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Renal Replacement Therapy

最新型の電解水透析システムにより重度疲労感低減作用を確認、且つその作用を高める要因を発見(「Renal Replacement Therapy」誌に掲載)

聖路加国際病院、日鋼記念病院、日本トリムらの共同研究グループは、最新型の電解水透析®システム*により重度疲労感低減作用を確認し、且つその作用を高める可能性のある要因を発見しました。それに関する論文をSpringer NatureファミリーのBMC出版社(英国)の「Renal Replacement Therapy」誌に投稿し、2022年7月25日に掲載されました。
*:電気分解により生成される、水素(H2)を含有する透析液希釈水を作成するシステム

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■概要
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電解水透析にて透析患者の疲労感が軽減することが報告されています。最新型の電解水透析®システム(第三世代)は、固体高分子膜を用いて高効率で安定したH2含有透析用水を作成できる特長を有します。今回の調査研究で、既設の従来型電解水透析システムで重度疲労感を呈していた透析患者に対して、第三世代システムはこれらの患者の自覚症状を有意に低減することが確認されました。
また、疲労感低減作用が見られなかった患者群(ノンレスポンダー)の解析を行ったところ、降圧薬の使用量が疲労感低減の阻害要因であることが分かりました。電解水透析で下がった血圧に対して、併用の降圧薬の使用量を少なくし、血圧を下げ過ぎないようにすることで、より多くの透析患者に疲労感低減作用が期待できる可能性が示されました。

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■研究意義・目的
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日本の血液透析療法は世界でもトップクラスの治療成績を誇っていますが、QOL(生活の質)の維持は腎代替療法の大きな課題です。透析患者にとって疲労感はQOLを損なうだけでなく生命予後を悪化させ、また社会復帰を阻害することも報告されています 1)。電解水透析システムを既存システムから第三世代システムへ変更することで、透析患者の疲労感をさらに抑制できるかを調査することを目的としました。

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■主な結果
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(1)重度疲労感に対する低減作用を確認
透析日および非透析日とも疲労感がある重度疲労感は、8週間後には疲労感数値の平均値が実質的疲労感無し(4未満)のレベルまで低減されました。

図1:非透析日における疲労感の推移

(#:導入前に比べ統計学的有意差有り、論文の図から一部改変し掲載)
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(2)疲労感の低減作用が見られない透析患者における阻害要因は降圧薬の量である
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患者全体の中で疲労感低減作用が見られなかった患者(ノンレスポンダー、41名)の12個の因子を統計解析した結果、唯一、降圧薬のオッズ比(危険率)が1より高く、阻害要因であることが分かりました。電解水透析により透析後高血圧が改善することが報告されていますが 2)、併用している降圧薬により血圧が下がり過ぎることで疲労感低減作用を打ち消している可能性が示唆されました。
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表1:低減作用が見られなかった患者の多重ロジスティック回帰分析結果

因子 オッズ比 95%CI p値
降圧薬 3.56 (1.28-9.90) 0.01

※:交絡因子調整後のオッズ比と95%CI(信頼区間)を示す。論文の表から一部改変し掲載

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■結論
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既存の電解水透析システムから第三世代電解水透析システムに変更することで、透析患者の重度疲労感を低減することができました。また、透析疲労感の低下が見られない患者に対しては、血圧を下げ過ぎないように降圧薬の量を調整することが重要であることが示唆されました。

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■研究方法
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本調査研究では、電解水透析システムを利用している社会医療法人母恋日鋼記念病院関連施設(105人)へ第三世代の電解水透析システムを導入し、導入前から導入8週間後まで疲労感アンケート調査と各種指標の解析を行いました。

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■今後の期待
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今回の発見により、より多くの透析患者に電解水透析による疲労感低減作用を発揮させることが期待されます。

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■論文概要
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タイトル 「Impact of hemodialysis solutions containing different levels of molecular hydrogen (H2) on the patient-reported outcome of fatigue」
(和訳:透析患者の疲労感における水素濃度(H2)の違う透析液の影響)
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主な共同研究関係者 (敬称略)

氏名 所属 URL
中山昌明 1) 聖路加国際病院 腎臓内科 https://hospital.luke.ac.jp/guide/08_nephrology/dr/nakayamamasaaki.html
植村進 社会医療法人母恋日鋼記念病院 https://www.nikko-kinen.or.jp/section/engineering.html
高田譲二 東室蘭サテライトクリニック https://www.bokoi.jp/higashimuroran/about/
宮崎真理子 2) 東北大学大学院医学系研究科 腎・膠原病・内分泌学分野 http://www.int2.med.tohoku.ac.jp/member.html
山本多恵 3) 仙台市立病院 腎臓内科 https://hospital.city.sendai.jp/department/staff.html#nephrology
樺山繁 4) (株)日本トリム https://www.nihon-trim.co.jp/research/collaboration/
1),2),3),4) 東北大学病院慢性腎臓病透析治療共同研究部門(兼任) https://www.hosp.tohoku.ac.jp/departments/d5000

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■掲載先
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Renal Replacement Therapy誌:
▼オープンアクセス論文のため下記よりご覧いただけます(英語サイト)
https://rrtjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s41100-022-00422-7
(本研究は前向き観察研究であり、WHOで規定される「臨床試験」ではありません。)

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■第三世代システムについて
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固体高分子膜を用いた電解槽(下図:模式図)を搭載しており、高効率で安定したH2含有透析用水を作成できる特長を有しています。水(H2O)が模式図中の左側上下から入り、電気分解により陰極側から水素(H2)が供給され、電解水(H2O+H2)が模式図中の右上から出てきます。

図2:固体高分子膜を用いた電解槽

 (参考論文)
1) PLOS ONE 16(2) e0246890 (2021), https://doi.org/10.1371/journal.pone.0246890
 重度の透析関連疲労感は透析患者の就業を阻害する。
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2) Scientific Reports 8, Article number: 254 (2018)
 水素を付加した血液透析療法「電解水透析」が透析患者の死亡数・主な死因となる合併症発症を41%抑制
 https://www.nihon-trim.co.jp/research/1048/

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