介護食ってどんなもの?高齢者のための食事作りの基本とポイント | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

介護食ってどんなもの?高齢者のための食事作りの基本とポイント

私たちの生活において、食事は大切な楽しみのひとつです。しかし、年齢を重ねるとともに、食べる機能は衰えていきます。

「高齢になってもおいしい食事を楽しみたい」という思いは、誰もが抱く願いです。特に高齢化が進む現代社会では、その願いは社会的なニーズとして広がりを見せており、将来の自分や家族のために介護食を学ぼうとする若い世代も増えてきました。

「介護食ってどんなもの?」「どうやって作ればいいの?」と疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
今回は、介護食の基本的な考え方や種類、作り方のポイントなどを解説していきます。

介護食とはどんなもの?

介護食とは、高齢者施設や家庭で提供される、誤嚥[※]と栄養障害を防ぐために工夫された高齢者向けの食事のことです。

広義においては、病気やケガで食べることに支障がある人や、発達障害のある人なども、その対象に含まれることがありますが、一般的には「食べることに支障がある高齢者」が対象となることが多いようです。

この記事でも「介護食 = 食べることに支障がある高齢者向けの食事」として、話を進めていきます。

※. 食べ物や飲み物などが誤って気管に入ることを誤嚥(ごえん)といいます。飲み込む力が弱まると誤嚥が繰り返され、それによって口の中の細菌などが肺に入り込みやすくなります。肺に細菌などが入り、炎症を起こした状態を誤嚥性肺炎といい、高齢者の主要な死亡原因の一つとして知られています。

介護食の3つの特徴

介護食には、主に以下の3つの特徴があります。

舌で押しつぶせる程度の硬さ
高齢者にとって、柔らかすぎる食事は食べ応えがなく、満足感が得られない場合があります。そのため、ある程度の硬さを保ちつつ、歯が弱くても口の中で潰せる程度の硬さが最適です。

食塊(飲み込みやすい塊状)になっている
これは、食べ物を口に入れた後の食塊形成を助ける役割があります。また、高齢者にとって、はっきりとした食べ物の形は食欲をそそる要素となります。

口からのどにかけて滑らかで移送しやすい
油脂などを使って食材をつなぎにすることで、のど越しがよくなり、誤嚥を防ぐ効果があります。とろみ剤も、食事の味を変えずに飲み込みやすくするのに役立ちます。

介護食に求められる条件

介護食には、以下の条件が求められます。 

【安全性】
誤嚥を防ぐことが最優先事項です。飲み込みにくい食材を理解し、誤嚥を防ぐための食形態や食べさせ方を工夫する必要があります。

【栄養価】
栄養バランスを考慮し、エネルギー、栄養素、水分を十分に摂取できるよう配慮する必要があります。必要に応じて、栄養補助食品などを活用することも重要です。

【嗜好性】
見た目や香りにも配慮し、食欲をそそる、おいしい食事であることが大切です。従来の「どろどろの流動食」や「刻み食」は、食欲をそそらないという問題点がありました。

介護食は、単に食べ物を提供するだけではなく、食べ方や環境にも配慮することで、高齢者のQOL向上に貢献することができます。

介護食の形状

介護食は被介護者の「食べる機能の低下レベル」に合わせ、様々な形状で作られます。

主な形状区分は、以下の通りです[※]。

ミキサー食 食材をミキサーにかけて液体状にしたもの
ゼリー食 ミキサー食にゼラチンなどを加え、ゼリー状に固めたもの
とろみ食 食材をミキサーにかけ、とろみ剤でとろみをつけたもの
ペースト食 食材をすり鉢やフードプロセッサーでペースト状にしたもの
ピューレ食 食材を煮たりミキサーにかけた後、裏ごしをして滑らかにしたもの
きざみ食 食材を細かく刻んだもの
極きざみ食 きざみ食よりもさらに細かく刻んだもの
超きざみ食 極きざみ食よりもさらに細かく刻んだもの
ソフト食 見た目は一般食とほぼ同じで見分けがつかないが、噛むと柔らかいもの

※. これらの区分は、介護食を提供する施設などによって呼び名が異なることもあります。

介護食の選び方のポイント

市販の介護食を購入する際は、以下の点を確認するとよいでしょう。

①被介護者の状態
・箸で食品をつかむ動作が困難かを確認する
・箸でつかんだ食品を口の中に入れる動作が困難かを確認する
・噛む動作が困難かを確認する
・飲み込む動作が困難かを確認する

②被介護者の状態とのマッチング
・食品パッケージに食べやすさについての説明がないかを確認する
・食品パッケージに「ユニバーサルデザインフード」のマークが、付されていないかを確認する(後述)
・食品パッケージに「スマイルケア食」のマークが、付されていないかを確認する(後述)

③食品の栄養
・エネルギー量が適切かどうかを確認する
・たんぱく質や食物繊維など、栄養バランスは適切かを確認する
・食塩相当量が多くないかを確認する
・食品添加物が多くないかを確認する

④被介護者の好み
・購入前に、被介護者に商品パッケージの画像などを見せ、食べ物の好みを確認する

⑤手間や調理時間
・調理工程が多く、作るのに時間がとられる商品かを確認する
・被介護者が作る際にパッケージを開封できるつくりになっているかを確認する
・被介護者が食後の後片付けをしやすいかを確認する

⑥購入のしやすさ
・高額すぎず、安定的に購入できるかを確認する
・近隣の店舗でも手に入るかを確認する

食品選びがラクになるマーク

上記のポイント①~⑥のうち、もっとも見極めが困難なものが「②被介護者の状態とのマッチング」ではないでしょうか?

被介護者の状態とマッチングするかどうかは、一度購入して食べてみないと分からないというのが実際かもしれません。しかし、何らかの目安があれば、ある程度のあたりをつけて購入することができます。その目安となるのが、日本介護食品協議会の「ユニバーサルデザインフード® [※]」マークと、農林水産省の「スマイルケア食」マークです。

この二つは、これまで食品メーカーごとにバラバラだった「噛みやすさ、飲み込みやすさ」などの指標を統一し、共通した規格に則って付されるマークです。規格が二つ存在しているため、厳密には「統一された」とは言えませんが、かなり集約されて分かりやすくなったことは間違いないでしょう。このマークを参照して食品を購入すれば、ミスマッチが抑えられ、食品選びもラクになります。

マークが表している意味については、以下のサイトで説明されています。

日本介護食品協議会|ユニバーサルデザインフードとは
https://www.udf.jp/outline/udf.html

農林水産省|スマイルケア食(新しい介護食品)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/seizo/kaigo.html

※. 介護食だけでなく、健常者が食べる一般食も対象になっているものがあります。

介護食を作る際のポイント

介護食は市販品だけでなく、ご家庭でも作ることができます。基本的なポイントを押さえれば、普段のお料理を介護食にアレンジすることも可能です。

ご家庭で介護食を作る際には、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。

【調理方法】
・細かくきざむ
・すりおろす
・煮込んで柔らかくする
・蒸して柔らかくする
・必要以上に柔らかくしない(咀嚼の重要性)
・とろみをつける(とろみ調整剤の使用)

【食欲をそそる演出】
・季節感のある彩りにする
・成形して盛り付ける(ドロドロのまま出さない)
・美しい容器に盛り付ける
・おいしそうに見える照明を使う

【食中毒に対する注意】
・高齢者は免疫弱者であることを念頭におく
・調理前に爪切り、手洗いを徹底する
・調理器具や食器などは滅菌したものを使う
・普通食よりも食材の鮮度に気をつける

【栄養面】
・栄養のバランスを考える
・水分だけでお腹が一杯にならないようにする(栄養不足に繋がる)
・抗酸化食品を取り入れ、老化の進行を遅らせる
・塩分の過剰摂取を避ける(塩味の代わりに出汁の風味を活用する)[※]

※. 年をとると味覚が衰えるため、濃い味付けを好むようになります。特に、塩味は極端に感じにくくなり、人によっては「12倍」も感じにくくなることがあると言われています。

頑張りすぎないことが大切

「おいしい手料理を食べさせてあげたい」と考え、毎日介護食を手作りする人の中には「介護疲れ」に陥る人もいるようです。

介護食は、毎日必ず手作りをする必要はありませんし、すべての料理を手作りにする必要もありません。 コンビニ食品も含めた市販品の活用を検討し、ときどき「手抜き」をすることも、長期的な介護を行う上では大切です。

また、まな板や食器にラップをかけて使用し、使用後はラップを捨てて洗い物を少なくする、といったライフハックも有効ですので、介護経験者からいろいろ教えてもらうとよいでしょう。そして、ゆくゆくは時短をかなえる調理ツールも取り揃えていき、さらなる効率化をはかりましょう。

時短調理ツールの代表格といえば、ミキサーやフードプロセッサーが挙げられますが、実は「整水器」もその一つです。整水器から生成される「電解水素水」には優れた抽出力があり、食材の味を「しっかり」かつ「スピーディー」に引き出してくれます(出汁どりのほか、アクぬきにもオススメです)。

介護食づくりに役立つツール

介護食を作る際、適切なツールを使用することで調理が格段に楽になります。
あると便利なツールは、以下のとおりです。

スケール(電子はかり) とろみ剤などは正確に計量する必要があるため、0.1g単位で計量できるスケールが役立ちます。
フタつき耐熱ガラス容器 電子レンジで野菜のピューレを作る際、フタつきだとラップをかける手間が省けます。
ラップ まな板やテーブルなどに直接貼り付けることで、洗い物が少なくなり、手間が省けます。
キッチンバサミ 包丁で切りにくいものを切るときや、長い麺類を容器の上で切るときなどに使います。
マッシャー ボイルしたカボチャやジャガイモを潰すのに使います。
柄のついているこし器 ポタージュなどの汁物を、より滑らかにする際に使います。
裏ごし器 マッシャーで潰したジャガイモなどを裏ごしすることで、より滑らかに仕上げられます。
木製のヘラ 裏ごしをする際に力が入りやすく、安定感があります。
すり鉢&すりこぎ 魚介類をすり身にしたり、練ったり、山芋などをすりおろす際に使用します。すり加減を確認しながらすることができるので便利です。
おろし金 ショウガや大根などを少量おろす際に役立ちます。
ミキサー 液体と固形を均一に攪拌(かくはん)することができるため、ジュースやスープづくりに最適です。
フードプロセッサー(ミルサー) 液体を含めなくても「きざむ、混ぜる、練る」などが行えます。すり鉢などでは処理しきれないものをした処理する際に重宝します。
ハンドミキサー(ハンディーフードプロセッサー・バーミックス) 深めのカップに食材を入れてハンドミキサーをかけます。デンプン系の料理はきれいなペーストに仕上がります。
整水器 整水器から生成される電解水素水は、食材の味を引き出す抽出力に優れているため、時短で出汁を取るときなどに重宝します。
クリーマー 卵の白身と黄身を混ぜ合わせたり、少量のホイップクリームを作るのに使います。
茶せん とろみ剤などを加える際、粘土を確認しながらかき混ぜることができるので便利です。
蒸し器 食材を蒸して柔らかくするだけでなく、一度崩した食材を熱を加えると固まる食材と一緒に熱を通し、再成形する際にも使います。
圧力鍋 短時間で固い食材(筋肉、ゴボウ、乾物類など)を柔らかくできるのが便利です。3リットルほどの小サイズのものが使いやすくオススメです。
電子レンジ 蒸し器と同じような機能ですが、少量のときや急ぐとき、手間を省きたい時などに便利です。また、食中毒の防止にも役立ちます。
オーブントースター 蒸したものを焼いたように見せたい時に使用します。
かき氷器 冷凍したペースト食材を削って食べるときに使用します。
型抜き(抜き型) 野菜の飾り切りなどを簡単に作れ、盛り付けを華やかにするのに役立ちます。
ゼリー型(プリン型) ゼリーなどを作る際に使用するほか、ペースト状のものを立体的に盛り付ける際にも役立ちます。
アイスクリームディッシャー ペースト状のものをきれいに形作り、食べやすいように盛り付けるのに使います。
使い捨て絞り袋(絞り出し袋) すり身の成形や、ピューレの盛り付けに使います。
小分け冷凍容器 ピューレやソースなどの作りおき冷凍保存をする際に使います(フタつきなら重ねられて便利です)。
シリコン製のヘラ 小分け冷凍容器に詰める際に役立ちます。また、適度にしなることで、容器の中のものを練ったり、混ぜたりするのに便利です。
小さなワイングラス ワイングラスに流動状の料理を入れると、見栄えがよくなります。

上記のうち、ミキサーとフードプロセッサーは最も頻繁に使うツールですので、コンパクトで軽く、洗いやすいものを選ぶとよいでしょう。
また、これらのツールは、必ずしもすべてを揃える必要はありません。まずは基本的なものから揃え始め、必要に応じて追加していくとよいでしょう。

さいごに

介護食とは特別なものではなく、誰もが年齢を重ねる中で関わる可能性のある身近な食事です。介護食について学ぶことは、将来の自分や家族の健康を支えるだけでなく、さまざまな場面で役立つ貴重な知識となります。

たとえば、病気やケガで一時的に普通の食事が難しい時には、介護食の知識を「療養食」として応用することができます。また、赤ちゃんの「離乳食」を作る際にも、噛む力や飲み込む力を考慮する点で共通する部分が多く、介護食の知識が大いに役立ちます。

ぜひ皆さんも、汎用的に役立てることができる介護食の知識を学んでみてはいかがでしょうか。


参考文献

医療法人社団 白水会「誤嚥性肺炎」

http://www.hakusui-kai.jp/1-4.html

日経Gooday「若いときより12倍塩味を感じにくい高齢者」

https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/column/20/120300008/080300011/

書籍「市販介護食品に“もうひと手間”でつくる毎日の介護食レシピ」河出書房新社 出版

書籍「高齢者のQOLを高める食介護論」手嶋登志子 著

書籍「高齢者が喜ぶ食べやすいメニュー」成美堂出版 出版