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世界初!ナノファブリック型新規高機能性白金電極触媒の開発に成功 日本トリムと東京大学による共同研究 専門誌 ~「Journal of Materials Chemistry A」で発表~

当社は、指定国立大学法人東京大学との共同研究により、ナノファブリック型新規高機能性白金電極触媒を開発しました。
本件に関する論文を英国王立化学会*(Royal Society of Chemistry)が発刊する材料化学に関する専門誌「Journal of Materials Chemistry A」に投稿し、2024年10月16日に掲載されました。
* 化学の推進を目的としたイギリスの学術機関

 

■概要
 
白金(Pt)は水素発生反応を促進する模範的な電極触媒として知られており、白金の高い触媒効果を維持しながらその担持量をいかに減らすかという研究は最重要の課題となっています。今回、単層カーボンナノチューブから構成されたナノファブリックを白金で覆う手法を使い、白金の担持量を10μg/㎠以下までに減らすことに成功しました。また、このナノファブリック型白金電極触媒を使い水素発生反応を行ったところ、白金触媒のエッジサイドは水素原子の生成に寄与することを世界で初めて突き止めました。
 
 
■主な結果
 
(1)触媒効果の最大化とライフスパンの向上
今回開発したナノファブリック型の白金電極触媒は、同じ量の水素を発生するのに、従来型の粒子状Pt/C電極触媒に比べ、同面積当たりの白金量を約150分の1に減らすことができました。
 

図1 ナノファブリック型白金電極触媒の走査型電子顕微鏡写真

【図1 ナノファブリック型白金電極触媒の走査型電子顕微鏡写真】

白金に覆われたカーボンナノチューブがファブリック状(織物状)に絡み合っている。
図中数字:カーボンナノチューブの太さ(単位:ナノメートル)を表す。
 

(2)水素原子発生機構の提唱
 
白金電極触媒のエッジサイドから電子が放出され、電気二重層中の水和水素イオンがこれらの電子を受け入れ、水素原子(H・)に還元されることを突き止めました。

【図2(A~D) ナノファブリック型新規高機能性白金電極触媒からの水素分子の発生機構】


A:単層カーボンナノチューブを鋳型とするナノファブリック型の白金電極触媒の模式図
六角形の網目を持つ筒状の部分が単層カーボンナノチューブ(図では2本)。その周りは、白金原子の並び方が異なる3種類の白金結晶で覆われている。

B:3種類の白金結晶から成るエッジサイド(段丘)からの放電の模式図
白く光っている稲妻部分が電子の放電を示している。

C:水素原子生成の模式図
放電された電子が、電気二重層中の水和水素イオンと結合し、水分子(H2O)と水素原子(H・)が生成する。水素原子は白金段丘上にトラップされ、H-Pt状態を形成する。

D:水素分子生成の模式図
トラップされている水素原子が過剰になると、2個の水素原子が結合し、水素分子(H2)となって、水中に放出される。
※ 図は論文より引用、一部改変
 

■今後の期待

本研究の成果により、高価な貴金属である白金の量を減らした電極の開発が可能になったことから、水素生成製品の価格を安く製造できることが期待できます。また、単層カーボンナノチューブ素材を使用しており、軽くかつ曲げることができるため、多様な用途が期待できます。水素製造においても高効率なことから、エネルギー用水素製造への応用が期待されます。


■論文概要

タイトル
「Edge sites on platinum electrocatalysts are responsible for discharge in the hydrogen evolution reaction」
(和訳:白金電極触媒のエッジサイド(段丘部分)は、水素生成反応における放電に寄与する)

主な共同研究者(敬称略)

氏名 所属 URL
坂田一郎 東京大学未来ビジョン研究センター https://ifi.u-tokyo.ac.jp/people/sakata-ichiro/
古月文志 東京大学未来ビジョン研究センター * https://ifi.u-tokyo.ac.jp/
樺山繁 (株)日本トリム、神戸大学大学院 https://www.nihon-trim.co.jp/research/

*論文投稿時
 

■掲載先
 
Journal of Materials Chemistry A誌:
▼オープンアクセス論文のため下記よりご覧いただけます(英語サイト)
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2024/ta/d4ta04887c
 

■東京大学未来ビジョン研究センターについて
 
「東京大学の知性を結集した世界的なネットワークの拠点として、地球と人類社会の未来に関連する学際的かつ社会連携型の研究を推進し、持続可能な未来ビジョンの創造に広く寄与すること」を目的として2019年4月に設置されました。これまで、多様な研究者が専門分野を超えて連携し、現代世界の抱える課題に取り組み、その成果を政策提言・社会提言などを通じて社会にフィードバックする活動を行っております。
 
 

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