると言われています。また、鬱状態を緩和して、明るくポジティブな気持ちを取り戻すなど、精神面に作用すると考えられています。

【自然治癒力を高める】
人体にはホメオスタシスと呼ばれる力が備わっています。これは「恒常性維持」とも呼ばれ、体温や呼吸、血圧、ホルモンバランスなどを一定に保とうとする力です。精油にはホメオスタシスを助ける働きがあり、自然治癒力を高めると言われています。

【不定愁訴を改善する】
不定愁訴とは自覚症状があるにもかかわらず、検査をしても原因が特定されない状態です。代表的なものとしては、頭痛や倦怠感、不眠、冷え性、肩こりなどが挙げられます。精油には鎮静作用や抗菌作用といった薬理的な作用があるため、病院へ行くほどではないけれど、なんとなく感じている体の不調(不定愁訴)を和らげたい場合に役立ちます。

【美容をサポートする】
精油は皮脂やホルモンバランスを整えてくれるので、肌トラブルを抑え、美肌作りに役立ちます。また、肌にヤケドや傷を負った場合は、細胞修復作用のある精油を使うことで、回復の手助けもしてくれるのです。さらに、体重や体脂肪を気にされている方は、体内浄化作用がある精油や、食欲抑制作用のある精油を使用することで、ダイエットの補助にも役立ちます。

【快適な暮らし作りに役立つ】
精油の種類によっては、虫よけやペットのグルーミングに適したものもあります。また、除菌・消臭作用のある精油を使えば、お掃除スプレーや消臭スプレーを作ることもできるため、ハウスキーピングアイテムとしても役立ちます。

香りの分類

精油は花や葉、種子、果皮、樹皮などから抽出された芳香物質です。原料となる植物の種類は約3000種ですが、精油として流通するものは約200種と言われています(一説では200~300種以上とも)。

ここでは一つ一つの精油の紹介は割愛し、大まかな香りの分類(7タイプ)について説明します。

フローラル系
花から抽出した精油で、甘く華やかな香り
・カモミール・ジャーマン
・カモミール・ローマン
・ジャスミン・アブソリュート
・ゼラニウム
・ネロリ
・ラベンダー
・ローズ など

柑橘系
気分を高揚させる、爽やかな香り
・グレープフルーツ
・スイートオレンジ
・ベルガモット
・マンダリン
・メリッサ
・レモン
・レモングラス など

ハーブ系
薬草のようなスッキリとした香り
・クラリセージ
・スイートマジョラム
・タイム
・パルマローザ
・フェンネル
・ペパーミント
・ヤロウ
・ローズマリー など

樹木系
森林浴をしたような爽やかな香り
・サイプレス
・シダーウッド
・ジュニパーベリー
・ティートリー
・パイン
・プチグレン
・ユーカリ
・ローズウッド など

樹脂系
樹脂から抽出した精油で、お香のような香り
・フランキンセンス
・ベンゾイン
・ミルラ

エキゾチック系
ほのかに甘く、大人っぽさを感じさせる香り
・イランイラン
・サンダルウッド
・パチュリ
・ベチバー など

スパイス系
香辛料由来の刺激的な香り
・クローブ
・シナモンリーフ
・ジンジャー
・ブラックペッパー など

暮らしの中での実践方法

アロマテラピーを実践する方法はいくつかあります。しかし、それらすべてを暮らしに取り入れる必要はありません。精油は使いすぎても効果はありませんので、適量を守って実践しやすい方法を取り入れるとよいでしょう。

【室内に香りを拡散させる方法】
・お湯を入れたボウルに精油を数滴落とし、湯気を室内に拡散させます。
・アロマライト、ディフューザ、アロマポットを使ってもよいでしょう。

【鼻や口から吸入する方法[※] 】
・お湯を入れたボウルに精油を数滴落とし、湯気と一緒に精油を吸入します。
・ボウルと頭部をバスタオルで覆うと、より効果的に吸入できます。

【アロマバスに入浴する方法】
・精油をバスタブのお湯に数滴落とし、かき混ぜてから体を浸します。
・すきま時間に洗面器を使って、足浴・手浴をするのもよいでしょう。

【温湿布や冷湿布で肌に浸透させる方法】
・洗面器に温水か冷水を入れてから、精油を落とし、表面に浮いた精油をすくい取るようにタオルを浸して絞ります。
・温湿布を冷めないようにするには、タオルの上からラップを貼り、そのさらに上から乾いたタオルで覆うと保温されます。

【アロママッサージで肌に浸透させる方法】
・ベースオイルで希釈してから、顔や体をマッサージします。
・全身をマッサージすることで、精油の吸収は他の方法よりも多くなります。

【アロマクラフトを作って行う方法】
・精油と自然素材を使って、石鹸やシャンプー、ローション、ハンドクリーム、エアフレッシュナーなどを作ります。
・携帯できるため、旅行先でもアロマテラピーを行うことができます。

※. 精油成分が目の粘膜を刺激することもあるので、吸入中は目を閉じましょう。

精油の選び方

精油選びで大切なポイントは2つあります。

① 品質の高いものを選ぶ
精油の多くを輸入している日本では、精油は雑貨扱いであり、医薬品の扱いではありません。そのため、医薬品レベルの厳格なチェックがなく、品質の確認(見極め)はご自身でしっかりと行う必要があります。

初心者でも分かりやすい確認方法としては、以下のものが挙げられます。
・100%天然で純粋かどうか
・植物の学名が明記されているかどうか
・原産国が明記されているかどうか
・価格がおかしくないか

「価格」は、精油ごとに異なるのが普通です。たとえば、あるブランドのいくつかの精油がすべて同じ価格で販売されている場合、品質調整がされている可能性もあるため、より慎重に確認を行う必要があります。また、レビューや口コミでよい評価がされているものであっても、一般的な価格よりも極端に安価なものは、なるべく避けた方が無難でしょう。

② 自分が心地よく感じるものを選ぶ
精油にはそれぞれ薬理効果があり、その作用を選ぶときの基準として考えるのは良いことです。しかし、その基準によって選ばれた精油が、自分の好みの香りではない場合、その香りをずっとかぎ続けることになります。

アロマテラピーの目的の一つとして「リラックス」が挙げられますが、使用する精油が好みの香りでない場合、リラックスを得ることができず、場合によってはストレスを感じてしまうことも考えられます。同じ作用を持っている精油は複数ありますので、まずはそれらをピックアップし、その中で香りが心地いいと感じられるものを選ぶようにしましょう。

使用上の注意

精油は100%天然のものであっても、使用方法を誤れば体に害を及ぼすことがありますので、注意が必要です。また、使用後の保管においても注意が必要で、それを怠ると高価な精油が台無しになるだけではなく、思わぬ事故を招く危険性もあります。

以下の点に注意して、正しい使用と保管を心掛けましょう[※]。

※. 注意事項は下記のもの以外にもたくさんありますので、初心者がはじめてアロマテラピーを行う場合には、専門家に立ち会ってもらった方が良いでしょう。

肌に塗る際は、必ず精油を薄めること

精油は植物の成分を凝縮した液体で、非常に強い力を持っているため、基本的には肌に直接塗ることはできません。顔のスキンケアや、体のマッサージに使用する際は、ベースオイル(キャリアオイル)[※1]で薄めてから使用しましょう。希釈率については商品の説明書に従うことが前提ですが、目安としては「体用は1~2%」、「顔用は0.5~1%」ぐらいがよいと言われています [※2]。

※1. ベースオイルは、ホホバオイルやローズヒップオイルなど様々な種類があり、その特性も異なります。
※2. 一般的に精油1滴が0.03mL~0.05mLですので、5mLのベースオイルに対して、1滴の精油を加えれば「0.6~1%の希釈率」になります。

肌に塗る前にパッチテストを行なうこと

精油とベースオイルをブレンドしたら、次に「パッチテスト」を行なって下さい。[※]パッチテストとは、塗布する液体やクリームなどが、自分の肌に合うかどうか(害を及ぼすかどうか)を確認するためのテストです。

ブレンドされたオイルを腕の内側に塗り、24~48時間放置して様子を見ます。塗布した部分が、かゆくなったり、赤くなったり、ヒリヒリしたりするようなら、肌との相性がよくありませんので、使用を中止して下さい。

※. 本格的なパッチテストは皮膚科にご相談下さい。   

独断で内服しないこと

精油の芳香成分は飲むことで消化管からも吸収することができます。実際、フランス式のアロマテラピーでは、医師による医療行為として内服を行うこともあるようです。しかし、独断での経口摂取は健康被害に繋がる可能性があり、高いリスクを伴うものですので、医師の監督下以外で内服を行うことは絶対におやめください。

人や条件によっては使用を控えること

精油の薬理作用は、人や条件によっては体に害を及ぼすこともあります。
以下のリストにも、禁忌事項はありますので、使用前には専門家や医師に確認した方がよいでしょう。

【子供に使用してはいけない精油[※]】
・ローズマリー
・レモングラス
・ペパーミント
・タイム
・ジンジャー など

※. 5歳以下はすべての精油、6~10歳でも室内芳香にとどめた方がよいと言われています。

【生理中は注意が必要な精油】
・スイートマジョラム
・フェンネル
・ミルラ
・シナモンリーフ
・クローブ など

【妊娠中は使ってはいけない精油】
・ラベンダー
・ローズマリー
・ユーカリ
・ペパーミント
・ゼラニウム など

【高血圧の人は使ってはいけない精油】
・ジャスミン・アブソリュート
・タイム
・ローズマリー
・ペパーミント
・ユーカリ・グロブルス など

【てんかんの人は使ってはいけない精油】
・フェンネル
・ローズマリー
・シダーウッド
・ペパーミント
・ユーカリ など

【光毒性のある精油[※]】
・ベルガモット
・グレープフルーツ
・スイートオレンジ
・マンダリン
・レモン など

※. 塗布後、日光に当たることで、アレルギーや肌荒れ、シミなどのトラブルを起こすことがあります。

正しく保管して期限を守る

精油は光や熱、空気、湿気の影響を受けると成分が変質してしまいます。そのため、使用後はすぐにキャップを完全に閉め、高温多湿を避けた冷暗所に保管するようにしましょう。また、精油には使用期限があり、それを超えると使用に適さない品質になります[※]。精油を購入したら、最初に使用期限をチェックして、開封後はなるべく早く使い切って下さい。

この他、精油は引火性の液体のため火気に注意して保管する必要がある点や、プラスティック製の保管容器を使用すると容器が溶けてしまうことがある点も、あわせて覚えておきましょう。

※. 一般的な精油の使用期限(目安)は1~2年ですが、柑橘系のものは劣化が早いため、1年未満で使い切るようにした方が良いでしょう。なお、精油をベースオイルと混ぜたものは、1~2か月以内に使い切るようにして下さい。

さいごに

アロマテラピーは、ご自身の不調や気分を改善するだけではなく、家族間あるいは夫婦間でのスキンシップやコミュニケーションの促進にも役立ちます。また、リラックスがもたらされることで心の余裕が生まれ、お互いのミスや欠点に対しても過敏に反応することは少なくなるでしょう。

「最近、家族との親睦が減ったなぁ」
「パートナーとの関係がギスギスしているなぁ」

このように感じている方は、アロマテラピーでお互いの関係性に変化を加えてみるのもよいかもしれません。

高品質の精油はそれなりに高価で、購入時にためらわれる方もいるかもしれませんが、精油の一滴が家族やパートナーとの円満な関係をもたらしてくれるのであれば、意外と安い買い物なのかもしれません。


参考文献

一般社団法人日本フィトセラピー協会「フィトセラピーとは」

https://japhy.or.jp/about/

日本アロマ環境協会「アロマを楽しむ - アロマテラピーとは」

https://www.aromakankyo.or.jp/basics/introduction/

におい・かおり環境学会誌(46巻6号)「佐々木薫|ハーブ・アロマテラピーの視点から,かおり思考の変遷をたどる」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/46/6/46_398/_pdf

アロマスクール ラヴァーレ「精油(エッセンシャルオイル)とは?」

https://www.lavare.co.jp/aroma/about/精油エッセンシャルオイルとは?.html

株式会社森林生活「エッセンシャルオイル製品の注意事項」

https://shinrin-s.co.jp/?mode=f10

株式会社斎藤容器「アロマの容器は何を選べばいい?注意点などをご紹介します」

https://www.saito-youki.co.jp/news/detail.php?id=84

書籍「アロマテラピーガイド」山村浩子 著

書籍「いちばん詳しくて、わかりやすい!アロマテラピーの教科書」和田文緒 著

書籍「わかりやすい!覚えやすい!アロマテラピー基本講座」重松浩子 著

書籍「アロマテラピー図鑑(最新3訂版)」佐々木薫 監修