背景と目的:慢性血液透析療法において患者の予後不良は酸化ストレスと炎症の亢進が関わっていることが示唆されている。近年の研究で分子状水素(H2)は抗炎症剤として生物活性があることが示されている。そこで我々はH2(30-80ppb)を含む透析液を供給する新しい血液透析(電解水透析)を開発し、日本において電解水透析と通常透析の長期予後の比較を行う前向き観察研究(UMIN000004857)を行った。この中間解析は12か月間の観察における電解水透析の臨床効果の可能性をみることを目的としている。
対象と方法:262名(140名が電解水透析、122名が通常透析)を網羅的臨床特性の解析対象とした。彼らは上記観察研究に参加し、入院無で12か月間連続してそれぞれの治療を受けた。身体及び血液検査、投薬、患者の自覚症状(例えば疲労やかゆみ)に関するアンケートといったデータを集め、2群間での比較を行った。
結果:12か月の間、2群間での臨床に関連する透析関連指標の違いは無かった。しかしながら、降圧薬の規定された1 日投与量(DDD)、重度な透析疲労、かゆみといった患者の症状に違いが見られ、電解水透析はいずれも低値を示した。多変量解析により、交絡因子調整後の降圧薬使用量の減少や重度疲労感の抑制やかゆみの抑制に対して、電解水透析は独立寄与因子であることが示された。
結論:これらのデータは、電解水透析は通常透析に比べ実質的な臨床的有用性を持っていることを示唆しており、血液透析療法に対してH2応用の臨床治験を行うための合理的根拠を支持している。
■論文は下記よりご覧いただけます(英文、オープンアクセス誌)
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0184535
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