当社は、国立大学法人東北大学との「電解水透析®」ならびに電解水素水を活用した腹膜透析に関する共同研究部門をリニューアルし、2月より開始します。
電解水透析システムは、透析患者の抱える透析による副作用を改善することが期待される透析療法です。今回、これまで研究してきた東北大学の共同研究部門に、聖路加国際病院、仙台市立病院、仙台柳生クリニック、東北大学農学研究科が協力研究機関として加わります。さらに高いレベルでの研究・開発を推進し、電解水透析システムのさらなる普及を目指しています。また、基礎試験において良好な結果を得ている電解水素水を活用した腹膜透析分野についても、新たな技術開発、臨床試験の実施に取り組みます。
■共同研究概要
部門名:慢性腎臓病透析治療共同研究部門
期間:2020年2月1日~2022年9月30日(2年8ヶ月間)
研究題目:電解水を応用した電解水血液透析と水素(H2)付加腹膜透析に関する研究
研究代表者:宮崎真理子(東北大学病院・血液浄化療法部長、腎・高血圧・内分泌科科長)
研究協力機関:聖路加国際病院、仙台市立病院、仙台柳生クリニック、東北大学農学研究科
■背景
当社は東北大学大学院医学系研究科との共同研究を2005年から開始し、電解水素水を応用した血液透析「電解水透析®」に関する研究開発を、基礎研究から臨床応用まで行ってきました。これまでに電解水透析の安全性確認、さらに透析患者の血中酸化ストレスや炎症の低減、血圧の安定化、降圧薬の低減、透析疲労感の低減等の症状緩和を観察し論文発表してきました。2016年から2019年までの共同研究部門の設置期間中に5年間の前向き観察調査の結果として、透析患者の死亡および心脳血管合併症の発生リスクを41%低減することをScientific Reports誌に発表しました。また、在宅での治療法である腹膜透析は、平均5年で血液透析(通院治療)に移行するとされており、その期間延伸の課題解決に向けた基礎研究では良好な結果が得られています。
以上のことから、さらに高いレベルでの研究・開発を推進するために、東北大学ならびに東北大学以外の医療機関とも連携し、研究体制を拡大リニューアルし設置しました。
■研究目的
1.電解水透析の臨床的有効性を無作為化比較臨床試験にて評価する
2.腹膜透析への応用に関し、早期探索的臨床試験を実施する
■電解水透析システムとは
日本では世界トップクラスの透析治療が行われていますが、それでも透析患者の平均余命は一般人の約半分と短く、その死亡原因は心脳血管死(心不全、脳血管障害、心筋梗塞)が33.1%(*1)と最多です。その原因として、治療中に発生する酸化ストレスや炎症が関与し、動脈硬化を促進していると考えられています。血液透析は水を大量に使用する治療法で1回あたり約120リットルの水を使用します。日本トリムはこの「水」に着目し、抗酸化性のある水素が含まれた電解水素水を透析液の希釈液に使用することで患者のQOL(生活の質)向上を目指しています。日本では22施設(*2)の透析施設、計491床で導入され、約1,500名の患者が電解水透析を受けています。
(*1)日本透析医学会2018年末統計調査「わが国の慢性透析療法の現況」より
(*2) 2020年1月9日現在
■代表的な電解水透析に関する掲載論文
・Renal Replacement Therapy (2016) 2 23(総説論文)
・Scientific Reports (2018) Jan 10;8(1):254(5年間の前向き観察調査)、他
■過去の東北大学との共同研究発表
・Scientific Reports (2018) Jan 10;8(1):254
電解水素水透析は血液透析患者の死亡・心脳血管合併症発症リスクを41%低減