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Cytotechnology(サイトテクノロジー) 40:139-149, 2002

アロキサン誘発によるすい臓β-細胞損傷に対する還元水の保護作用メカニズム:活性酸素種の除去効果

活性酸素種(ROS)は、生体内の高分子物質に対して非可逆的な損傷を与え、多くの疾病を引き起こす原因となっている。還元水(RW)には、たとえば水素リッチな電解還元水(ERW)やドイツにおけるノルデナウの水があり、これらの水がいろいろの疾病改善を示すことが知られている。また、ハムスターのすい臓β細胞のセルラインであるHIT-T15に対し、アロキサン誘発の細胞損傷を保護する効果のあることが知られている。
糖尿病誘発物質であるアロキサンは、動物に1型糖尿病を発症させるために使用されている。糖尿病誘発は、ROS生成を介しておきるとされている。アロキサン処理HIT-T15細胞は、生存率の低下、細胞内ROSレベルの増加、細胞質内の遊離Ca2+濃度の上昇、DNAの断片化、細胞内ATPレベルの増加、グルコース作動性インスリン放出の減少を引き起こす。RWは、アロキサン誘発のROS生成の完全な阻害、細胞質中Ca2+濃度の低下、DNA断片化の強力な阻害、細胞内ATPレベルの減少、アロキサン処理細胞の生存率低下の部分的抑制を示した。細胞内ATPレベルおよびグルコース作動性インスリンの放出はRWによってそれぞれ2-3.5倍、2-4倍増加した。このことは、RWがβ細胞のグルコース感受性およびグルコース応答性を高めていることを示している。RWのこうした保護効果は4℃で1ヶ月間以上安定であったが、オートクレーブ処理で消失した。これらの結果は、RWがアロキサン処理によるROSの発生を抑え、このROS発生抑制がアロキサン誘発によってもたらされる細胞損傷からすい臓のβ細胞を保護することを示唆しており、1型糖尿病の発生を阻止する上で有用と考えられる。

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