いくつかの細胞株において過酸化水素(H2O2)がマトリックスメタロプロテアーゼ-2 (MMP-2)の発現上昇に直接関係していることが証明されている。電気分解において陰極近傍で生成する電解還元水(ERW)はヒト線維肉腫HT1080細胞の細胞内H2O2を消去する。RT-PCR及びザイモグラフィー解析によってHT1080細胞をERWで処理すると、MMP-2及び膜型1MMPの遺伝子発現とMMP-2の活性化が抑制され、その結果、マトリゲルへの細胞の浸潤が減少することが明らかとなった。また、ERWはH2O2によって誘導されるMMP-2の上方調節を阻害した。MMP-2の下方調節に関係するシグナル伝達を調べるために、マイトーゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)特異的阻害剤であるSB203580(p38MAPK阻害剤)、PD98059(MAPK/細胞外調節キナーゼキナーゼ1阻害剤)及びc-Junアミノ末端キナーゼ阻害剤IIがMAPKシグナルカスケードを阻害するために使用された。MMP-2遺伝子発現はSB203580処理によってのみ阻害されたことから、MMP-2遺伝子発現調節においてp38MAPKが重要な役割を持っていることが示唆された。ウェスタンブロット解析の結果、ERWはH2O2処理及び未処理のHT1080細胞のいずれにおいてもp38のリン酸化を下方調節することが示された。これらの結果から、腫瘍浸潤におけるERWの阻害効果は少なくとも一部はその抗酸化効果に起因することが示された。
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