陰極側で生成される電解水は抗酸化性を示し、その電解水を血液透析に応用すると血液透析患者の酸化マーカーが抑制されるとされている。しかし、その化学的性質と生物学的効果はほとんど未解明である。この研究において、電解水を臨床応用するための科学的背景を明らかにするためにこれらのことを調べることを目的とした。 電解陰極水の逆浸透膜処理水(e-RO)を調製し、さらにそれを試験用の血液透析液(e-HD)の作製に使用した。これらの液を化学的、生物学的にコントロールと比較した。酸化還元能はルミノール-過酸化水素系の化学発光により試験した。ヒト多型核白血球(PMNs)へのe-ROの生物学的効果を、メチルグリオキサールに対する細胞保護、またラジカル産生に関する細胞機能の保持の観点から調べた。
化学発光はコントロールの血液透析液が最も高く、続いてe-HD、コントロールROの順であったことから、電解水をベースとした液は酸化性が低いことが示唆された。e-ROとe-HDは高い溶存水素濃度を示した。e-ROの応用により、メチルグリオキサールによるPMNs障害を抑える傾向が示され、コントロールに比べて有意にラジカル産生能が高かった。
コントロールの血液透析と比べて、e-ROベースの透析液は化学的に低酸化性を示し、PMNs生存率の保持を少なくとも部分的に促進しているかもしれない。これらの結果は、この技術を血液透析療法に適用するための臨床試験を進めるにあたっての科学的基礎を提供している。
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