胸焼けの原因と対策(後編)|セルフケアと予防方法について | 水と健康の情報メディア|トリム・ミズラボ - 日本トリム

胸焼けの原因と対策(後編)|セルフケアと予防方法について

胸焼けのセルフケア

すでに起きている胸焼けをセルフケアで緩和させる場合、以下の方法が挙げられます。
ただし、最良の方法は医療機関の受診であることを念頭に置いておきましょう。特に症状が強い人や頻繁に起きる人は、早めの受診をおすすめします。

水を飲む

水を飲むと食道粘膜にかかった胃酸をある程度洗い流す効果が期待できるため、応急処置として推奨されています。また、別の効果としては、胃の中の胃酸を薄めて、逆流時の食道粘膜のただれを抑える効果も期待されています。

ただし、胃に食べ物が入ってきたときに分泌される胃酸の量は500~700mLほどですので、これを薄めるには、かなりたくさんの水を飲まなければならず、現実的ではない(効果が薄い)という意見もあります。また、水の多飲は、胃の内圧を高めて胃酸の逆流を招きますので、胃酸を薄めることを目的として飲む場合でも、一回に飲む量はコップ一杯程度にした方がよいでしょう。水を飲む際は、水の温度にも注意が必要です。食道に炎症が起きていると、感覚神経は過敏になっていますので、「熱い、冷たい」といった温度刺激は症状を悪化させることがあります。常温の水か、人肌ほどの温度の白湯(さゆ)を飲むとよいでしょう。

牛乳を飲む

牛乳の成分には胃粘膜を保護する作用と胃酸を中和する作用があり、胸焼けの症状改善に効果があると考えられています。また、牛乳の成分の一つであるカルシウムには鎮静作用があり、ストレスによる下部食道括約筋の機能低下を抑え、胃の内容物の逆流を予防する効果も期待できます。ただし、冷たい牛乳や熱々のホットミルクは胃を刺激してしまいますので、少しだけ温めて飲むとよいでしょう。

市販薬を使用する

胸焼け対策として、市販薬(胃腸薬)を使用するという方法もあります。市販薬の主な効果は「胃酸の中和」や「胃酸の分泌抑制」で、症状の度合いにもよりますが、一時的に胸焼けを抑制します。ただし、市販薬は医療機関で処方される医療用医薬品(処方箋医薬品)とは効き目や作用が異なるため、逆流性食道炎などの病気を治療することはできません。服用しても症状が再発したり、おさまらない場合には、市販薬を飲み続けるのではなく、すぐに医療機関を受診してください。

睡眠時の体勢を変える

睡眠中の胸焼けに悩まされている人は、寝るときの体勢を変えることで、胃酸の逆流がおさえられ、症状が出にくくなる可能性があります。推奨されている体勢の一つが、体の左側を下にした体勢です。この体勢をとることで、胃の入り口が上を向くため、胃酸の逆流が起きにくくなります。

次に、上半身を少し高くしたベッドに寝ることです。上半身に傾斜をつけることで、重力を活用して胃酸の逆流を抑えることができます。傾斜角度の目安は15度ですが、体形の違いもありますので、自分にあった角度に調節してください。リクライニングベッドや傾斜枕(スロープピロー)の購入が難しい場合は、毛布などをたたんで敷布団の下に敷き、丁度よい傾斜をつけるとよいでしょう。

胸焼けの予防方法

胸焼けを予防する方法として、大前提として挙げられるのが「食生活の改善」です。また、それと同じくらい大切なものに「生活習慣の改善」も挙げられます。この二つをしっかり改善した上で、さまざまなストレッチや運動を取り入れると、より予防効果が高まるでしょう。

以下の内容を参考にして、取り組んでみてください。

胃に悪いものを食べない

当然ですが、脂肪分の多い食べ物(飲み物も含む)や消化に時間がかかる食べ物、刺激の強い食べ物、極端に冷たい(または熱い)食べ物は、できるだけ避けなければいけません。そのためには、食品の栄養成分表示の見方や、食品添加物の知識などを学んでおくことも大切です。また、胸焼けや胃の不調を引き起こす食品は、人によって異なることがあります。自分にとって何が胸焼けを起こす原因になっているのかを特定するために、食事日記をつけることをオススメします。

胃に良いものを食べる

ビタミンUを豊富に含む食べ物は、胃酸の過剰な分泌を抑えたり、胃の粘膜を保護する働きがあるため、適量を食べることはオススメです(キャベツ、レタス、アスパラガス、ブロッコリーなど)。また、消化酵素を豊富に含む食べ物も、胃での消化をサポートするため、適量を食べることはオススメです(ダイコン、ヤマイモ、ニンジン、ホウレンソウなど)。おろしにしたり、スムージーにして摂ることをオススメしますが、食材によっては適さないこともあるでしょう。その場合は、湯引きやスープなど、比較的、加熱時間が短い調理法にするとよいでしょう。

よく噛む

よく噛むことにはたくさんの効果があります。それらの効果が複合的に作用することで、逆流性食道炎や胸焼けを予防すると考えられています。

食べ物が細かくなる
よく噛むと食べ物が細かく砕かれるため、胃の負担が減って消化が促進されます。消化がスムーズに行われると、胃酸の分泌量も適切に調整され、過剰な分泌を抑えられます。

唾液の分泌が促進される
よく噛むと唾液の分泌が促進されます。唾液にはアミラーゼという消化酵素が含まれており、消化を助ける役割を果たしているのです。また、唾液には胃酸を中和する働きもあるため、その意味でも唾液をしっかり分泌させることは大切です。ちなみに、食後の消化をサポートする方法としては、ガムを噛むことも有効です。

過食を防げる
人が満腹感(脳にある満腹中枢からの信号)を感じるのは、食べ物を飲み込んでから約20分後だと言われています。早食いの人は、信号が出るまでの間に食べ物をどんどん食べてしまうため、満腹感を感じるころにはすでに過食になっています。過食は腹圧を高めるだけでなく、肥満にも繋がり、どちらも逆流を起こす原因です。しかし、よく噛むことで食事スピードが抑えられ、早食いによる過食を防ぐことができます。ちなみに、厚生労働省が推奨している噛む回数は、一口あたり30回以上です。

空気の飲み込みを防げる
食べ物と一緒にたくさんの空気を飲み込むと、胃が膨らんでゲップが出やすくなります。これは早食いの人によく見られる現象です。ゲップがでるときには、胃酸も一緒に逆流しやすくなるので、空気をたくさん飲み込むような早食いは避けなければいけません。噛む回数を増やせば、食事スピードが遅くなるため、早食いによる空気の飲み込みが抑えられます。

ストレスが発散される
よく噛むと脳内の「セロトニン(精神安定作用、幸福感、リラックス効果をもたらすホルモン)」の分泌量が増えるため、胸焼けの原因の一つであるストレスを緩和させる効果が期待できます。

食後すぐに寝ない

食後3~4時間以内は、未消化の食べ物が胃の中に残っている可能性があり、そのまま横になると逆流を起こしやすくなります。そのため、夕食は就寝時刻から逆算した時刻に摂るようにしましょう。また、夕食後に限らず、昼食後に仮眠をとる場合も同様に逆流のリスクがあるため、注意が必要です。仕事上どうしても仮眠をとる必要がある場合には、仮眠をとってから昼食を食べたり、昼食の量を少なくしたり、壁にもたれながら椅子に座って仮眠をとるなど、逆流をしにくくする工夫が必要でしょう。

姿勢を正す

デスクワークで前かがみの姿勢になっている人は、ポモドーロタイマーなどを活用して、ときどき姿勢に意識を向けるようにしましょう。また、キーボードの形状やディスプレイの位置などが、適切でないために姿勢が悪くなっていることも考えられます。スタンディングデスクやモニターアーム、エルゴノミクスキーボードなどを活用するのもよいでしょう。若者の場合、スマホ(SNS)の長時間使用が、ストレートネックを招く原因になっていますので、スマホのスクリーンタイム機能などを利用して使用時間を制限するようにしましょう。

ちなみに、スマホのSNSには依存性があり、脳の発達や認知機能に悪影響を及ぼすことが問題になっています。近年では、スマホの依存性を断つために、「デジタルデトックス」を行う人が増えています。

締めつけない服装にする

仕事で着用しているパンツ(スラックスなど)がきつく感じる場合には、「ウエスト総ゴムスラックス」などを検討してもよいでしょう。また、使用しているベルトの「幅」が大きい場合、座ったときに腹部をより圧迫しやすくなりますので、細めのベルトに変えてもよいでしょう。趣味でタイトな服装を着ている人は、いっそのこと服装のコーディネイトを一変して、「ゆるふわ系」のファッションを楽しんでみるのも、よいかもしれません。

ストレスを抑える

ストレスを解消する方法には、「睡眠の質を高めること[※]」や「しっかり入浴すること」、「アロマテラピーを行うこと」などがよく知られています。一方、あまり知られていない方法としては「腸の状態を整える」という方法が挙げられます。脳と腸は相互に関与していて、一方の状態が良くなると(悪くなると)、もう一方の状態も良くなる(悪くなる)関係にあります。これを「脳腸相関」といいます。この関係性を利用することによって、腸から脳へアプローチして、ストレスを緩和することもできるのです。

以下の記事では、脳腸相関について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【脳腸相関とは?脳と腸の関係性について解説】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/30283/

※. 睡眠不足は、胃酸の分泌を増加させるため、質のよい睡眠を十分にとる必要があります。

禁煙する

禁煙を推奨している書籍には、タバコによって黒く変色した肺の写真がよく載せられています。少しショッキングな写真ですが、この写真を見たことによって、禁煙に踏み切れた人も多くいるようです。どうしてもタバコを吸いたくなる人は、タバコを一箱買い、それに肺の写真を張り付けておくのも効果的です。

運動をする

運動は肥満や糖尿病を予防し、ストレス発散にも役立ちます。肥満、糖尿病、ストレスは、いずれも胸焼けの原因ですので、運動の胸焼け予防効果は大きいと言えます。しかし、すでに胸焼けが出始めている人は、激しい運動や、極端に重たいものを持ち上げる筋トレなどを行うと、腹圧が高まってしまうため、控えた方がよいでしょう。

横隔膜を鍛える

逆流を防ぐ代表的な筋肉と言えば「下部食道括約筋」ですが、この筋肉は自分の意志で直接鍛えることはできません。ただし、下部食道括約筋の働きをサポートする横隔膜を鍛えることは可能です。横隔膜を鍛えることで、胃の入り口が緩みにくくなるほか、誤嚥の予防にも繋がります。鍛え方はいくつかありますが、ここでは以下の方法をご紹介します。

【横隔膜の上下ストレッチ】
① 両足を肩幅に開き、両手を頭の後ろで組んで、背筋をまっすぐにして立つ。ゆっくりと息を吸いながらお腹を膨らませる。
② お腹を十分に膨らませた後、息を吐きながら、組んでいる両手を手のひらが上を向くようにして真上に上げ、それと同時にかかとを上げて、全身をタテにのばす(息を吐くときに、横隔膜がノドの方へ上がるようなイメージで行う)。

上記「①、②」を1セットとして、1日数セット行うとよいでしょう。

腸の調子を整える

すでにお話ししたとおり、脳と腸は相互に関与しています(脳腸相関)。そのため、腸の調子を整えると脳の調子も整って、ストレスを受けにくくなります。また、腸の調子を整えると、お腹にガスがたまりにくくなるため、腹圧をたかめるポッコリお腹を予防することもできます。腸の調子を整える方法は様々ありますが、「電解水素水」というお水を飲むことも有効です。電解水素水とは、水素を含んだアルカリ性のお水のことで、胃腸症状の改善効果が認められた整水器によってつくられます。

以下の記事では、電解水素水について詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
【付加価値を持つ水とは?腸活に役立つ電解水素水について解説!】
https://www.nihon-trim.co.jp/media/29468/

※. 睡眠不足は、胃酸の分泌を増加させるため、質のよい睡眠を十分にとる必要があります。

さいごに

食の欧米化、ストレス社会、SNS依存、デスクワーク・・・ どれも現代を象徴するものであり、同時に胃腸に負担がかかるものでもあります。
つまり、現代は胃腸にとって、とてもハードな時代と言うこともできるでしょう。このような時代を生きる私たちにとって、胃腸の健康はとても重要です。

何もケアをされてない人は、何か一つ「胃腸に良い習慣」を取り入れてみてください。そうすることで、将来の疾病リスクが抑えられ、現在の生活もよりすがすがしいものになっていくはずです。

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参考文献

日本アイ・ビー・エム健康保険組合「よく噛むススメ・・噛めば噛むほど」

https://www.ibmjapankenpo.jp/contents/myhealth/files/kikan/112/p06.pdf

厚生労働省「歯科保健と食育の在り方に関する検討会報告書(概要)」

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/07/dl/s0713-10a.pdf

書籍「逆流性食道炎は自分で防ぐ」池田書店 出版

雑誌「壮快(2019年8月号)」ブティック社 出版

雑誌「壮快(2021年3月号)」ブティック社 出版

雑誌「壮快(2022年11月号)」ブティック社 出版

雑誌「きょうの健康(2022年11月号)」NHK出版 出版

雑誌「わかさ(2020年12月号)」わかさ出版 出版

雑誌「ゆほびか(2021年1月号)」ブティック社 出版